7月に入った頃から、山際や沢の近くに、白く涼しげな花が咲いています。
花は大きなもので直径が30㎝ほどもあり、草丈は人の身長くらい、またはそれ以上もあります。大きいのでとても目立ちます。
集落の人に花の名前を聞きました。「シシウド」と言うそうです。名前は強そうですが、線香花火のような形をしています。切り花で売られている「レースフラワー」にも似ていますね。
第2回棚田草刈りアート日本選手権大会が、2009年7月18-19日に、新潟県南魚沼市栃窪集落で開催され、24チーム53人がさまざまな文字やデザインを棚田のあぜに描き上げました。
第2回棚田草刈りアート日本選手権大会が、2009年7月18-19日に、新潟県南魚沼市栃窪集落で行われ、24チーム53人がさまざまな文字やデザインを棚田のあぜに描き上げました。
地元の南魚沼を担当する県職員らで作る「地球泉隊のーりんジャー」や栃窪小学校、それに高校生を含む若者チームなど、多様な人々が参加しました。
制作時間は、18日と19日午前中。傾斜が30度前後で高さ3メートル前後もある急で高いあぜが舞台です。
18日は終日雨で、足下が不安定な急な斜面に張りついての制作となりました。
19日は雨も上がり、時折晴れ間が広がる中で、作業が進みました。12時には、オープン参加チームも含め25作品が栃窪のあちこちに浮き上がりました。
栃窪小学校チームは、全校児童12人が考えた小学校の創立130周年を祝うデザインを、先生たちがカマと草刈り機で描き出しました。
同時開催した野菜市では、集落の人たちから寄せられたジャガイモ、キュウリ、ズッキーニ、ミニトマトなどの様々な野菜が並び、大会をにぎやかにしました。
「どこに銭まで払って草刈りするバカがいるかと思っていたが、やってみると面白かった」と、知人に誘われて大会に参加した男性。
審査員として参加した、長岡造形大学准教授の渡邉誠介さんからは、「とても面白い!まずは10年を目標に続けていってほしい」とのメッセージがありました。
同じく審査員として参加した、新潟お笑い集団NAMARA代表の江口歩さんは、「世の中からは限界集落と呼ばれているような地域が財産になる。ここ栃窪の在り方が日本を変える」と話しました。
【受賞作品】
優勝
チーム同級生「ブリッチ(橋)」
準優勝
チーム街道「皆さんに感謝」
第3位
笛木久稔「今年もやってるの〜」
銀峰閣賞
栃窪消防団「火の〜用心1−10」
シャトー塩沢賞
チーム徳右衛門「トッキッキ!? VS ハヤブサ」
上越国際スキー場賞
栃窪小学校「おめでとう130 栃窪小学校」
すし道楽賞
チームTAPPO「栃窪の仲間たち−クロサンショウウオ−」
とちくぼパノラマ農産賞
北里大学保健衛生専門学院「米(マイ)ホームタウン」
ホテルグリーンプラザ上越賞
宮部浩司「越後三山に日食が昇るなり」
栃窪集落は、全世帯数約60の小さな集落で、町の中心部から5キロほど離れた山あいにあり、路線バスもないことから過疎高齢化が大きな課題になっています。今回の日本選手権大会は、栃窪集落の若手が中心となった実行委員会が主催し、エコプラス TAPPO南魚沼やまとくらしの学校が事務局を務めました。
作品は8月中旬頃までご覧くいただくことができます。作品マップを栃窪集落センター内の「TAPPO南魚沼やまとくらしの学校」で配布しています。
【お問い合せ先】
特定非営利活動法人ECOPLUS
「TAPPO 南魚沼やまとくらしの学校」
〒949-6401 新潟県南魚沼市栃窪1120
TEL : 025-782-5103
FAX : 025-782-5104
E-mail : tappo@ecoplus.jp
Last year the 1st Japan Terraced Rice Paddy Weed Art Championship was so successful and popular that the second one this year was held much more attractively and powerfully.
Last year the 1st Japan Terraced Rice Paddy Weed Art Championship was so successful and popular that the second one this year was held much more attractively and powerfully.
24 teams drew various letters and designs on the grass paths between rice paddies.
Various teams joined, such as the team of municipal staff, teachers and young villagers including high school students.
They worked on 18th and in the morning of 19th. The site was 30- degree sloped and three meters high.
It was raining all day long on 18th and they had to work at unstable slope. It stopped raining on 19th that their work moved on smoothly under the sun. At noon 25 pieces of work were done.
Tochikubo ELS team drew a design for celebration of 130th year that 12 students designed.
