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高野孝子の地球日記・エジンバラのクリスマスに

リボンがかかった塗装の2階建てバス

2016年12月後半、クリスマスを前にして、スコットランドの首都エジンバラの街はどんどん静かになっていくようだった。人々は仕事にめどをつけ、実家に戻ったり、休暇で海外に行ったりしているようだった。

街に派手な飾りはない。二階建てバスが、リボンで飾られたような模様に塗られていたり、目抜通りの建物が金や赤の飾りをつけていたりするくらいだ。

エジンバラに暮らす友人たちと久しぶりに再会した。たわいのない近況話に花が咲く。しかし同時に、英国がEUから離脱することや、アメリカの新しい大統領のことも話に入ってくる。

「まったくしょうがない。でも決まったんだから、これからを考えないとな」。

押し引きが続く英国とEUの様子は連日報道されていた。フランスやイタリア、ドイツ、そして増え続ける難民やシリア情勢。ただの話題としてでなく、実際に難民をサポートする団体に寄付をしたり、アレッポの状況を私に教えてくれたり、英国では、世界情勢を自分ごととしている人たちに多く会った。特別な人たちではない。家の修繕を頼んだ大工さんも難民の話をしていた。

彼らの会話のグローバルな幅に、こちらの知識がついていかない。日本のグローバル化は経済や商品で顕著だが、人の移動や仕事はまだヨーロッパほどではない。日本でグローバル化が進むときは、政治や人の意識まで変わるのだろうか。様々な国際的な事象を自分ごとに、と。

2004年に東ヨーロッパ諸国がEUに加盟したさい、英国にはたくさんの移民が働きに入ってきた。特にポーランドからの流入が多く、多くの友人たちが自虐的に冗談を言っていたのを覚えている。それでも、2015年に海岸に打ち寄せられたシリア難民の子どもの写真をきっかけに、英国で難民を受け入れるべきだという市民の声が高まった。難民支援のデモが行われ、チャリティ団体が物資を送る運動を始めた。ドイツからのプレッシャーもあって、英国政府は、そのあと数年間で2万人のシリア難民を受け入れると発表した。

日本は「移民を受け入れない」政策を堅持している。法務省のサイトによると、昨年の難民認定申請者数は7586人で過去最多だったという。一方認定者数は27人で、前年より16人増加。うち、シリア人は3名。

この政策を変えるだけの意識を日本人は持てるだろうか。いや、そもそも、国民がどんな意識を持っていようと、何を訴えようと、現政権にはまったく通用しないことがわかっているから、問題意識すら持つのがばからしい。考えない国民、それが彼らのねらいなのか。

ミサが行われた後の、セントメリー教会。

12月25日、クリスマスの朝。英国国教会派のSt Mary’s大聖堂を徒歩で目指した。この日は、バスはほぼ動かず、電車も止まっていて駅の門には鍵がかかっている。50分ほど早足で歩き、150年ほど前に建立が始まった大きな建物に到着し、10時からのミサに間に合った。

賛美歌と説教が繰り返される。途中、全員が立ち上がり、隣や前後に座っている人たちと握手し、”May peace be with you(平和があなたと共にありますように)”と微笑みあった。大人も子どもも。私も声をかけられて、少し戸惑った。

「平和があなたと共にありますように」。心の中で繰り返した。あなたの平和を祈るのだ。私が幸せでありますように、ではなく。

セントメリー教会の入り口

教会を出ると、少し離れた左手に物乞いが座り、すぐ右手に茶褐色の肌をした中年女性が「ビッグイシュー」(ホームレスの自立を支援する雑誌)を掲げて立っていた。1部買おうとしたら「私にも寄付をください」と言って、1ポンド少ないお釣を私に差し出し、にっこり笑った。

その雑誌には、失業や貧困、ドラッグなどに苦しみながらも前を向こうとする人たちの記事の中、スコットランド自治政府首相が、英国のEU離脱とシリア難民受け入れ、アメリカの大統領についてコメントする記事が載っていた。

英国社会での政治と暮らしの近さ、人々の社会的意識の高さを思った。

申込書ーー国際シンポジウム「グローバリゼーションと地域」

国際シンポジウム「グローバリゼーションと地域」(1月21日立教大学、22日早稲田大学)の申し込み画面です。以下にご記入いただき、送信いただければ、受付させていただきます。

参加希望分科会(準備の都合がありますので、事前に希望をいただけると助かります、後からメールでinfo@ecoplus.jpあてにお知らせいただいても結構です)

