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高野孝子の地球日記・・・3つの「賞」がやってきた

ヤップ島でコインランドリーからの排水を地元の人たちと調べる
 「テレビ観ました!」
 2月8日夜の日テレ「笑ってコラえて!」の一つのコーナーで私が取り上げられたことで、職場やネット上で、海外在住を含む数多くの人たちから声をかけられたり、連絡をもらったりした。社員旅行の帰りの車の中でたまたま流れてびっくりした、というまったくの偶然によるものも多く、とても久しぶりに近況を聞けた人たちもいる。
 またまったく知らない人が、私のことを調べてネット上で書き込んでいたりもする。

 瞬間的なことかもしれないが、テレビの影響力を実感した。

 22年前の映像が再び取り上げられる機会となり、また足かけ3日間の自宅での取材に加え、ほぼ3週間にわたって昔の写真を探し、資料をスキャンし、落ち着いた振り返りではなかったが、たくさんの出来事や人々とのご縁をあらためて見直すことにつながった。一緒に北極を旅した、米国在住のウィル・スティーガーとも画面を通して話すことができた。
 番組では使われなかったが、小学1−2年生の時の作文やテストを母が取っておいてくれた。そこにいちいち赤ペンで優しい言葉を書き込んでくれていた青木先生にそのファイルを見せようと、番組からもらった「トロフィー」も一緒に、彼女が暮らすグループホームを訪れた。施設の職員さんたちが知るところとなって盛り上がり、なぜかホームに入所されている方々全員と記念写真を撮った。トロフィーが中心。人気番組なんだなあと実感(私はほとんどテレビを観ないので、知らなかった)。

 バラエティ番組なりに楽しい作りになっていて、私も笑いながら見ていたが、ディレクターによると柱は「冒険と教育」。ずっと学びの場に関わってきた私としてはありがたかった。

 1月から2月にかけて、周囲のみなさんに喜んでもらえることが重なった。
 一つは、2017年度春学期の早稲田大学ティーチングアワード。「優れた教育の実践」を評価するものだ。学部や教育センターごとに選ばれるが、私の授業が提供されるグローバルエデュケーションセンターでは、1200以上の授業がある。その中から選ばれた3人の一人であった。
 「世界が仕事場」という名前の、学生たちが自ら一歩踏み出すことを応援する授業で、時には私がその様子に感動させられる。学生たちも言ってくれるように、価値ある学びの場になったと思う。私の役目はコーディネートで、学生たち自身と外部からいらしてくださったゲストのみなさんと一緒に作った授業だった。留学センターの任期4年の最後に受賞できたこともうれしいことだった。

 そしてもう一つが、Japan Outdoor Leaders Award(ジャパンアウトドアリーダーズアワード)特別賞。「山や川や海、田畑や森林など多様なアウトドアフィールドで、未来のための人づくりを実践する」人たちが対象だ。「記録」や「長い年月の活動」を評価する賞はあるが、変化する社会の中で広い視野と環境理解を持ち、人のために行動できる「普通の市民」を育てる人たちに焦点をあてる賞はあまりないことから、注目していた。「記録」のようなわかりやすい指標がないため、とても難しい試みだと思う。

 しかし自然の中で、他の人たちと共に生活し活動しながら得られる知識や理解、育まれる力や絆、価値観の問い直しの意味は、とてつもなく大きく、これからの社会、そして人類の生き残りのために重要だ。健全な社会を築くための市民を育む大切なことが、今は意図的に場を設定しなくてはなかなか得られない。自然の中での学びの場を作っている人たちに光をあてることで、その大切さが認識され、さらに多くの場所と人たちを対象に実現されるようになってもらえればと思う。

 これを書いているのはグアム空港。これからヤップ島へ向かう。空港ではたまたまそういう時間帯か、韓国の人たちのグループがとても多い。また無数の日本人が、顔や二の腕を日焼けでまっかにして、楽しそうにビールを飲んでいる。小さな子ども連れもいる。

 ヤップ島では、ある地区をモデルとして「持続可能な社会づくり」に向けた取り組みに関わっている。手始めは汚水と廃棄物。一緒に取り組むヤップの人たちが頼もしい。

 ヤップ島とのつきあいは丸25年となった。エコプラスや早稲田大学のプログラムを通じてヤップに滞在した人たちは300人を超える。私たちに大切なことを教え続けてくれたヤップに少しでも貢献したい。同じような気持ちを持つ、早大生千場くんが1年休学して現地滞在中。この持続可能性プロジェクトを支えてくれている。
 学びの場は学び合いの場。4月からは早大留学センターを離れ、同じく早大の文化構想学部に所属することになっている。今度は日本語での授業が中心だ。新しい取り組みを考え始めている。仕事の量を少しコントロールする必要はあるけれど、心新たに、周りに目を向けていきたいと思う。

ピート・ヒギンズさんを囲み、野外・環境教育のあり方を考える

エジンバラ大学教授のピート・ヒギンズ氏を囲んで、野外・環境教育の意義と課題を考えるトークセッションが、2011年2月4日夕に東京・表参道で開かれました。
4日午後6時半から、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペースで開かれたセッションには、野外・環境教育関係者など36人が集まりました。

ヒギンズ氏は、野外・体験教育が人間の情緒的な成長をもたらし、健康にいい影響を及ぼすことを指摘した上で、これからの野外教育はグローバルな社会や経済の構造を考慮しながら取り組んでいく必要があることを強調。

また、いろいろな概念が関連しあい、世界は複雑であるということを教え、変化への対応や未来への希望、そして私たちの行動はすべて結果を伴うことを学ばなければならないと指摘しました。

さらに、英国の教育政策の変化や野外教育の実践状況を報告し、学校主体という考え方から、地域の素材と野外の学びに焦点を置いたものへと変化しているスコットランドの事例も紹介しました。

日本側からは、文部科学省で体験活動の推進に当たっている小野さんが、青少年の体験活動の現状について報告。自然体験活動への小学生の参加は年々減少しており、この10年ほどの間に海や川で泳いだことがある子どもの割合が30%から10%へと大きく減少しているなどという貴重なデータが示されました。
最後に、参加者との意見交換が行われ、教職課程におけるトレーニングの必要性、野外教育を行う財源の問題、親が自然体験をすることの重要性、野外教育リーダーの育成方法など、さまざまな問題提起があり、活発な議論が展開されました。

ヒギンズ氏からは、子どもの遊びの教育効果や、親の自然体験の大切さを統計的に示す調査研究が重要であり、こうした論拠を積み上げていくことが、今後の野外教育のあり方を考えていく上で大事であると強調されました。

この模様は、以下からビデオで見ていただけます。
http://bit.ly/gvmrb4
http://www.ustream.tv/channel/世界の環境と教育

シンポジウムでの配布資料は以下からダウンロードできます。いずれも個人的な利用に限り、無断転載無断複製を禁じます。

(ヒギンズ教授の発表資料)

クリックしてHiggins_Tokyo110204s.pdfにアクセス

(小野保さんの発表資料)

クリックしてOno_Tokyo110204s.pdfにアクセス