高野孝子の地球日記

日本と世界の「フェイクとファクト」

 兵庫県の知事選の結果には驚いた人たちも多かったのではないでしょうか。県議会が全会一致で不信任決議をし、失職したその本人が再選を果たしたのですから。

 パワハラ疑惑などで内部告発された一連の調査はまだ途上。兵庫県職員約9700人の4割以上が、知事のパワハラを見聞きしたとアンケートに回答しています。その本人が改めて知事として登庁し、拍手で迎えた職員の人たちはどのような気持ちでしょう。

 職員の方々だけでなく、メディアも含め、兵庫県民が選んだ結果と理解しながらも、何か違和感があるのは、つい最近の他の選挙の時と一緒だと思いました。

 アメリカ大統領選挙です。

 あれだけ競り合っていると言われていたハリス候補とトランプ候補。蓋を開けてみたら、トランプ候補の圧勝。年代、人種、性別を問わず、トランプ候補が支持を伸ばしていました。アメリカ国民のチョイスとして受け入れる以外ないわけですが、アメリカ第一主義を掲げ、アメリカ経済を強くするためなら地球環境も他国もどうでも良いという彼の発言を思うと、この先どうなるのか呆然としてしまいます。

 二つの結果に共通しているのは、メディアを通して持っていた印象と結果の違いかもしれません。かつてトランプ氏が放った「フェイクニュース」という言葉が、私たちと情報の関係を変えてしまった気がしています。裏付けのある信頼できる情報かどうかより、聞きたいことや信じたいものしか受け取らない傾向が強くなっているのかもしれません。しかし「フェイクニュース」という言葉と共に、「ファクトチェック」という言葉も出てきました。

 聞きたいことを聞いてしまうのは、私もそうです。でもそれを自覚して、本当にそうなのか、自分に都合がいいから賛同しているんじゃないか、と少し間を取って考えます。ゆとりがない時もありますが、できるだけ自分でファクトを調べます。これも何がファクトなのか要注意です。

 11月から12月にかけて、とても重要な国際的な取り決めの場が開かれます。

 一つはCOP29、気候変動枠組み条約締約国会議。11/22までなので、皆さんがこれを読む頃には、もう結果が出ているかもしれません。荒れ狂う気候とやまない戦争を抱えながらも、なんとか人類の未来を諦めないための約束事がどのようになされるか。もう一つが国際プラスチック条約。プラスチック汚染を解決するための初めての国際条約で、決定すれば国際的な法的拘束力を持ちます。別の機会に改めて書きたいと思いますが、私たちの体内には呼吸や飲み物、食べ物を通してマイクロ・ナノプラスチックがすでに入っていて、それによる健康被害の調査結果が今年になっていくつも発表されています。

 アメリカの次の大統領は、気候変動否定論者です。どんな意図を持って何を語るか、鵜呑みにせず、さまざまな情報源にあたって判断し、行動したいところです。

(2024年11月20日 髙野孝子)

 

休日農業講座「田んぼのイロハ」2024稲刈り編

Weekend Farming Workshop,
“ABC” in a Rice Paddy, 2024, Harvesting

 田んぼのイロハ稲刈り編を、9月21-22日の週末に実施します。無農薬田んぼのイネは、長雨や猛暑という不安定な夏を耐え、立派な穂を出し始めています。あと1カ月ほど、毎日の平均気温の積算が950度から1,000度になると稲刈り適期と言われます。どんなおコメが、出来るでしょうか。

ECOPLUS will conduct the weekend faming workshop, “ABC in a rive paddy,” on 21-22 September in Minamiuonuma, Niigata. We are again having unstable climate until now including too hot and too long rainy condition. Now new ears of rice are coming out and the flowers of rice are fully blossoms. When accumulated daily mean temperature will reached to 950 -1000 in Celsius, it is the best time to harvest.

稲刈り開始 Starting harvesting by hands

 「田んぼのイロハ」は、「農」の基本に立ち返って、そこからうまれる食、そして私たちの暮らしを考え直すプログラムです。カマを使って手で稲を刈り取り、束ね、干します。半世紀前までは日本中で当たり前だった作業と光景。いまでは「機械化」されてすっかり姿を消しました。

The workshop aims to re-think about so-called modern and convenient life style through hands-on experience in totally organic rice paddies and with the traditional way to grow rice. Using sickles, we will cut the stalks of the rice by hands and will tie sheaves to hang for sun-dry. Those activities are almost gone in industrialized faming now.

 カマを当てた時のイネの茎の強さ、担いだときの稲束の重さ、そしてこすれ合う米粒が起こす鈴のような乾いた音、五感で収穫を感じましょう。

You can enjoy the strength of the stalks as you cut the stalks with a sickle, the weight of the sheaves on your shoulder and listen to the sound made by the grains touching each other.

田んぼのイロハ稲刈り編
Harvesting Workshop

集合時刻、場所
 9 月21日午前10時45分。JR上越線上越国際スキー場駅前広場

宿泊場所
 民宿山田館(新潟県南魚沼市樺野沢14)

Gathering Time and Place
10:45 am on June 21, at Joetsu Kokusai Skiing Ground Station, JR Joetsu line.

Accommodations
 Local Inn, “Minshuku YAMADA-Kan.”

交通案内
 21日午前8時52分東京駅発とき309号、10時20分越後湯沢着
 10時30分越後湯沢発上越線普通列車長岡行、10時44分上越国際スキー場前着

Suggested train schedule from Tokyo
  Joetsu Shinkansen Toki 309
 Departing Tokyo at 08:52, arriving Echigo-Yuzawa at 10:20
  Joetsu local line
 Departing Echigo-Yuzawa at 10:30, arriving Joetsu Kokusai Skiing Ground at 10:44

内容と持ち物
 無農薬田んぼで、カマを使って手作業で稲刈りをします。小雨決行。21日のお昼ご飯は各自持参。田んぼでの飲み物もご持参下さい。泥で汚れていい服装でどうぞ。ブヨがいますので、防虫スプレーや虫よけネットなどご用意下さい。田んぼはぬかるみますので長靴が必要です。数に限りがありますが、長靴のレンタルも可(800円)。さらに詳しい内容と持ち物は、参加が確定した方々に「手引き」でお知らせします。

Contents and bringing
Harvesting by hands. Will be cancelled only in stormy condition. Bring your own lunch for Saturday, and water during activities. Clothings may get muddy. Insect repellent, a hat/cap. We recommend to come into the paddy with rubber boots. Boots rentals are available with 800 JPY. More information will be provided for those whose participation is confirmed.