21日(土)夕のレセプショ ン(一般3,500円、学生2,500円=予定)に

「田んぼのイロハ」稲刈り編を行いました

2016年10月1〜2日に新潟県南魚沼市栃窪集落で休日農業講座「田んぼのイロハ」稲刈り編を行いました。

161001三橋親子怜正くん
親子で一緒に稲刈り

一時は青空も広がる中で、家族、会社員、学生らと稲刈りをしました。1日目は座学の予定でしたが、不安定な天候だったため晴れているうちに作業をしようということで、初日からの稲刈りとなりました。

今年の夏の高温で稲が伸びすぎ、そして8、9月の相次ぐ雨や台風などの影響で倒れてしまっている稲もありました。雨水を吸い込んだぬかるむ田んぼに苦闘しながらの作業で、2日間にわたる作業でも全体の4分の1程度が残ってしまいました。
作業後には青空のもと田んぼの横で、自然のおいしさがたくさんつまったお昼ごはんを食べました。

今年は暖冬の影響による5〜6月の水不足、8〜9月の雨や台風など、気候が不安定でした。農家のみなさんは悩みが多い1年でした。プログラム参加者にとって自然とともに生きるということ、自然の中でお米が採れるということ、がどのようなことかを学べた2日間になったと思います。

161002ぬかる田んぼの状況

ルム村で温かく迎えていただきましたーーヤップ島プログラム2016

フェアウェル後の集合写真
フェアウェル後の集合写真

ヤップ島プログラム2016は、11人の参加者とともに、2016年8月16日から28日までの現地11泊12日の日程で行われました。

 

滞在させていただいたのはヤップ島中部のルム村。2005、07、12年に引き続く4回目の滞在で、今回も変わらぬ温かな人々の出迎えを受けました。

17日未明に到着したヤップ島は、激しい雨が打ちつける嵐。入国審査を待つ列にも横なぐりの雨が降り注ぎ、眠気も吹き飛びました。

ヤップ島では、3月ごろから雨がまったく降らない干ばつ状態となり大規模な山火事まで発生していたそうです。7月末ごろからは一転して悪天候の連続となり、ルム村では数週間にわたって漁に出られていないという住民もいました。

このため、ルム村に入ってのちも、魚の差し入れはしばらくなし。「魚がなくて本当に申し訳ない。せめてこれでも食べてくれ」と、大きなカニの差し入れをもらいました。甲羅が大人のゲンコツほどもある陸ガニ。夜のカニ取りにも誘ってもらいました。

ヤップ島プログラム2016始まりました

成田空港でグループチェックイン
成田空港でグループチェックイン

2016年のヤップ島プログラムが、8月16日から始まりました。11人の参加者が、午前8時半に成田空港に集合。大きな団体装備も含めてチェックインし、同11時発の飛行機で経由地のグアム島に到着しました。同日午後11時グアム発の飛行機でヤップ島に入り、28日までの現地12日間の暮らしに入ります。

今年の参加者は、高校生から大学生まで、女性6人、男性5人。いずれも首都圏在住の若者たちです。

グアム空港での乗り継ぎ時間を使った結団式。それぞれが抱負を述べあう
グアム空港での乗り継ぎ時間を使った結団式。それぞれが抱負を述べあう

グアム島での結団式では、「これまで知らない自然や文化の中にどっぷりと浸かってみたい」「これから就職など、実社会でどう生きていくか考える時に、幸せとか豊かさとかを根っこから考えてみたい」などという発言が出ていました。

台風7号を抜けた青空
台風7号を抜けた青空

成田空港を出てしばらくは台風7号の近くを経由したためか、雲の中でしたが、グアム島に近づくとすっきりした青空が広がりました。ヤップ島ではどんな空が広がっているでしょうか。ネット回線が細いためヤップ島での活動報告は、おそらく帰国後になる予定です。

仲間と一緒だからできた、夏キャンプ

珍しい野生のショウブの群落
珍しい野生のショウブの群落

「星空の下で、夜中しゃべっていたのが楽しかった」
「山伏が、歴史の中で生き残ったのがすごい。もっと日本の歴史を学ぼうと思った」
2016年8月4日から7日の3泊4日、小4から中2の男女10人が、南魚沼市清水集落の河原を拠点に、生活や活動を共にしました。南魚沼市と十日町から三人の参加、名古屋のほか、茨城や埼玉など関東方面から集まりました。
スタッフは主に大学生たち。一緒に遊びつつ、時には厳しいコメントが入ります。清水集落の人たちも送迎や沢登りの指導、お話をしてくれたり、新鮮な野菜の差し入れ、神事の際に準備から子どもたちを混ぜていただくなど、お世話になりました。

