2015年1月11−12日に、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで、国際シンポジウム「ESDと場の教育」を開きました。
2015年1月11−12日に、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで、国際シンポジウム「ESDと場の教育」を開きました。野外・環境教育や町づくりなどに関心を持つ多様な世代が集まり、海外ゲストや国内各地からの特色ある報告を聞き、刺激的な意見交換が展開されました。
2日間のシンポジウムには100人を超す学生や市民、研究者や実践者らが参加しました。初日の11日午後は、海外ゲストの基調講演から始まりました。
エジンバラ大学のピート・ヒギンズ教授は、英国北部のスコットランドで取り組みが始まっている持続可能性のための学び(Learnoing for Sustainability, LfS)を中心に講演。ヒギンズさんが行う野外教育の一つカヌーでの川下りでは、単にカヌーをあやつるだけでなく、その場の状況を元に、気候変動や社会経済、地理学、歴史や文化、法や政治など多様なことを語る分野横断的な学びを目指している、などと説明しました。
その場所に着目した学びはとても重要で、しかも現代ではその場は私たちが暮らしているこの「地球」そのものではないかという問いを投げかけました。
ニュージーランドのイヒ・ヘケさんは、少数民族であるマオリ族の伝統に基づいた自然との関係を学びに組み込もうとする試みを説明してくれました。現代ではすべての面で西欧的な価値観に世界中が染められ、それぞれの民族の伝統を押しつぶした植民地のような状態にあると指摘。星座と水と大地のつながりを軸に置くマオリの考え方を再び取り戻す教育の手法を、ニュージーランド政府の支援を得て策定していると報告しました。
タイのジェス・サラトーンさんは、ASEAN各国が連携して展開している東南アジアでのESDへの取り組みを幅広く紹介。タイについては、「足るを知る経済(Sufficient Economy)」という考えが教育の柱のひとつにされていること、国王自らが王宮に風力発電の風車を立て、持続可能な社会づくりをアピールしていることなどを話しました。
後半のパネル討議では、立教大学の阿部治さんがグローバルとローカルの2つの経済のつなぎあわせが大切だ、などと提起し、会場の参加者も含めた議論が展開されました。
2日目には、岩手県葛巻町の鈴木重男町長が「山村の持つ力」を語りました。
人口6,854人の過疎の町が、地域にあるものに着目して、ミルクとワインと自然エネルギーの町に育った経過を美しい光景ともに説明しました。食料とエネルギーに関しては100%を超す自給率を達成、地元の高校の存立を図るために新たに導入する高校への山村留学では、希望者があれば「全国どこへでも職員が伺わせていただく」と発言。参加者を驚かせました。
その後、「暮らしと学び」「野外教育・自然体験と地域」「公教育と地域」の3つの分科会に分かれて議論。昼食をはさんでまとめの会をして終了しました。
参加したみなさんからは、「スコットランドの事例から、大切な教育を展開するためには政治を動かすという話を聞き、励まされた」「教育の根っこになにを置くのかが大事。マオリには24の要素を持つ宇宙観があり、それを学びに結びつけようとしている、というヘケさんの分科会での話は、圧巻」「山村にもともとある力を活かした葛巻町の試みは刺激を受けた」「立場が違う人たちの議論が多様性を生んだ」などのコメントをいただきました。
シンポジウムの様子については、3月下旬に報告書をまとめるほか、このウェブサイトでも順次報告します。またフェースブックのエコプラスページもご覧下さい。
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