定員 Limit of participants.
 15人程度。Up to around 15 participants.

参加費 Fee
 一般:16,000円(プログラム費、1泊2食の宿泊費、2日目の昼食、保険を含む)。学生12,000円(同)。男女別相部屋です。ご家族連れは調整させていただきます。学生等で田んぼ脇の民家での寝袋泊も可、9,000円。宿泊なしの場合は、大人8,000円、小学生は1,000円。
 16,000 JPY including program fee, accommodations with two meals, lunch on Sunday, insurance. Shared room. Students and other youth with sleeping bags can stay in a house next to the paddy with 9,000 JPY.

申し込み Application

 下のフォームからお申し込み下さい。Please use below application form. 問い合わせは、tappo@ecoplus.jpまで。If needed contact to tappo@ecoplus.jp

豊かさとはなんだろうか? 

ヤップ島プログラム2024活動報告会 

報告:エコプラスインターン 佐藤勇輔 今瀬菜月

 今年3月に実施したヤップ島プログラムの報告会を、6月30日に東京都千代田区の神田公園区民館で行いました。プログラム参加者5名は家族や友人らの前で、ヤップ島での経験や感じたことを思い思いに話しました。 

 まず、プログラム参加者はヤップ島の基礎知識をクイズ形式にて紹介しました。私たちに特に印象に残ったものは、ヤップ島で使われている言語についてです。ヤップ島ではヤップ語が使われていますが、日本語由来の言葉が多くあります。クイズの解説を通して、その背景にはかつて日本に統治されていたという歴史があるということを知りました。そのような背景を持つ中で、ヤップ島の方々はプログラム参加者を歓迎してくれたそうです。

 次にプログラム参加者がヤップ島で学んだことを紹介しました。

 1つ目はヤップ島での暮らしの知恵です。ヤップ島の住民はヤシを食料だけでなく、寝床やまな板としても利用していました。プログラム参加者は、このような暮らしの知恵に触れ、ひとつのものを複数の用途で利用していることに感銘を受け、ひとつものをひとつの用途で用いる日本での暮らしとの違いを感じていました。

 2つ目は地球環境です。ヤップ島では海面上昇・干ばつなど、地球温暖化の影響をダイレクトに受けていたとプログラム参加者は話していました。現地の方々は、ヤップ島に生息するニッパヤシを海面上昇から守るために、植林をするなどの対策を取っていたようです。また、干ばつで川が枯れ、新たに井戸を掘らなければならないという状況にも陥っていました。日本ではその影響を感じることはほとんどありませんが、プログラム参加者はこのプログラムを通して環境問題への意識が高まったようです。

 3つ目はグローバル化の影響を受けるヤップ島です。ヤップ島の近くで生息しているシャコガイなどは、周辺のグアムで高く売ることができ、過剰採取されています。現地では、その対策として禁漁区を設けて持続的な管理を図っています。また、外国から合成洗剤を輸入するようになりました。しかし、下水処理施設が整備されていないヤップ島ではそのまま土壌に流している現状です。その土壌は食料を育てているものであり、食料が化学物質に汚染されている可能性があります。プログラム参加者は、このようなグローバルによる影響を危惧していました。 

 最後に、会場にいる全員が4~5名のグループに分かれて「あなたにとって豊かさとは何か」をテーマに話し合いました。日本ではモノが溢れている豊かさ、ヤップでは自然と共存する豊かさを踏まえたうえで、豊かさについて考えるきっかけになりました。 

休日農業講座「田んぼのイロハ」2024草取り編

Weekend Farming Workshop,
“ABC” in a Rice Paddy, 2024, Weeding

 田んぼのイロハ草取り編を、6月22-23日の週末に実施します。無農薬でのコメ作りには、手作業での草取りが欠かせません。除草剤が登場したのはわずか50年ほど前。それまでは、何百年にもわたって、田んぼでの草取りが行われてきました。

 基本に立ち返って、農と食、そして私たちの暮らしを考え直す田んぼのイロハ。田んぼの中で雑草に向き合うとき、何が見えてくるでしょうか。ちょうどホタルが舞う時期。無農薬田んぼならではの、無数のアキアカネの羽化にも出会えるはずです。

羽化したばかりのアキアカネ。ガラス細工のように透明。日に当たって数時間すると茶色くなって飛び立っていく。

田んぼのイロハ草取り編
Weeding Workshop

集合時刻、場所
 6 月22日午前10時45分。JR上越線上越国際スキー場駅前広場

宿泊場所
 民宿山田館(新潟県南魚沼市樺野沢14)

Gathering Time and Place
10:45 am on June 22, at Joetsu Kokusai Skiing Ground Station, JR Joetsu line.

Accommodations
 Local Inn, “Minshuku YAMADA-Kan.”

交通案内
 22日午前8時52分東京駅発とき309号、10時20分越後湯沢着
 10時30分越後湯沢発上越線普通列車長岡行、10時44分上越国際スキー場前着

Suggested train schedule from Tokyo
  Joetsu Shinkansen Toki 309
 Departing Tokyo at 08:52, arriving Echigo-Yuzawa at 10:20
  Joetsu local line
 Departing Echigo-Yuzawa at 10:30, arriving Joetsu Kokusai Skiing Ground at 10:44

内容と持ち物
 無農薬田んぼに入り、手作業で草取りをします。小雨決行。22日のお昼ご飯は各自持参。田んぼでの飲み物もご持参下さい。泥で汚れていい服装でどうぞ。ブヨがいますので、防虫スプレーや虫よけネットなどご用意下さい。裸足で田んぼに入ると土の感触がじかに伝わるのでお勧め。ビーチサンダルなどがあると足を洗うのに便利です。さらに詳しい内容と持ち物は、参加が確定した方々に「手引き」でお知らせします。

Contents and bringing
Weeding by hands. Will be cancelled only in stormy condition. Bring your own lunch for Saturday, and water during activities. Clothings may get muddy. Insect repellent, a hat/cap. We recommend to come into the paddy with bare feet to feel the soil directly. Beach sandals are useful to wash your feet in a stream. More information will be provided for those whose participation is confirmed.

定員 Limit of participants.
 15人程度。Up to around 15 participants.