このキャンプでは、それぞれが暮らしの上での役割を持ち、自分たちで考えて判断して実行することが原則。うまくいかないことがあれば、そこから学び、次につなげます。
初日は河原で生活の場作り。どこで暮らそうと、人間が必要なものは同じ、というメッセージの元、テントを立て、水場を確認し、かまどやトイレを作りました。これまで参加したことがある人たちが健闘しましたが、半ば湿った薪でご飯を炊くのは苦労しました。米が硬く、味付けがいまいちだったということでしたが、これは翌日、おいしい朝食を作ることにつながりました。

(終了しました)山里の自然と暮らしを満喫する子ども夏キャンプ

2,000m級の山々に囲まれた山里で、深い自然と、その地に育まれた文化を体験します。地元の山伏たちの火渡り神事にも参加します。小学5年生から高校生が対象です。子どもゆめ基金の助成で参加しやすくなっています。
仲間と協力して生活しながら、自分たちで暮らしを組み立て、行動します。

2015夏キャンプ イワナ滝で遊ぶ
2015夏キャンプ イワナ滝で遊ぶ

概要【日時】2016年8月4日(木)〜7日(日)
【場所】新潟県南魚沼市清水集落
【集合】8月4日(木)正午 現地(南魚沼市清水集落)集合、午後零時半開始
【解散】8月7日(日)午後2時現地解散
【対象】小学5年生〜高校生
【内容】テント設営、火おこし、野外料理、山登り、沢歩き、川遊び、星空観察、耕作放棄された棚田やブナ林での保全活動など。
【参加費】10,000円(初日夕食から4日目昼食まで9食、保険料込み)
【申込】NPO法人エコプラス
以下の登録票参加登録票と健康チェック表に記入の上、エコプラス(info@ecoplus.jp、ファクス03-5294-1442)までお送りください。

早稲田サマーセッション

「タイから来ました。日本に興味を持ったのはアニメが好きだからです」。「アメリカの大学に在籍しています。母が日本出身ですが、自分には初めての日本滞在です」。

早稲田サマーセッション、略してWSSという4週間のサマーコースの様子だ。今年で3年目となる。履修生はほとんどが海外からで、彼らにしてみれば「短期留学」だ。授業は英語で行われる。私は全体を見渡して、コースを考えたり担当の先生を見つけたりする役割だ。

世界67の国と地域からやってきた学生たち。
世界67の国と地域からやってきた学生たち。

初年度は手探りで、海外からの76名で開始。やってみたら教員たちにも刺激的で、学生たちもほぼ全員が大満足という評価を残した。そして3年目の今年、履修生は、世界各地67の大学からやって来た142名に加えて、留学から帰国直後の早大生らが18人。授業数は初年度の6から13に増えた。文化や経済、ビジネス、政治など幾つかの分野で、日本やアジアについて、世界の文脈で取り上げることになっている。教員は私を除いて9名だが、4名が海外からこのために来日し、残り5人のうち2人は外国人だ。日本に焦点が当てられるので、基本的に日本について研究している人たちだ。

私はあちこちの授業を訪問して様子を見るのだが、とてもおもしろい。

まず学生たちが多様であること。日本を始め、アジアの幾つかの国出身の学生たちは基本的に静かに聴いていることが多いが、オーストラリアやアメリカ、アジアでもシンガポールの大学生たちは、どんどん自ら手をあげて教員の話に質問したり、自分の知っている例をあげたりして、話が深まったり広がったりしていく。

海外勢も一緒ににぎやかな草取り・草刈りを実施

休日農業講座「田んぼのイロハ」草刈り・草刈り編が、2016年6月4−5日に、新潟県南魚沼市栃窪集落で開かれました。総勢16人のうち、5人が米国、中国、シンガポールからの若者で、にぎやかな2日間となりました。

田んぼに両手を突っ込んで土をかき回しながら、雑草を根こそぎはぎ取る。なかなか大変。
田んぼに両手を突っ込んで土をかき回しながら、雑草を根こそぎはぎ取る。なかなか大変。

草取りをしたのは、2週間前の5月21−22日に田植えをした通称「イロハ田んぼ」です。その田植えにも加わった首都圏からの社会人らのほか、2年前に草取りに参加した米国とシンガポールの若者や、早稲田大学の学生、それにエコプラスにインターンで来ている米国アーラム大学の学生らが、今回のプログラムに参加しました。

田車(たぐるま)の使い方を教わる。苗が等間隔でまっすぐに植わっていないと、田車もうまく通らない。
田車(たぐるま)の使い方を教わる。苗が等間隔でまっすぐに植わっていないと、田車もうまく通らない。

初日の散策では、集落上部の棚田を歩きました。中には水がまったく入らずひび割れが進んでいる田んぼもあり、みんなはびっくり。この冬の積雪が例年の半分以下だったことから、山からの水が極端に少なく、水回りがよくない田んぼは、大変な状況になっていました。