Farm market was opened at the same time. Many kinds of vegetables, such as potatoes, cucumbers, zucchinis, and mini tomatoes helped warm this event up.
One of the participants said, \”At the beginning, I thought it stupid to join weeding with participating fee, but I found it fun! \”
WATANABE Seisuke, Associate professor of Nagaoka Institute of Design said, \”It is very interesting. Please continue for 10 years.\”
第2回棚田草刈りアート日本選手権大会エントリーされた作品のタイトルと説明をご紹介します。
1)チーム街道「皆さんに感謝」*準優勝
(作品説明)
後援や協力頂いた企業・団体の方はもちろん、参加いただいた選手の方々・そして見に来てくれた皆さん。そしてスタッフと関係者のすべての皆さんに支えられて大会が成り立っていることに「感謝」いたします。ありがとうございます。
(苦労したこと)
今年は畔をめいっぱい使いました。いろいろ書いてみたけど今年一番の猛暑の7/15は死ぬかと思った。天気と相談して草刈りしましょう。
今年は花びらの中を刈り込む方法にチャレンジしてみました。
2)チーム天地人「そのまんま『天地人』」
(作品説明)
大河ドラマ「天地人」の題字、武田双雲書をそのまんまリアルに再現しました。
(苦労したことなど)
武田双雲先生の躍動感あふれる文字を草刈りアートで挑戦しました。独特のハネに苦労しました。
3)チーム自販機「I ♡ 自ハン〜ペットボトルはリサイクル!」
(作品説明)
栃窪の若者がこよなく愛する自動販売機をテーマにした作品を作りました。
(苦労したことなど)
苦労なんかしなかったぜ!!
4)宮部浩司「越後三山に日食が昇るなり」*ホテルグリーンプラザ上越賞
(作品説明)
栃窪の目の前に広がる美しい山並みをスケッチしました。マウンテンの文字は、息子のリクエストです。
(苦労したことなど)
キャンパスが広すぎて、構図が決まりません。持病の腰がどこまで持つか不安です。
5)岩井初男「山にイルカが『いるかー!』とおこられるほど棚田は元気」
(作品説明)
マリーンピア日本海のイルカがジャンプしたら、 あれま、栃窪の棚田に来たこっつぉー!
(苦労したことなど)
イルカの場所と棚田〜の場所の草の伸びがちがい、うまくバランスがとれなかった。本当は近づけたかったのにー!!
上の田の畔は付録。トキめきにいがた、テニスは大原だ。
6)笛木真一「ウェルカム」
(作品説明)
栃窪を訪れる方々を笑顔でお迎えするような作品にしたかった。(笑顔に見えるでしょうか・・・?)
(苦労したことなど)
図案が決まらずに苦労した。
7)増子正弘「そっとのぞいて見てごらん」
(作品説明)
田っぽの水の中を表現しました。クモでなく、ヤゴです。
(苦労したことなど)
去年長ぐつで滑ったので、登山ぐつで足場を固めました。下書きとは全然違うものになってしまいましたが、これも楽しみの1つです。
8)北里大学保健衛生専門学院「米(マイ)ホームタウン」*とちくぼパノラマ農産賞
(作品説明)
自分たちの住んでる南魚沼市を愛して欲しい、外に出た子どもたちが心も体も故郷に帰ってきて欲しい、という願いを込めて。
(苦労したことなど)
棚田の「あぜ」の草刈りは想像以上にたいへんで急傾斜の昇り降りはまるでハードトレーニング!制作ではアルファベットの「O」を米粒の形にするのに苦労しました。
9)笛木正計「真鴨も歓迎?してますよ、きっと」
(作品説明)
みなさんようこそ!人通りの少ないこの田っぽで山河を眺めている鴨達です。家族にはエサをねだるクセに、他人には人見知り。でも、愛嬌ある顔と姿でみなさんを歓迎しています。もうすぐ産まれてくる私の子供も同じ気持ちで迎えたい。「ようこそ♪栃窪に」
(苦労したことなど)