参加費 Fee
 一般:16,000円(プログラム費、1泊2食の宿泊費、2日目の昼食、保険を含む)。学生12,000円(同)。男女別相部屋です。ご家族連れは調整させていただきます。学生等で田んぼ脇の民家での寝袋泊も可、9,000円。宿泊なしの場合は、大人8,000円、小学生は1,000円。
 16,000 JPY including program fee, accommodations with two meals, lunch on Sunday, insurance. Shared room. Students and other youth with sleeping bags can stay in a house next to the paddy with 9,000 JPY.

休日農業講座「田んぼのイロハ」2024

Weekend Farming Workshop,
“ABC” in a Rice Paddy, 2024

 エコプラスは今年も、田んぼのイロハを実施します。いつもより雪どけが大幅に早く、桜もあっというまに満開。不思議な季節の到来です。以下の日程で田植え、草取り、稲刈りと展開していきます。

 田植え(5月25-26日)
 草取り(6月22-23日)
 稲刈り(9月21-22日=仮予定、8月頭に確定します)

ECOPLUS will organize the workshop, “ABC” in a Rice Paddy, in 2024. Although the climate is very curious, such as the snow melted one month earlier than normal years, we will conduct the programs as follows.

 Rice planting; May 25-26
 Weeding in the paddy; June 22-23
 Harvesting; September 21-22 (tentative)

 今回の舞台となる田んぼは、エコプラスが16年間「田んぼのイロハ」を実施してきた栃窪集落から標高で300mほど下った魚沼盆地の平野部、樺野沢集落に位置します。代表理事髙野と事務局長大前夫婦が、2007年からお隣の長老に昔ながらの米作りを教わってきた、無農薬田んぼです。タニシやアキアカネ、アカハライモリ、ドジョウなどが無数に生息し、準絶滅危惧種のモートンイトトンボも確認されています。

 さらに、それまで10数年耕作されず、昨年耕しなおす「復田」作業をして、無農薬栽培を始めた田んぼを、今年も使います。

The rice paddy, we will conduct the program, was where TAKANO Takako and OHMAE Junichi has been learning the traditional rice growing by elders living nearby since 2007. Since no chemical materials has been used for nearly 20 years, many creatures such as pond snails, dragonflies, newts, loaches and others including listed species.

Last year, we successfully revived a nice paddy which had had not been cultivated for more than a decade. We will use the rice paddy this year, too.

昨年復田した10数年間使われてこなかった田んぼ。
A rice paddy, which had not been cultivated for more than a decade, was revived last year and will be used this year.

田んぼのイロハ田植え編
Rice Planting Workshop

集合時刻、場所
 5月25日午前10時45分。JR上越線上越国際スキー場駅前広場

宿泊場所
 民宿山田館(新潟県南魚沼市樺野沢14)

Gathering Time and Place
10:45 am on May 25, at Joetsu Kokusai Skiing Ground Station, JR Joetsu line.

Accommodations
 Local Inn, “Minshuku YAMADA-Kan.”

交通案内
 25日午前8時52分東京駅発とき309号、10時20分越後湯沢着
 10時30分越後湯沢発上越線普通列車長岡行、10時44分上越国際スキー場前着

Suggested train schedule from Tokyo
  Joetsu Shinkansen Toki 309
 Departing Tokyo at 08:52, arriving Echigo-Yuzawa at 10:20
  Joetsu local line
 Departing Echigo-Yuzawa at 10:30, arriving Joetsu Kokusai Skiing Ground at 10:44

内容と持ち物
 無農薬田んぼでの、手作業での田植え。小雨決行。25日のお昼ご飯は各自持参。田んぼでの飲み物もご持参下さい。泥で汚れていい服装でどうぞ。ブヨがいますので、防虫スプレーや虫よけネットなどご用意下さい。裸足で田んぼに入ると土の感触がじかに伝わるのでお勧め。ビーチサンダルなどがあると足を洗うのに便利です。さらに詳しい内容と持ち物は、参加が確定した方々に「しおり」でお知らせします。

Contents and bringing
Planting seedlings by hands. Will be cancelled only in stormy condition. Bring your own lunch for Saturday, and water during activities. Clothings may get muddy. Insect repellent, a hat/cap. We recommend to come into the paddy with bare feet to feel the soil directly. Beach sandals are useful to wash your feet in a stream. More information will be provided for those whose participation is confirmed.

定員 Limit of participants.
 15人程度。Up to around 15 participants.

参加費 Fee
 一般:16,000円(プログラム費、1泊2食の宿泊費、2日目の昼食、保険を含む)。学生12,000円(同)。男女別相部屋です。ご家族連れは調整させていただきます。学生等で田んぼ脇の民家での寝袋泊も可、9,000円。宿泊なしの場合は、大人8,000円、小学生は1,000円。
 16,000 JPY including program fee, accommodations with two meals, lunch on Sunday, insurance. Shared room. Students and other youth with sleeping bags can stay in a house next to the paddy with 9,000 JPY.

申し込み Application

 下のフォームからお申し込み下さい。Please use below application form. 問い合わせは、tappo@ecoplus.jpまで。If needed contact to tappo@ecoplus.jp

4年ぶりにヤップ島プログラムを実施

Yap-Japan Cultural Exchange Program was held after 4 years absence

 エコプラスのヤップ島プログラムが、2024年3月16日から24日までの日程で、4年ぶりに開催されました。

The Yap-Japan Cultural Exchange Program of ECOPLUS was held from March 16 to 24, 2024, for the first time in four years.

 1992年から始まったこのプログラムですが、新型コロナの影響で2000年に中止して以来、今回は4年ぶりにやっと実施することが出来ました。久しぶりのプログラムなので、参加人数も日程も抑え気味。参加予定者の1人が当日朝に体調を崩し、大学生4人、高校生1人の計5人で、現地滞在7日間のプログラムとなりました。

This program started in 1992, but was cancelled in 2000 due to the COVID-19, and this time we were finally able to conduct the program after 4 years. Since it had been a long time since this program was held, the number of participants and the schedule were kept low. One of the expected participants fell ill on the morning of our departure, so we ended up with a total of five participants (four university students and one high school student) who stayed on the island for seven days.

 滞在したのは、ヤップ島東部のタミル地区にあるアフ村。石畳の小道、ストーンパスがきれいに維持されるなど、伝統をしっかりと残した集落です。

We stayed in the village of Aff, located in the Tamil community of Yap Island. The village has well-preserved traditions, such as well-maintained stone paths.

