生徒のための文化基準
これは、アラスカの全ての教育プログラムで義務づけられている27の文化基準の一つです。
「文化的に知識が豊かな生徒というのは自分のコミュニティの文化遺産や伝統にしっかりと根ざしている」
それぞれの文化基準に対して具体的な実践例が6つずつあります。それらはインターネットで見ることができます。
この文化基準に加えて、先住民族たちは教育制度の中の様々な要素において実施するための一連のガイドラインを制作しました。教師は何を知らなければいけないのか、学校で効果的に基準を実施するためにどんなことができるか、といったことです。これらが教師たちにどのように役に立っているかは、会場にいる妻キャロルに聞いて下さい。彼女は、フェアバンクスで小学校の教育プラグラムの責任者をつとめています。
その他にも、伝統的な子育て、親の役割に関する一連のガイドラインもあります。
教師の多くは他の地域から派遣されているので、地元の長老たちの役割、彼らが教育に貢献できるのかというのを、そういった外から来た教師たちにいかにわかってもらうのか特に懸念されました。この長老の女性ルイーズさんは、自分自身が受けたしつけについて話してくれました。このように、地元に伝わる知識を文化的に適切な方法で学校にとりこむ手助けをしてくれたのが長老たちです。ルイーズさんについては、シシリアさんが後で教育哲学についてお話しする時に、出てきます。
ユピックやチュピックというアラスカ南西部に住む人々は、子どもたちの教育について民族性に根ざした深い期待を表現します。
どのコミュニティにもその土地独自の知識が伝わっています。それを土台にして学校のカリキュラムを作ることができます。ここに載せているのは、地域と文化に根ざした、私たちが開発した教育のリソースの例です。生徒が学校で経験したことを、どのように学校の外の生活の中で活かしていくことができるのか、といったことが書かれています。
例えば、科学の授業では、アラスカの遠隔地のコミュニティであっても、コミュニティで実践されていないことを通して科学を教えることはほとんどありません。そりは摩擦の学習に使うことができます。地元に伝わる気象観察のスキルを衛星画像と比べて気象学を学ぶことができます。地元の言葉には、雪とか氷を表す実に様々な用語があり、物質の状態、昇華、エネルギーの伝達、熱力学なども学ぶことができます。
高校での数学の問題も地元の独自のテーマを使って作ることができます。
潮の満ち引きのパターン、季節の移りかわりといった地元の知識は、どのコミュニティにも豊かに存在しています。これらを使うことによって勉強が生き生きとしてきますし、教室の中では得られない経験をすることができます。
地元で採れる食用の植物、薬草、伝統的な治療法などに関する知識は多くの先住民族のコミュニティにとって生死を決める大事な事です。これらの地域には民族植物学という確立された分野があります。
教師たちが周りのコミュニティや環境の中にある知識を活用することができるように「文化的に責任のある科学プログラム」というハンドブックを作りました。このカリキュラムの教材や文化的な資料は教師たちが開発したものです。ウェブサイト上に、アラスカのどこからでも、日本からでも手に入れることができるようになっています。
これらのカリキュラムのリソースはこの10年間に蓄積されてきました。私たちはそれらを様々なテーマでまとめて文化に基づく枠組みを作りました。これらは今フェアバンクスの実験校で7年生から12年生のカリキュラムとして利用されています。エフィー・コックリーン・チャータースクールでは、1年を通じて四季の暦にわけ、学校が運営されています。全てのコースは3週間ずつの短期集中型プログラムに分割されているので、これ以外の時間は外のコミュニティや周りの環境の中で過ごすことができます。
これまで話してきた内容をまとめると、アラスカの河川敷や浜辺はとても有望な学習環境を提供しているということです。生徒たちが学問的、文化的教育の両方を達成できる環境です。地域や文化に根ざした教育を通して、生徒たちはグローバル化された世界においても自分自身の人生を形づくることができます。その一方で、彼らの生活を支えるコミュニティの環境知識を保持していくために必要なスキルを学ぶことができます。
教師たちは、文化を単なるカリキュラムとして教えるだけでなく、地元文化を世界に開かれた扉として教えるのです。
アラスカ先住民族知識ネットワークのウェッブサイトで、今日お話した情報を得ることができます。
www.ankn.uaf.edu