草の長さも順調!草刈り機も好調♪作製日も決定!!しかし・・・斜面には「豆」が植えられていました・・・正面には2段に・・・手抜きではありません。刈れないのです!!(笑)
10)笛木政雄「山の生物達」
(作品説明)
山にすむ生き物、チョウチョ、トンボ、ウサギ、マムシ、キツネをつくってみました。
(苦労したことなど)
自分のセンスのなさにガッカリ。来年はガンバります。
11)栃窪消防団「火の〜用心1−10」*銀峰閣賞
(作品説明)
何は無くとも火の用心!!ドロボーは金目のモノしか盗りませんが、火事は思い出までも奪います。「火の用心」大臣より用心です。
(苦労したことなど)
地主が下草刈りをしてくれていたので前年より作りやすかったです。が、刈りすぎてバランスが悪くなってしまいました。
12)チームとちくぼパノラマ農産「パノラマ農産社歌 勝手にLet’s song」
(作品説明)
横に長〜い長い田んぼのあぜに、音をいっぱいちりばめました。きっと、かえるさんたちがパノラマ農産社歌を歌ってくれることでしょう。
(苦労したことなど)
雨の中、パノラマ農産精鋭スタッフ総出で取り組みました。本気になれば?ざっとこんなものでございます。
13)こぜんどん・ワンマン「火消しに燃える心・火の用心」
(作品説明)
消防団30年にして、いつも無災害を念頭にその心を表わした。火と心を炎にみたて。追伸:後を振り返り景色もご観覧下さい。
(苦労したことなど)
草が均一にならなく2週にわたり修正した事と作成日時があまりなかった。
14)チームTAPPO「栃窪の仲間たち−クロサンショウウオ−」*すし道楽賞
(作品説明)
水がきれいな栃窪のため池のクロサンショウウオです。彼らもまた、共に栃窪で暮らす仲間です。
(苦労したことなど)
草の生えている場所を選びつつ、クロサンショウウオの手・足・胴のバランスをとるのに苦労しました。ヒモで刈ると、かなり制作が楽だと聞いたので、今度刈るときはチップソーをやめて、ヒモに挑戦したいです。
15)チーム徳右衛門「トッキッキ!? VS ハヤブサ!!」*シャトー塩沢賞
(作品説明)
たる山に生息している絶滅危惧種のハヤブサとときめき国体のトッキッキを描きました。この作品には生態系保護の意味もふくまれています。そして、上の青いじゅうたんは夏の青空をイメージしました!!!!空だよ空っ!!
(苦労したことなど)
雨ガッパの暑苦しさには必ずやられます。何か良い考えはないものか?
16)笛木久稔「今年もやっているの〜」*第3位
(作品説明)
去年も下界がなんだか急に、あちこちがにぎやかになって、なにやらやっていたようだったんで、今年は近くで見てやろうとやってきたのじゃ〜。
(苦労したことなど)
構想1ヶ月、作成2時間。細かい所は気にしない。
17)チーム同級生「ブリッチ(橋)」*優勝
(作品説明)
人と自然の架け橋
(苦労したことなど)
時間がなかった。
18)笛木亨「トッチッチ」
(作品説明)
佐渡で大空に放たれたあの鳥がとうとう2009年栃窪に飛来!?
(苦労したことなど)
曲線を多く使うひらがなを多く使いました。全体のバランスをとるのが難しかったです。絵を描くって難しいですね。
19)JAC「安心安全!!」
(作品説明)
腹が減っては仕事はできないのだ!!まずは食べる事。農業は食べる事と直結しているのだ!!食べる物も仕事も全てが安全安心。
(苦労したことなど)
下刈りしなかったので、木が生えてたり草がはえてなかったり大変でした。字は明確じゃないけど、気持ちは明確なのだ。
20)栃窪小学校「おめでとう130 栃窪小学校」*上越国際スキー場賞
(作品説明)
今年度で創立130周年をむかえた栃窪小学校。子どもたちや職員が図案のアイデアを出し合い、最終選考の結果が、この言葉と校舎の絵です。長い歴史と未来に続く栃窪小への思いをこめてつくりました。
(苦労したことなど)
刈り払い機に慣れていない職員ですが、総出で取り組みました。文字数が多く、形もふぞろいですが、これも、歴史の1ページになってくれればと思っています。
21)地球泉隊のーりんジャー「のーりんジャー参上!」
(作品説明)
兼続の愛を胸に地球と人の心に新たな泉を!地球泉隊のーりんジャー見参。
(苦労したことなど)
面積が広いのにカマでの手作業が多く大変疲れました。
22)桑原正文「明日天キにな〜れ」
(作品説明)