 拠点となったのは村の集会所。新しいコンクリートづくりの平屋建て。裏手に調理小屋とシャワーハウスを作るところから、スタートしました。

Our base of operations was the village meeting hall. It is a one-story building made of new concrete. We began by building a cooking hut and shower house in the back.

 当初の3日間は、地元の暮らしの知恵と技を知る期間。寝るときに床に敷くマットをココヤシの大きな葉で編んで作りました。若いココヤシの実(ココナツ)を割って中のジュースを飲む方法も教わりました。料理に使うココナツミルクは、地面に落ちてしばらく経った茶色いココナツの果肉(コプラ)を削ってしぼり出します。その外側の繊維が詰まった部分は乾かすと貴重な燃料になります。無駄なく自然を使って食材や道具に変身させる伝統の知恵に、参加者はびっくりしていました。

The first three days were a time of learning about the wisdom and skills of the local way of life. We made mats for sleeping on the floor by weaving them from large coconut palm fronds. We also learned how to husk a young coconut and drink the juice inside. Coconut milk for cooking is made by grinding and squeezing the copra from old coconuts left on the ground for some time. The fibrous outer part of the coconut is dried and used as a fuel. The participants were amazed at the traditional wisdom of using nature without waste and transforming it into food and tools.

 中盤では、1泊2日のホームステイをさせてもらいました。1人づつが別々の家庭にお邪魔して、家族として過ごさせてもらう貴重な体験です。

 それぞれの家庭で、料理を一緒にしたり、子どもたちと遊んだりと、どっぷりと地元の暮らしに受け入れてもらいました。

 2日目の夕方に戻ってくる時には、花輪を頭に乗せ、手作りのバッグや、魚やタロイモなどであふれんばかりの夕食バスケットなど、大量のおみやげでいっぱい。ホームステイ先の家族たちと楽しそうに笑い合ってのご帰還でした。

In the middle part of the program, we were given the opportunity to stay with a host family for two days and one night, with each of participant visiting a different family and spending time with them as a family.

They cooked together and played with the children at each home, and were fully accepted into the local lifestyle.

When they returned in the evening of the second day, they had wreaths ont thier heads and were filled with souvenirs, including handmade bags and dinner baskets overflowing with fish, taro, and other delicacies. They returned home with their host families, laughing happily together.

 後半は、海での活動や、地元の共同作業への参加、ファエウェルパーティと息つく間もない忙しい時間となりました。

 サンゴで囲まれた海は、岸辺ではマングローブ林などからの養分が多く透明度は低いのですが、外洋近くまで行くとくっきりと見通せる輝くような世界。地元の自然保護組織、タミル自然保護基金(TRCT)が取り組んでいるオオシャコガイの再生事業の現場で、かごに入れて外敵から保護されているシャコガイの藻や泥をきれいにする作業にも加わりました。

The last days of our stay were busy with activities at sea, participation in local community work, and a farewell party, leaving no time to catch our breath.

The lagoon was not very clear at the shore due to nutrients from mangrove forests and other sources, but once you get closer to the reef, you can see clearly into the shining world. We also joined a local conservation organization, the Tamil Rescue Conservation Trust (TRCT), as they worked to clean algae and mud from the giant clams, which are caged and protected from predators.

 ヤップ島では23年12月からほとんど雨が降らず、1-3月の降雨量は平年の20分の1という干ばつに見舞われています。

 このためアフ村では、生活用水を確保するために、数十年間放置されていた井戸を復活させようと、村人たちが埋もれた井戸を掘り起こす作業をしていました。この村の共同作業にも参加させてもらい、腰ほどの深さの穴を掘り進めました。やや谷筋の粘っこい土はシャベルにくっついてなかなか掘り進めないのですが、地元の人たちと交代しながらの2時間ほどで、肩近くまでの深さに掘り下げることが出来ました。

The island of Yap has been experiencing a drought since December 2023, with almost no rainfall, and precipitation from January to March is 1/20th of a normal year.

For this reason, the villagers of Aff began digging an old well in an effort to revive a well that had been abandoned for decades in order to secure water for daily use. We were allowed to participate in this community work and dug a hole as deep as our waists. The sticky soil in the valley line stuck to the shovel and made digging difficult to dig, but after about two hours of taking turns with the locals, we were able to dig down to almost shoulder deep.

 地球規模の気候変動を肌で感じると同時に、それに対応するために住民が力をあわせて努力している姿を見ることが出来ました。

 ヤップ島とグアム島を結ぶ航空便は、週に2回。いずれも深夜から未明の運行です。このため日曜日の午前1時前後に到着して、次の日曜日の未明に島を離れる、まる1週間の滞在でした。これまでならあと数日は滞在するところですが、それでも参加者たちは、一つのものを多様に使う知恵と技に驚き、暮らしに学びがあふれていることにも気がついたようです。

We were able to see firsthand the effects of global climate change and how residents are working together to respond.

There are two flights per week between Yap and Guam. Both flights operate from midnight to dawn, so we arrived on Sunday morning around 1:00 a.m. and left the island before dawn the following Sunday, a full week’s stay. Although they would have been on the island for some more days, the participants were still amazed at the wisdom and skill of using one thing in many ways, and they also noticed the abundance of learning in the daily life of the island.

 同じタミル地区の別の村からは、いつでも来てくれて大丈夫との連絡をもらっています。水不足ですでに時間給水が始まっていること、さらに夏の暑さも以前に比べて激しくなっていることなどから、その状況を見ながら、次回の日程を検討しています。

We have been informed by another village in the same Tamil community that they can host our group next time. We are looking at the situation and considering the next schedule as the water supply has already started on time due to the water shortage, and also the summer heat is more intense than before.

ヤップ島の中堅リーダー3人が日本で研修

Three leaders from Yap joined ecotour training in Japan

 エコプラスがJICAの支援を受けて展開している、ミクロネシア連邦ヤップ島タミル地区でのエコツアープロジェクトで、現地の3人の指導者が4月3日から9日までの日程で日本での研修活動を行いました。

 来日したのは、ヤップ島タミル地区で自然保護活動に取り組んでいるタミル自然保護基金(TRCT)の役員アロイシス・リブモウさん(45)、ケン・エゼキエールさん(39)、ジャニス・タマンギデッドさん(29)の3人。

 Three local leaders of an eco-tourism project in the Tamil region of Yap Island, Federated States of Micronesia, implemented by ECOPLUS with support from JICA, visited Japan for training activities from April 3 to 9.

