清里ミーティングで「地域に根ざした教育」を議論

環境教育の関係者が集まる清里フォーラムで、エコプラスは「地域に根ざした教育」に関して、発表とワークショップを行い、各地からの関係者と、地域と学びと持続可能性の重要性について意見を交わしました。

 

環境教育の関係者が集まる清里フォーラム(2014年11月15−17日、山梨県)で、エコプラスは「地域に根ざした教育(Place-Based education, PBE)」に関して、発表とワークショップを行い、全国各地からの関係者と、地域と学びと持続可能性の重要性について意見を交わしました。

PBEに関する発表を聞く参加者
PBEに関する発表を聞く参加者

日本の環境教育関係者が30年近くにわたって毎年意見を交換してきた清里フォーラムは、今年も約200人が参加。大学生や20代の若者たちを中心に、80歳近い高齢者までの幅広い関係者が北海道や鹿児島からも集まりました。

エコプラスは、15日夕に開かれた発表の場で、これまで3年間にわたって行ってきた調査・研究活動を約40人に報告。担当してきた水村賢治スタッフが、「学べば学ぶほどに若者は土地から離れていく」というインドの活動家オルデンドゥー・チャタジーさんの言葉などを紹介。人々が暮らしている「生活圏」を一つの地域として、その場と暮らし、人と人との関係性を学ぶ必要があるのではないかと発表しました。

ワークショップでのグループ討論
ワークショップでのグループ討論

16日のワークショップには、若者を中心に約30人が参加し、より深く意見を交換しました。

佐々木豊志・くりこま高原自然学校代表は、「学べば学ぶほどにその地域が好きになる学びが必要」と発言。

これを受けて、一旦は都会に出ても再び地域に戻ってくることが必要。そのためには、屋根とごはんが保障される必要がある。雇用・経済との関係が出てくる。都会の人が地域の人々と学びあう「農都交流」が大切になる、などの意見が活発に出されました。

今回は、「PBE地域に根ざした教育」が刊行された直後だったため、関係者の注目も高く、ほかのワークショップの中でも「地域に根ざす」という言葉が飛び交い、本も20冊以上が販売されました。

会場内でも、エコプラスの関係者を呼び止めてPBEについての疑問や意見が寄せられる貴重な機会となりました。

「Sustainability」をど真ん中に掲げるスコットランドの試み

エコプラスが連続して展開してきている地域に根ざした学びに関して、エジンバラ大学のピート・ヒギンズ教授を囲むフォーラムが、2014年11月13日、東京の早稲田大学で開かれ、スコットランドでの持続可能な社会づくりへの包括的な取り組みが参加者に衝撃を与えました。

 

このフォーラムは、来年1月11−12日に予定している国際フォーラム「ESDと『場の教育』」の前段企画として実施されました。

教育についての理論と具体的な政策について分かりやすくヒギンズ教授が話してくれました。
教育についての理論と具体的な政策について分かりやすくヒギンズ教授が話してくれました。

ヒギンズさんは、当初は名古屋でのユネスコ会合に参加予定でしたが、ご家族の不幸で日程がずれ、岡山での教師教育の国際会議に参加する前に東京に立ち寄って、フォーラムに参加してもらいました。

ヒギンズさんは、スコットランド政府が進める持続可能性に向けた教育(Learning for Sustainability)の枠組み策定に深くかかわった経験をもとに、現在進められている多彩な取り組みについて説明をしてくれました。

まずスコットランドでは、この5年間に教室の外での学びを重視する流れが出てきていて、小学校などの幼少期にカリキュラム全体に野外での学びが取り入れられ、地域やそれぞれの場所とのつながりも大切にされるようになってきていることが報告されました。

その上で、スコットランド自治政府が、持続可能性(Sustainability)を大きな目標に掲げ、2020年までにすべてのエネルギーを風力や潮力などの再生可能なエネルギーに転換すると決定。いまのままの資源の消費スピードでは地球がいくつあっても足らないと、「一つの地球を目指す学校(One Planet Schools)」が教育のゴールに設定されました。

この中で、自治政府の教育・科学・国語大臣のもとに諮問委員会が設けられ、ヒギンズさんが座長として2012年に報告書を提出。13年には31の要望事項すべてが自治政府の承認を受け、今年からその具体的な導入が始まっています。

幼稚園から大学までのすべての教員は持続可能性のための教育の講習を受け、すべての教育施設も持続可能性を考慮して設置運営されることが義務づけられました。教育だけでなく、農林水産業でも健康福祉の世界でも、地域政策でも、旅行業でも、すべての社会活動での持続可能性が中心に据えられているのだそうです。

エジンバラ大学はESDに関する中核的な役割を担う地域拠点(Regional Center of Expertise)になっていて、ヒギンズさんはその責任者でもあります。しかしヒギンズさんは「ESDという特別な新しい科目を教えるのではなくて、すべての科目に持続可能性についてのその地域における文脈を入れ込むべきなのだ」と強調していました。

学生から研究者、実践者、大使館関係者など多彩な人々が集まりました。
学生から研究者、実践者、大使館関係者など多彩な人々が集まりました。

参加したミクロネシア連邦大使館の職員は、「私たちの国ではアルファベットを習う時に見たこともないワニ(Alligator)のA、くま(Bear)のBと習います。自分の食べる伝統的な野菜の栽培方法も知らない世代が広がっているのです」とコメントするなど、活発な議論が展開されました。

 

(終了しました)プレフォーラム「ESDと場の教育」

エジンバラ大学教授ピート・ヒギンズの参加を得て、スコットランドでの持続可能性に向けた教育面での取り組み事例の紹介を受け、国内の研究者実践者とともに、地域と学びについての議論を交わします。

 

2014年11月13日に、東京・早稲田医学で、英国エジンバラ大学教授をゲストに、持続可能な社会づくりに向けた教育についてのフォーラムを開催します。
英語での開催になります。興味ある研究者、学生、実践者のみなさんの参加をお待ちしています。

ピート・ヒギンズさん。2011年にも来日、研究者や学生など多くのみなさんと話しあいました。
ピート・ヒギンズさん。2011年にも来日、研究者や学生など多くのみなさんと話しあいました。

趣旨:
名古屋で開かれる国連持続可能な開発のための10年の取りまとめ会議(11月10−12日)にあわせ、来日する海外ゲストも交えて、持続可能な開発のための教育(ESD)と、地域に根ざした学び(Place-Based Education)について意見交換する。英スコットランド政府での持続可能性教育の指導的役割を担うピート・ヒギンズ氏にスコットランドでの取り組みを報告してもらい、同時に国内事例を振り返りながら、持続可能な社会に向けた教育について意見を交換する。

ここでの議論を出発点に、地域と学びについて多面的に議論する国際フォーラムを2016年1月に東京で開催する予定。

日時:2014年11月13日午前9時半から正午
場所:東京都新宿区、早稲田大学22号館1階
早稲田グローバルゲートセミナールーム2
https://goo.gl/maps/OIDFw
使用言語:英語
主な参加者:
ピート・ヒギンズ エジンバラ大学教授
http://www.ed.ac.uk/schools-departments/education/about-us/people/academic-staff?person_id=203&cw_xml=profile.php
安藤聡彦 埼玉大学教授
木俣美樹男 東京学芸大学名誉教授
佐々木豊志 くりこま自然学校教授
高野孝子 早稲田大学教授/エコプラス代表理事

参加:無料

問い合わせ申し込み:
NPO法人エコプラス  info@ecoplus.jp
03-5294-1441 (当日090-3214-7549=大前)