大会当日の天気が良くなるように、お願いしながら刈りあげました。あと、景気もよくなるといいなぁ〜。たいへん字が読みづらくなっていますが、見る人の感性でお願いします。
(苦労したことなど)
また、今年もやっちゃいました・・・天気の「気」を失敗して、カタカナの「キ」になってます。来年は「き」を失敗しないよう頑張ります。雨の中で雨ガッパを着て頑張りました・・・
23)笛木守一「こしひかりNO.1」
(作品説明)
今年の収穫が良くなりますように。
(苦労したことなど)
昨年はローマ字でやったけど、今年はひらがなでやりました。苦労したことはのり面で文字を書くのがむずかしく、たいへんでした。昨年もローマ字で簡単ですが、はっきりかけなくて苦労した。
24)笛木正則「愛」
(作品説明)
NHK大河ドラマ「天地人」にちなんで、直江兼続の愛の前立をテーマに制作しました。上杉影勝と直江兼続の生誕の地、上田の庄(栃窪)をアピールできればと思います。
(苦労したことなど)
キャンパスが大きくて全体のバランスを取るのがむずかしいと感じました。
オープン参加)(有)すばる商事「兄弟愛」
(作品説明)
与六と与七の兄弟愛をアートしたつもりです。兄弟の愛が家族の愛に、それが地域の愛に、そして国が平和になり、世界が平和になる。
(苦労したことなど)
草があってほしい所に草がない!木がありうまくきれいな所があった。
イネが長さ約50㎝に成長しました。イロハ田んぼを挟む2本のあぜには、あぜ豆も育っています。
イロハ田んぼの稲が、長いもので50㎝を越えました。2週間前に測ったときから10㎝以上伸びています。クキの数も30本と、10本増えていました。
6月14日に「田んぼのイロハ」で草取りをし、片付いたかのように思われた雑草でしたが、その後どんどん生えてきました。
6月終わり頃にも、パノラマ農産で草取りをしたそうですが、それでも生き残ったコナギやオモダカなどの雑草が、元気を取り戻しています。
あぜには、4日−5日に行われた「田んぼのイロハ」で植えた「あぜ豆」が育っています。植えたのが暑い日でうまく根付かなかったものもありましたが、一緒に植えた桑原一男さん・信子さん、笛木久稔さんが、元気な苗と植え替えてくれました。
ちなみに「あぜ豆」とは、あぜで育てて収穫する豆のこと。各家庭でみそを手づくりしていたという30年以上前には、ほとんどのあぜに大豆の苗が植えられていたそうです。
豆の収穫にたどり着くまでには、天気に恵まれることと、芽を食べるウサギやサヤごと豆をかじるタヌキという強敵から豆を守ることが必要です。
無事成長し、タイミングが合えば、11月7日−8日の「田んぼのイロハ」にて大豆を収穫する予定です。
東京から家族連れと社会人の5人が、南魚沼市栃窪地区で、あぜの草刈りを学びました。
2009年7月4−5日、休日農業講座「田んぼのイロハ」の第4回が開かれました。東京から家族連れと社会人の5人が参加しました。
4日は、地元の笛木健作さんを講師に、あぜの草刈りに関する座学を行いました。
穂が実り始める頃にやって来る害虫から米を守るために、害虫の居場所となるあぜの草を刈らなくてはならない、それもタイミングを見計らって刈ることを教わりました。
また、大型機械や化学肥料が普及する前は、刈り取ったあぜの草が、堆肥になったり家畜の飼料になったりして、循環していたことも学びました。
夕食後はホタルを見に行きました。山からの清水が流れている場所に飛んでいて、多いところでは10匹以上いました。
5日は、実際の草刈り作業を体験しました。地元の桑原一男さんからカマの研ぎ方や扱い方を教わり、手刈りでイロハ田んぼの大きなあぜの草を刈りました。
草を刈った後に、あぜ豆植えも行いました。
梅雨の晴れ間の少し暑い日、気温は日中29度にもなりましたが、参加者は「気持ちのいい汗をかき、心身ともにリフレッシュできました」と笑顔で話していました。
2009年7月4日の田んぼのイロハでは、地元の笛木健作さんが講師となった座学が行われました。以下が座学の主な内容です
▼あぜの草刈りは、稲を虫の害から守るための作業
稲の害虫には、バッタの仲間のイナゴ、ガの仲間のニカメイガ、カメムシの仲間のウンカやヨコバイ、カメムシなどがいる。
ガから稲を守るために、昔は「誘蛾灯」という明かりをつけ、ガをおびき寄せていた。
カメムシは、若い籾や茎の汁を吸う。柔らかい稲を好む。穂肥えに使うチッ素が稲をやわらかくするので、チッ素過剰になった田んぼに多く出る。