 The three who came to Japan were Lubumow (45), Ken(39), and Janice (29), officers of the Tamil Resources Conservation Trust (TRCT), which is engaged in conservation activities in the Tamil municiparity of Yap Island.

 ビザ発給のためにグアムで3日滞在したあと、3日夕に成田空港に到着。翌4日から三宅島に渡って、現地でエコツアー活動を長く展開してきた海野義明さん、佳子さんご家族の元に滞在させていただきました。三宅島は2000年の大噴火で全島民が4年余に渡って避難するなど、噴火との戦いが島の暮らしの根っこに存在しています。一行は、火山噴出物で真っ黒になっている地面にびっくり。海岸も陸地もいたるところが噴火とのつながりを見せています。

 After spending 3 days in Guam to obtain visas, they arrived at Narita Airport on the evening of the 3rd. The next day, the 4th, they flew to Miyakejima to stay with Yoshiaki and Yoshiko Unno’s family, who have been involved in ecotourism activities there for a long time. Miyakejima has been battling volcanic eruptions for years. The island’s way of life is deeply rooted in the struggle against eruptions. The group was surprised to see the black ground by volcanic ejecta. Everywhere on the coast and on the land there is a connection to the eruption.

 その噴火の影響で、栄養分が少ない環境で、空気中の窒素を固定化する樹木オオヤシャブシが育ち、次にススキが生えて、植生が回復していく様子を説明してもらいました。

 さらに、そのオオヤシャブシを数メートル間隔で植えることで土地に養分を与え、そこに特産の野菜アシタバを育てる知恵を見せてもらいました。

 The group was told how the growth of the Oyashabushi tree, which fixes nitrogen in the air into the soil, in a nutrient-poor environment, followed by the growth of silver grass, and then the recovery of vegetation.

 The participants were also shown the wisdom of planting the Oyashabushi trees at intervals of several meters to provide nutrients to the soil and to grow ashitaba, a local vegetable.

 海岸部分では、断崖絶壁に黒潮が打ち付ける光景に見入っていました。ヤップ島では、島全体がサンゴ礁で囲まれ、切り立った断崖を見ることは出来ません。

 サンゴ礁に囲まれた波のない礁湖(ラグーン)と呼ばれる静かな海と、砕けたサンゴが作る白い砂浜が当たり前のヤップとは、まったく違った光景に、自分たちの自然環境の価値にも気付いていたようでした。

 On the coastal part of the island, we watched the Kuroshio Current lapping against the cliffs. On Yap Island, the entire island is surrounded by coral reefs, and you cannot see the sheer cliffs.

 They seemed to have realized the value of their natural environment in the very different scene from Yap, where the calm sea, called a lagoon, surrounded by coral reefs without waves, and white sandy beaches made of crushed coral are the norm.

 後半は、雪が残る新潟県南魚沼市に移動。日本人の食を支えるおコメが、どのように造られてきたかを、エコプラスが行っている無農薬田んぼでの体験活動を通してどのように伝えているかを学んでもらいました。3人は、実際に雪が解けたばかりの田んぼに入り、木灰をまき、三本ぐわで古株を起こし、シャベルとくわであぜを作り直す作業を体験しました。

 田んぼを巡る水がどのよう配置され、その流れがどのよう管理維持されているかも、説明を聞きました。

 ヤップ島では、日本のサトイモが巨大に育ったようなタロイモが主食となっていて、田んぼのような湿地がタロイモ畑として管理されています。

 They seemed to have realized the value of their natural environment in the very different scene from Yap, where the calm sea, called a lagoon, surrounded by coral reefs without waves, and white sandy beaches made of crushed coral are the norm.

 In the second half of the tour, we moved to Minamiuonuma City in Niigata Prefecture, where snow still lingers. The three of them actually entered the rice fields where the snow had just melted and experienced the process of spreading wood ash, raising old stubble with three stakes, and rebuilding the edge of the rice field with shovels and hoes. 

 They also heard explanations of how the water around the rice fields is arranged and how the flow of water is managed and maintained.

 On Yap Island, the staple food is taro and wetlands like rice paddies are managed as taro fields.

 異なっているようで、似ていることをしているんだな、とルブモウさんはふり返りで語っていました。

 エコツアーはいろいろな解釈がされて世界中でさまざまに展開されています。

 その場の自然と伝統的な暮らしの関係を理解することで、次の社会づくりへのヒントを探す、そんなことがヤップ島でのエコツアーの軸になっていきそうな研修でした。

 They seem different, but they do similar things, Lubumow said in his reflections.

 Ecotourism is interpreted and developed in many different ways around the world.

 It seemed that understanding the relationship between nature and traditional lifestyles in a given place and looking for clues for the next sustainable future would be the axis of ecotourism in Yap Island.

海外の野外教育者たちが南魚沼を探訪

Outdoor specialists visited Minami-uonuma

 エコプラスは、2024年3月2日と3日、国際学会のために来日した海外からの研究者を対象としたフィールドトリップを、新潟県南魚沼市を舞台に開催しました。

 参加したのは、翌週から東京で開催された国際野外教育学会(International Outdoor Education Research Conference, IOERC 10)への出席者の一部。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、シンガポールの8カ国からの17人。

 この学会がアジアで開催されるのは初めて。北海道や長野県などでのフィールドトリップが5つ設定された中で、最初に定員になってしまう人気でした。このため、地元のみなさんに協力いただき、移動の車両などを確保して、当初予定の枠を増やしての実施でした。

 On March 2 and 3, 2024, ECOPLUS organized a field trip to Minamiuonuma City, Niigata Prefecture, for overseas researchers who came to Japan for an international conference.

 The participants were part of a group attending the International Outdoor Education Research Conference (IOERC 10), which began the following week in Tokyo. Seventeen people from eight countries – Canada, Australia, New Zealand, the United Kingdom, Denmark, Norway, Greece, and Singapore – participated in this field trip.

 This is the first time the IOERC has been held in Asia. Among the five field trips arranged in Hokkaido, Nagano and Niigata, this field trip was filled up quickly. Therefore, with the cooperation of local residents, we were able to secure transportation, and increase the number of participants.

