「Sustainability」をど真ん中に掲げるスコットランドの試み

エコプラスが連続して展開してきている地域に根ざした学びに関して、エジンバラ大学のピート・ヒギンズ教授を囲むフォーラムが、2014年11月13日、東京の早稲田大学で開かれ、スコットランドでの持続可能な社会づくりへの包括的な取り組みが参加者に衝撃を与えました。

 

このフォーラムは、来年1月11−12日に予定している国際フォーラム「ESDと『場の教育』」の前段企画として実施されました。

教育についての理論と具体的な政策について分かりやすくヒギンズ教授が話してくれました。
教育についての理論と具体的な政策について分かりやすくヒギンズ教授が話してくれました。

ヒギンズさんは、当初は名古屋でのユネスコ会合に参加予定でしたが、ご家族の不幸で日程がずれ、岡山での教師教育の国際会議に参加する前に東京に立ち寄って、フォーラムに参加してもらいました。

ヒギンズさんは、スコットランド政府が進める持続可能性に向けた教育(Learning for Sustainability)の枠組み策定に深くかかわった経験をもとに、現在進められている多彩な取り組みについて説明をしてくれました。

まずスコットランドでは、この5年間に教室の外での学びを重視する流れが出てきていて、小学校などの幼少期にカリキュラム全体に野外での学びが取り入れられ、地域やそれぞれの場所とのつながりも大切にされるようになってきていることが報告されました。

その上で、スコットランド自治政府が、持続可能性(Sustainability)を大きな目標に掲げ、2020年までにすべてのエネルギーを風力や潮力などの再生可能なエネルギーに転換すると決定。いまのままの資源の消費スピードでは地球がいくつあっても足らないと、「一つの地球を目指す学校(One Planet Schools)」が教育のゴールに設定されました。

この中で、自治政府の教育・科学・国語大臣のもとに諮問委員会が設けられ、ヒギンズさんが座長として2012年に報告書を提出。13年には31の要望事項すべてが自治政府の承認を受け、今年からその具体的な導入が始まっています。

幼稚園から大学までのすべての教員は持続可能性のための教育の講習を受け、すべての教育施設も持続可能性を考慮して設置運営されることが義務づけられました。教育だけでなく、農林水産業でも健康福祉の世界でも、地域政策でも、旅行業でも、すべての社会活動での持続可能性が中心に据えられているのだそうです。

エジンバラ大学はESDに関する中核的な役割を担う地域拠点(Regional Center of Expertise)になっていて、ヒギンズさんはその責任者でもあります。しかしヒギンズさんは「ESDという特別な新しい科目を教えるのではなくて、すべての科目に持続可能性についてのその地域における文脈を入れ込むべきなのだ」と強調していました。

学生から研究者、実践者、大使館関係者など多彩な人々が集まりました。
学生から研究者、実践者、大使館関係者など多彩な人々が集まりました。

参加したミクロネシア連邦大使館の職員は、「私たちの国ではアルファベットを習う時に見たこともないワニ(Alligator)のA、くま(Bear)のBと習います。自分の食べる伝統的な野菜の栽培方法も知らない世代が広がっているのです」とコメントするなど、活発な議論が展開されました。