除草剤をまくと、とても柔らかい土になり、あぜが壊れてしまう。結局自分の首をしめることになるので、除草剤は使わずに刈り取っている。
パノラマ農産では、肥料にはコメヌカを使っている。有機肥料を使って栽培すると、イトミミズなどが出てきて田んぼがビオトープ化される。カエルやクモが棲めば、虫を食べてくれる。「天敵」を利用して虫を駆除できる。化学肥料だとアスパラギン酸が発生し、これもカメムシの好物となる。
また、本で見たことだが、完熟していない有機肥料を使うとチッ素過剰になるそうだ。チッ素過剰になれば、カメムシが好む柔らかい稲になってしまうので、完熟した肥料を使うことも大事なようだ。
パノラマ農産は設立して2年。どんな肥料をいつまくのかを探りながらやっているところだ。
▼時期に合わせた畦畔(けいはん)除草が大事
草刈りは年中していればいいというものではない。稲の胚乳(はいにゅう)が濃い乳状をしている「乳熟期」にカメムシにつかれると、お米に黒い点がつく「斑点米」になってしまう。
乳熟期になってから、あぜの草を刈ってはいけない。あぜにいたカメムシが、田んぼの稲のほうに逃げてしまう。乳熟期を迎えるお盆の頃は草刈りをしてはいけない。その前に刈っておくのが大事。収穫後も、越冬成虫を駆除するため、草は刈っておく方がいい。
▼「カマは1日3回、人に向かう」
親戚の鍛冶屋のばあちゃんがよく「カマは1日3回、人に向かう」と言っていた。ばあちゃんは、昔カマを持って歩いていたところ、転んで手首の動脈を切ったことがあったそうだ。
刃物に慣れると油断が生じる。カマといえども刃物。取り扱いには十分に注意する必要がある。
▼栃窪の昔と今
昔はどこの家も牛や馬が家族として同居していた。牛や馬が踏んだワラや糞、残飯などを1年積んでおき堆肥を作っていた。堆肥は崩すととてもあたたかく、カブトムシの幼虫がザルいっぱいに見つかった。
春、まだ雪のある3月25日頃に、田んぼの雪を掘って堆肥を入れる。一人前になった人がやる仕事で、堆肥をソリに載せて運ぶ。「すっぺ」という、ワラで編んだ靴をはき、中にスギの葉っぱと唐辛子を入れた。初めは痛いがそのうちに慣れてポカポカした。
春の陽射しは紫外線が強く、角膜や結膜が炎症を起こす「雪眼(ゆきめ)」になることがあった。
牛や馬のエサは、あぜの草だった。冬用の草は、雪のないうちに刈り取って干しておいた。ススキやヨシ、オギなどのカヤ類を干し草にした。牛や馬はクズが好物だった。
草を2束刈り、馬や牛のクラにつけて運ぶ「朝草刈り」という、茶前仕事があった。茶前仕事は朝ご飯を食べる前の仕事で、このときに食べるのが「あんぼ」だった。あんぼは「茶の子」とも呼ばれる郷土食で、未熟米を挽いて粉にしたものを使って作る。米を減らさないようにするための工夫だ。
1日仕事には「メンパ」という弁当箱にぎっしりご飯を詰めて出かけた。昔はひとりあたり年間2俵くらいの米を食べていたものだが、今は1俵くらいだろう。
栃窪には、共同の作業所に発動機で動く精米機があり、それで精米していた。家の入ったところすぐが作業場になっていて、稲上げは家の中でやっていた。
不自由の多い暮らしであったが、常に助け合っていた。当時の暮らしを続けていれば、温暖化ということはなかっただろう。
様々な仕事をしたもので、田畑の仕事のほかに、家畜の世話、養蚕業をやっていた。
どこの家でも赤い卵を産むニワトリが10羽くらいいた。春にひよこを買って来て、冬になると潰して食べた。今は飼ってもすぐイタチにとられると思う。
養蚕業は現金収入の手段だった。多くて年に4回飼う家があった。養蚕では桑の葉が必要なので、桑畑がたくさんあった。里山といえば、桑畑だった。
今、カモシカやイノシシの獸害が増えている。昔は獣との棲み分けがもっとはっきりしていた。
先日も近くの沢で、ヤギの子くらいの大きさのカモシカが死んでいた。昨年は畑でカモシカが歩いた跡を見た。カモシカは走り回るくらいで、被害もそれほどには至らない。イノシシは問題で、ヤマイモを盗られたりした。昔はイノシシはいなかったが、最近増えてきている。イノシシは雪の中でも過ごせるようだ。
林の下刈りをしなくなったので、日光が入らない暗い林ばかりになった。大雪の時に倒れた大木はそのままで、「自然」に戻っていっている。畑も、林と同じような状態だ。