 テーマは「日本の自然と暮らし」。まだ1mを超す雪が残る山あいの清水集落に滞在させてもらいました、

 野外活動の専門家たちとあって、日本伝統のかんじきにもすぐに慣れて、雪の上を歩いて集落そばにある神社や森を訪ねました。

 地元の生態系に詳しい深沢和基さんが、雪の上の動物の足跡などを説明。山をご神体として敬ってきた古くからの伝統なども知ってもらいました。

 民宿での食事には、山菜や煮物など地元の食材が次々に登場。前年の山菜を新鮮な状態で保存する技などにも感嘆の声を上げていました。

 The theme was “Nature and Life in Japan. We were allowed to stay in the mountain village of Shimizu village, where there was still more than a meter of snow remaining,

 The group of outdoor specialists quickly got used to wearing  “kanjiki,”  or traditional Japanese snow shoes, and walked on the snow to visit shrines and forests near the village.

 FUKASAWA Kazuki, a local nature expert, explained the animal tracks in the snow. He also explained them the long tradition of respecting the mountain as a deity.

 At the guesthouse, local foods such as wild vegetables and meat were served one after another. They were amazed at the technique of preserving the previous year’s wild vegetables in a fresh state.

 2日目には、市街地に移動して、500年の歴史を持つ禅寺龍澤寺での座禅体験。さらには300年以上続く酒蔵「青木酒造」での日本酒の仕込みの見学もさせてもらいました。

 ほとんどが日本は初めての訪問。東京や京都という観光地とは違った、日本の農山村の自然と暮らしに、参加者一同は多いに刺激を受けたようでした。野外教育の概念をさらに深く広くする題材にしてもらえたと思います。

 地元のみなさんのご協力、ありがとうございました。

 On the second day, the group moved to the town for a Zen practice at the 500-year-old Ryuzawa-ji  Zen Temple. They were also able to observe the brewing of sake at the300-year-old Aoki Sake Brewery.

 For most of them, it was their first visit to Japan. The participants seemed to be stimulated by the nature and lifestyle of Japanese rural and mountain villages, which were different from the typical Japanese tourist spots such as Tokyo or Kyoto. The participants seemed to deepen and broaden their concept of outdoor education.

 We really appreciate the cooperation of the local people.

インターンインタビュー 鈴木泰浩さん

~人間の五感は馬鹿に出来ない~

プロフィール 栃木県出身。東京の大学を卒業後、約3年間の会社員を経て公認会計士の資格を取得、現在は鈴木泰浩公認会計士・税理士事務所の代表。中学1年生の1992年にエコプラス主催の第一回のヤップ島プログラムに参加した。現在も正会員として総会に参加してくださるなど、エコプラスとの関係は長い。

「ヤップでの思い出を教えてください」

 習っていた英会話教室のつてで高野さんとお会いする機会があり、ヤップ島プログラムに参加しました。第1回目は男性陣が中学生とか小学生で、女性陣は高校生が中心でした。初めての海外だったのですが、地元の小学校に寝泊まりして、自分たちで食べ物や飲み物を自給自足するキャンプ生活でした。あまり適応力もなかったんで結構大変だったなという記憶があります。みんなで計画的に飲んでいたオレンジジュースを男子組がこっそり一気に飲んでしまう事件があったのは、はっきりと覚えています。

1992年最初のヤップ島プログラム。小学生から高校生までが参加。鈴木さんは前列左端の黄色い服装。

 当時ヤップがあるミクロネシア連邦はアメリカの援助を受けていく中で、様々なものが変わり始めている過渡期だったんですよね。現地でいろいろお話を聞いたり、ライフスタイルなどを目の当たりにして、こういう風に今後変わっていくんだろうなというのを感じることができました。実はヤップは太平洋戦争に日本が占領していたところでもあったので、日本語がわかる方も何人かいらっしゃいました。今はどうなっているのか分からないですが、観光地されていない自然がとても綺麗でした。

 しかし、当時は中学1年生だったので、まだ自分の中で自我みたいなものもなかったですし、幼かったので、自分の中ではすぐには消化できなかったです。キャンプ生活をやって「日本に帰ってきて便利だなあ」、みたいな子供の感想しか感じることができなかったのが正直なところです。ただ、便利な世界とそうでない世界があることは感じることができました。具体的なライフスタイルが変わったかと言われると、ただ普通の田舎の中学生に戻ったという感じですが。

「今のお仕事はどんなことをされているのですか」

 公認会計士は、まず1つの仕事としては、会計監査の仕事があります。
 上場している会社では、投資家が株の売り買いをするわけなのですが、投資家は会社の財務諸表の成績を見て投資の売買を判断します。要するにその財務諸表というものが重要で、それが正しくないと、いろいろなところに波及していくわけですよね。
 倒産しそうな会社が今安全ですよ、みたいな感じで財務諸表に手を加えることをして、それを信じて投資家が株を買ったり銀行が融資したりしたら問題になるので、その財務諸表が正しいかどうかというのを監査証明する、というのが会計士の重要な仕事としてあります。

 会計士になると監査法人という会計監査をメインにする組織に入って仕事をするんですけど、長年監査法人に居続ける方もいらっしゃる一方で、私みたいに独立して会社の経理や会計などを手伝ったり、上場を目指す会社さんのために経理体制を整えたり、内部統制の仕組みを作ったりといった仕事などがあります。要は色々ありますね。

「会計士を目指すことになったきっかけを教えてください」

 大学時代は別に会計士の勉強はしてなくて、大学の社会学部で社会学を勉強していました。これになりたいというのが特にない中で就職活動をして、最初NTTドコモに行ったんですよね。そこで3年間くらい働いていたんですけど、時間的な余裕も少しあったんで簿記の勉強をやってみようかなと思ったんです。簿記の2級から始まって、簿記の1級までとったんですけど、これがしっくりきたというかすごく面白いなっていうのを感じました。

 なので、会社のそういう部署に行こうか迷ったんですけど、せっかくならもうちょっと上のステップを目指そうかなって思って、会計士を目指すことになりました。2年間無職になって、そこで勉強して、会計士の資格をとって、という感じです。結構人生回り道した感じですね。全然ストレートには行ってないです。

「ヤップの経験は今に活かされていますか?」

 仕事には直接影響はないですかね。
 けど仕事をやっていて思うのですが、現場に行くっていうのはすごく重要なことだと実感します。ここ数年のコロナ禍の影響で、リモートで仕事が完結することができるようになったんですよね。Zoomの打ち合わせで完結するような仕事も増えました。
 でも一方で、やはり重要なポイントではお客さんの顔を見て話さないといけないなと思います。
 やはり人間の五感というのは馬鹿に出来なくて、実際に見ることでしか得られない情報というものはたくさんあると思います。