座学では、地元の集落営農組織である有限会社パノラマ農産の笛木晶さんから、今年の稲作の進行状況などを聞きました。パノラマ農産では、150枚の田んぼで耕作しているのですが、水不足で代かきから田植えへという作業が進まず、田植えができたのはまだ3分の1程度。「とにかく雨を待つしかない状況」だと晶さんは話していました。

除草剤に関しては、「そもそもベトナム戦争の枯葉剤にも関連する技術。除草剤を使うようになって田んぼからドジョウがまったくいなくなった。使わないに超したことはない」と晶さん。パノラマ農産で、無農薬米や減農薬米にこだわる理由を強調していました。

2日目の5日は、朝から快晴の中、田んぼへ。晶さんのほか地元の日熊良一さんも指導役で加わってくれました。

手で表面をかき回すやり方と、直径10センチ以上ある歯がついた車を回す「田車(たぐるま)」を使った除草方法の2つを教えてもらいました。

両方の手のひらを大きく広げて株の間の泥をかき混ぜていくと、数センチの小さな葉っぱしかなかった雑草が次々に浮き上がってきます。水の表面に無数の根っこが広がるほどです。

田車は、まっすぎに押しては引き、押しては引きしながら前進していきます。田んぼの泥がかき混ぜられ、雑草が引き抜かれていきます。

水不足の影響で全体的に水が少なく、乾いてしまった場所では田車の歯に土が固まりになってくっついて動きが取れない場所もありました。

手で取っていても、中腰で田んぼに向かっていると腰が痛くなります。

約2時間で約1反5畝(15アール)の除草作業を終了。次は腰が埋まるほどに大きく伸びたあぜの雑草をカマを使って刈り取りました。夏を思わせる日差しの中で、カマを振るって1時間弱、高さ3m以上もある大きなあぜがすっかりきれいになりました。

「人生最大の重労働でした。食べ物のありがたさが分りました」とアメリカの大学生。
日本の学生からは
「無農薬というのは本当に大変だということが分りました」
「少しの気候の変化で水が足らなくなり、農作業が大きな影響を受けるというのは驚きでした」
「無農薬田んぼには雑草やヒルやクモなど生き物がいっぱいいました。田んぼはお米の工場ではなくて、生態系の一部を借りて食料を作らせてもらっているということがよく分りました」
などさまざまなコメントが出されていました。

「田んぼのイロハ」田植え編を実施しました。

地元の農家の方による田植えのレクチャー。
地元の農家の方による田植えのレクチャー。

2016年5月21日から22日の2日間、南魚沼市栃窪集落で「田んぼのイロハ」田植え編が行われました。強い日差しの青空の下、13名の参加者が苗をひとつひとつ手で植えて、汗を流しました。

参加したのは、学生を含めて、関東から来た13名。2日間とも見事な快晴で、夏が近づく強い日差しの下、絶好の田植え日和となりました。

はだしで田んぼの土を感じながら、一つひとつ手で植えていきます。
はだしで田んぼの土を感じながら、一つひとつ手で植えていきます。

1日目、まずは栃窪集落を散策に出かけました。田植えを行う田んぼを見学し、網を使って生き物探し。ドジョウやメダカ、ヤゴなど、たくさんの生き物が見つかり、無農薬で作られる田んぼの豊かな生態系を実感しました。

散策から戻ると、「とちくぼパノラマ農産」の代表で、今回お世話になる笛木晶さんによる稲作のレクチャー。田植え前の苗づくりや肥料のことなどを聞きました。米作りの試行錯誤と、それがどう収量や味に影響してくるか具体的にお話しいただきました。その日の夕食には、実際に栃窪産のお米を味わうことができました。

2日目も晴天。絶好の田植え日和となりました。昔ながらの方法で、枠(わく)と呼ばれる木製の道具で田んぼにマス目をつけて、等間隔に手で植えていきます。はだしになって、土の感触を確かめながら、ひとつひとつの苗を丁寧に植えていく作業です。皆真剣な表情そのもので、3時間ほどですべて植えることができました。

田植えの後のお昼ごはんは、地元の女性達が作ったおにぎり、豚汁、山菜の煮物など。遠く越後の山々と、栃窪の棚田の絶景を眺めながらの昼食となりました。

参加者たちは、
「農家の方たちの大変さがよくわかった。」
「魚沼産のコシヒカリは本当においしく、実際にこだわって作っている姿を見ることができて勉強になった。」
http://tabinaw.jp/ecoplus/wp-admin/admin.php?page=sharing などと話していました。