教員たちも試される。何しろ多様なバックグランドの学生たちから、どんな角度の質問が来るかわからない。国籍も大学がある場所も、暮らしている社会も、日本についての知識もまちまちな学生たち相手に、彼らが理解し身につけることができるように、話を組み立て、彼らの反応を見ながら柔軟に授業を展開していく。
そして教員たちが、海外や日本人以外からの目線で日本について語り、ほとんどが日本人でない学生たちに教えているのが、日本人の私としてとても興味深い。まったく違うレンズで日本を見ることにつながる。日本人としての日本についての常識と違うことも多々あるし、知らなかったことも多い。
「現在、日本はまだ占領状態にある」とアメリカからの教員が話し始めた。終戦直後の日本の様子とアメリカの政策、アメリカからの支援、憲法9条をめぐるアメリカと日本の態度の変遷など、写真を見せながらテンポ良く話していく。
今の日本の政策に言及し、「日本にとっての大きな脅威は中国だ」と明言。教室にいる中国人学生たちはどのように受け止めているだろうかと思いながら聞いていた。
昨年は、日米中シンガポールの学生たちが混じるグループで靖国神社を訪れ、ディスカッションをしたという。思い切った試みであり、人によっては痛みを伴うかもしれない。だが大学の場でこうした重い課題を取り上げなくては、どこでできるだろう。多様な国々から集まった若い世代たちが、率直かつ冷静に意見交換をするのは意義深い。