 たとえば工場の衛生状態や管理状況、作っているものの質感や従業員の雰囲気など、色んな情報が得られるわけです。
 それでヤップに行って思ったことは、当時中学生のときは消化できなかったという話をしたと思うんですけど、それでもやはりものすごい情報を感じている訳ですね。記憶から無くなっている部分はありますが、感じたものは強烈な体験として残っています。
 日本の田舎で普通に生活するだけでは味わえないものを体験したわけじゃないですか。だから人生にプラスになるかどうかわからないけど、長い目で見ると何らかの影響を与える物もあるというような、まあつまり一次情報を得ることの重要性ですかね。そういうものを感じました。

「エコプラスに共感できることは?」

 体験を重視しているところですかね。継続して体験型のプログラムを続けるというのは色々な方々のご協力が必要でとても大変なことだと思います。ヤップ島に関しても良好な関係性がなければ、そういうプログラムって続かないと思いますので、高野さん大前さんがこうして続けてらっしゃるのは素晴らしいことだと思います。

 ヤップでは、すごく良い経験をさせてもらったなと。人間としての幅じゃないですけど、それが広がる一部分になったのかなというのを感じていて、若い方々がエコプラスでそういう経験をしていただきたいという思いがありますので、今でもエコプラスに寄付をしています。あとは、以前エコプラスに関わっていた方で、その活動に共感して寄付をしたいっていうのは結構いらっしゃると思うので、そういう方々が寄付しやすいような仕組みを作っていくとエコプラスの活動を多くの人に知っていただくきっかけになるのではないでしょうか。

「若者に向けてのメッセージをお願いします」

 今の若い方は皆さん優秀だなって思います。今の学生さんはちゃんと勉強しているっていうイメージがあるので、とくにメッセージというよりかは一緒に頑張りましょうって感じですね(笑)。私の話をすると、公認会計士する前にドコモで、3年間働いたのは、結果としては良かった、悪かったの両方ですかね。周りの人も新卒で就職して何年かは働いた方がいいという考え方の人も多く、社会に出てみないとわからないこともあるなと思い新卒で就職をしました。けれど、思うのは、やはり周りからすれば、有利不利っていう話に傾きがちなんですけど、長い目で見たら、自分がこうやりたいっていうその自分の気持ちを重視して選択したら、それがその世間的に見て有利不利かっていうのはそんなに大した話じゃないと思うんです。だから自分の中でちゃんと筋を通して、本当にやりたいことをやるのが一番いいと思います。

【インタビューを終えて思ったこと】

 30年前のヤップの話を当時中学生だった視点から語っていただき、今のヤップとの違いを知る面白い機会になりました。また、公認会計士に至るまでも紆余曲折があったことを知り、今有利かどうかは気にせず、自分の中で筋を通すのが一番という言葉がとても印象に残りました。私も今後色々選択に迫られることが多くなると思いますが、この言葉を胸にして頑張ろうと思いました。

聞き手:中山 裕夢

インターンインタビュー 小松洋一さん

~豊かさとは気持ちのやりとり~

プロフィール 愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ、しまなみ海道のちょうど真ん中に位置する愛媛県大三島でパン屋「まるまど」を営まれています。 

「エコプラスとの出会いは?」

 僕がエコプラスとの関わりをもったのは、大学生のとき環境問題に取り組むNPO法人にインターン活動をおこなうCSOラーニング制度のイベントのインタビューを通してでした。その際、インタビュー受けてくださったのが大前さんで、そこからエコプラスの活動に興味をもち、企画終了後はエコプラスがおこなっていた愛知万博(*2005年開催)のスタッフとして活動させていただきました。その活動で、日本で育ち日本しか見ていない僕にとっては、ちょっとした海外の人のありかたや文化がとても刺激になって、それで海外に行ってみたいなということを強く思いました。このエコプラスが開催していた愛知万博での異文化交流がきっかけで、その後の僕のカナダに留学することや、エジンバラ大学で学ぶことなどその先の展開へのきっかけとなりました。 

愛知万博の地球市民村にエコプラスが出展、アラスカの少数民族の子どもたちを招くなどした1カ月、エコプラスのブースの運営にあたってもらいました。そのアラスカの子どもたちと。前列左から2人目が小松さん

「どんな留学をされたのですか?」

 愛知万博での経験も影響して、海外で生活をしてみたいという気持ちが強くなり、カナダへ「WWOOF」という制度を利用して、オーガニックファームに農場体験に行きました。農作業を手伝う代わりに寝る場所と、ご飯を提供していただけるもので有機農業を営む農業のお手伝いをおこなうものです。
 当時、僕は全く英語が喋れず、現地で仲良くしてくれた方には僕に初めて会ったとき、僕が「Yes,No,Wow」しか言えなかったよねって言われるくらい、英語は全然できなかったんです。
 海外での生活を通して、英語を話す、学ぶということが、受験するためのツールであるとか、良い点数や良い成績を取って自分のアイデンティティになるとかそういったものではなく、私が生き残るために、目の前にいる人とコミュニケーションをとるためのツールである。ということを身に染みて感じました。そのことに気が付いてから英語の勉強の仕方や本能的に英語を身につけたいと感じ、とんでもなく英語力が身に付きました。 

「エジンバラ大学に留学をしたきっかけは?」 

 大学卒業後、世界をもっと見たいなと思っていたので就職の道は選びませんでした。大学では里山の保全活動や、自分たちで耕作放棄された田んぼを、学生の手で再興しようという環境団体を大学1年ときに立ち上げて、4年間そういう取り組みをしていたので、農業や食とかに関心がどんどん上がっていったんです。
 その中で、ヨーロッパの共通農業政策に興味をもちました。共通農業政策は、生産性の向上や農家の収入と生活水準の保障、消費者への適切な価格での農産物供給を目的に行っているものです。その共通農業政策が、どれだけ経済的な効果や雇用を生んでいるのかについて一定期間すごく興味があったので、そんな勉強ができる大学の一つとして、エジンバラ大学に出願をしました。
 推薦状は高野さんにも書いていただいて、エジンバラ大学は早々に合格をいただいたので、それで高野さんとの繋がりもあるし、なんかすごい面白そうだね、行ってみたいなと思ったのでエジンバラ大学に決めたって感じでした。

