ほんの少しだけお話しさせて頂きましたが、こういうことは、先程のバーンハート先生の話の中に出てきた、あの「氷山」の一番下の方、ふもとに来るようなごく一部となるのです。私どもが進めている、このヤーベスカニヤラクプロジェクトには長老にも参加してもらっています。このユーヤラックの教えを読むと長老の目には涙が浮かんできます。
この学校区ではこのユーヤラックの内容をカリキュラムの基本として活用しております。そして今お見せしているポスターの状態で学校の教室にはり出されています。ですから、これを見ながら就業前の子どもたち(幼稚園1年生ぐらいの小さな子ども)でもこれを暗唱できるようになっています。
私どもが進めているこのプログラムはあくまでも、その集落の人々のための、集落の人々が参加するためのプログラムであって、外の人が来て教えるものではありません。自分達の集落の長老たちの参加を得ながら進めている教育プログラムです。そしてこのプログラムに参加した人たちが、自分達の子どもにこの内容を教える、そしてまた子どもたちの仲間へと、この教えがどんどん広がりつつあります。この教えを知った人たちは自分達が何者であるかを知り、それを大変誇りに思うようになりました。また、このプログラムに参加している長老、お年寄りは、大変な知識を持っているので、その知識を若い人たちや夫婦に教えて欲しいと依頼されたことが嬉しく大変喜んで教えてくれています。彼らが遣う言葉は、これも非常にレベルが高い言葉であり、多くの人たちが忘れてしまった、あるいは全く知らないような、そういう言葉を使って教えてくれます。
このプログラムを始めて数年になりますが、この間に参加してくれていた長老たちの半分が亡くなってしまいました。このような長老が亡くなるということは彼らの持っていた膨大な知識も彼らの命とともに無くなってしまうということです。本来、より多くの人が学ぶべき、教えてもらうべきであった、そういう知識が失われるということの深刻さを考えることが大切です。日本に来てから、新潟県南魚沼市の栃窪集落というところに行きました。ここでも土地の子どもたちがお年寄りと一緒に活動しました。子どもたちが、「本当にたくさん学ばなければいけないことがあるんだね」と言ってくれたことが大変嬉しかったです。
まだまだお話ししたいことはあるのですけれども、私からのお話はこれぐらいで終わりにしたいと思います。皆様もぜひお年寄りを大切になさってください。そして環境を大切になさって下さい。それが皆さん自身を大切にすることにつながると思います。