「エジンバラ大学を卒業後は?」

 帰国して、外資系のマーケティング会社に務めました。子供が生まれることをきっかけに退職して、地域おこし協力隊での制度を利用して、愛媛県今治市大三島に移住しました。大三島に住んでみると樹齢2600年の大樹を目の前にしたときの自然の偉大さ、人の豊かさ、食べ物の美味しさなど発見の連続でした。そんな中でこの島にしかない食べ物や風土を生かしたものを使って地域活性化をしたいと考え、島の特産品みかんを使ったパンを作ることを始めました。

「どんなパンを作っているのですか?」

 大三島では、温州みかんをはじめとした愛媛県のオリジナル品種である「紅マドンナ」「甘平」など約40種類もの柑橘類が栽培されています。そんな大三島の特産品で、みかん酵母のパンを作りました。みかん以外でもパンを作る材料は、地元大三島産や有機栽培された素材にこだわっています。そんなお店「まるまど」のパンを通して、大三島の恵みを堪能してもらいたいなと思っています。大三島の豊かな食材で、その時一番美味しい旬の味わいや、その大三島でしか食べられないものが、地域の人や、旅をする人にとって価値あるものになると信じています。 

 「まるまど」の建物、内装は地元の職人さんにお願いして、地域の方が観葉植物を持って来てくださるなど、地域の方の助けがあって、完成しました。なので「まるまど」は、僕だけではなく地域の方と一緒に作り上げた空間ですね。僕の目指していたものは、地域に根ざしたパン屋、地域の人たちの関係性の中で成立するものだったので。やっぱり、自分のエゴだけで作り上げた空間には人は集まらないから、いろんな人の思いがあるからこそ、居心地の良い空間になったのかなと思っています。 

「大三島での暮らしは?」 

 僕が思う大三島での暮らしの豊かさは、地域の人との温かい気持ちのやり取りですかね。大三島の主産業は農業なので、農家さんや家庭菜園で野菜や食べ物を育てる人も多いです。
 そんな地域の方々が育てた野菜や、柑橘の時期にはみかんをたくさんくださったり、東京で買えば一万円以上しそうな大きなアワビをくださったり。利益や効率で何事もとらえるのではなく、素直に相手に喜んでほしいからあげる。そこにある気持ちのやりとりに豊かさを感じますね。自分だけが豊かに暮らすというよりも、自分と関係する人たちを含めて豊かに暮らす。そんな生活が根付いています。

 だから大三島の暮らしは、都会的な暮らしとはちょっとあり方が違うんですよね。どこかの組織に属して、働いて、お給料もらうのがサラリーマンじゃないですか。そのもらったお給料で、いろんなサービスを受けて、暮らしを豊かにするみたいなのが都市的な暮らしだと思うのだけど、地方だとやっぱり収入も少ないので、暮らしを豊かにするために、お金をいっぱい稼ぐことをゴールとするよりも、その地域の中で、何か助け合って暮らす風土が息づいていて、そんな暮らしの在り方が大三島に住んでいて一番豊かだなと感じます。
 地域の人とのその関係性に豊かさを感じるようになって、経済的な豊かさが必ずしも豊かな生活ではないことに気づかされました。

「エコプラスの活動で共感できることは?」

 机上で学ぶということではなく実際に現地に足を運んで、自分の五感で体感していることですかね。体験を通して、自分が五感を通して感じたことに嘘はないというか、自分の原体験ほど根拠のあるものはないと思います。 今僕が大三島でのパン屋を営んでいるのも、エコプラスの体験の中で自分にとって豊かさって一体何なんだろうって、誰かに教えられたものとかではなくて、自分自身がちゃんと内側から共感して、これを自分の生き方にしたい、それを実現することで僕らの周りにいる人たちも暮らしが豊かになる、みたいなそういう感覚のベースにはやっぱり、エコプラスの活動に参加させてもらった体験があるのではないかと思います。

「若者に向けてのメッセージをお願いします」 

 迷ったらどんなことでも積極的に経験してください。
 これはエコプラスでの活動で大切にしていることとも重なりますが、たくさん体験して、その行動に移していく中で、様々な世代や立場、文化の違いも含めて人に会うっていうのも、すごく大事なことだと思います。やっぱり面白い人の周りに面白い人たちが集まってるから、そういう方々のエネルギーとか行動力に巻き込まれて自分の思ってもみなかった良い方向へと導かれていくはずですよ。
 そして学生の時間は、責任が自分の中に完結する貴重な時間です。自分の中にある違和感や素直な声をきいて自分の本質で、生きることを大切にしてください。そうすることで、自分自身があるべき方向へと力が働いていきます。

【Z世代の私だからいいなと思ったこと】

 その地域の空気、環境のなかで育った食材をいただけることの尊さや、その地域の人たちと関わることで得られる豊かさが、何より羨ましいと思いました。自分がその地域で生きている証を、その地域の方との交流から感じる。これは私の住んでいる東京での暮らしにはないものなので 。また、都会に住んでいるとコンビニエンスストアで売られているものが、物価高で高騰したり、社会情勢にどれだけ影響しているかを日々感じます。しかし、大三島での暮らしのように、食べ物を地域の中で作り、助け合っていく文化は、本来人間があるべき暮らしであり、ほかの国からも影響を受けないのではないかと感じます。そしておすそ分けの文化も根付いているからこそ、食品ロスも減らすことができる循環的な暮らしに感動しました。

【小松さんのご厚意で「まるまど」のパンを送っていただきました】

 みかん酵母を使用したカンパーニュを初めとする、島の食材をふんだんに使った菓子パン・惣菜パン、味のバリエーション豊富なベーグルなど、どのパンもおいしかったです。
 特に感動したのはいちじくとくるみのパンでした。カンパーニュというと固く、パサついているイメージでしたが、歯切れのよいちょうど良い柔らかさでしっとりとしたカンパーニュは初めてでした。
 また意外な組み合わせのパンが多く、どんな味なのかわくわくしながら楽しめるパンが多かったです。それも大三島の食材でつくる「まるまど」だからできるパンなのでしょうか。
 東京にいながら大三島の食材をいただけている喜びを、ひしひしと感じました。ありがとうございました。 

聞き手:津田 萌香

For the sustainable and peaceful future