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ヤップ島プログラム 25年3月に実施

デジタル漬けの空間から離れ、素になって生きる

 エコプラスは、ヤップ島プログラムを、25年3月に実施します。3月8日から19日。現地での10日間の本格プログラムとしての実施です。

 舞台となるのは、ヤップ島東部のタミル地区にあるデチュムル村。ヤップ島では、サンゴの浅い海とすべての陸地が、個人や集落の所有となっていて、一般人の立ち入りが出来ません。観光客として入り込むことが極めて難しい場所です。いまでも石のお金(石貨)が使われる、太平洋諸島の中でももっとも伝統を色濃く残す地域でもあります。エコプラスは40年来のお付き合いの中で、このプログラムを実施しています。

 プログラムのテーマは「豊かさとは何か」です。自然のすぐそばで、自然と調和した暮らしをいまも維持している村にお邪魔して、人としての毎日がどのように組み立てられているのかを体感し、その上にある「幸せ」とは何かを考えるプログラムです。

 日本のようにふんだんに電気やガス、水道を使う暮らしとは違います。シャワーは水だけ。屋外にシャワー小屋を現地の人と作るところから始めます。ネットもつながりません。集落の女性たちが活動する建物のタイルの床に雑魚寝します。地域の方たちの動きを学びながら、自分たちで食事を作り、暮らしを組み立てていきます。日本からのスタッフも、手出しをせずに、安全面での見守りに徹します。

 自給自足経済を基盤としたシンプルな暮らしの中に、お邪魔させてもらい、シンプルな暮らしを通して、何が大切なのかを体験を通じて考える機会になります。

 ヤップ島プログラムは、1992以来30年以上実施され、400人以上の若者たちが関わってきました。それまでの価値観を揺るがされ、人生に大きなインパクトを受けた人たちが多いことが長年の追跡調査で示されています。

 豊かさや幸せを考えたい人、これからの社会のあり方を考える素材をたくさん見つけたい人におすすめです。

 2025年ヤップ島プログラム概要

【日程】2025年3月8日から19日
【対象】15~22歳程度の健康な男女。身体の障害、国籍は不問。新しいことに取り組み、自分の可能性にチャレンジする意欲を持つ人。
【プログラム費】15万円(滞在費含む)など。渡航費、成田空港までの旅費、保険料、事前準備、個人装備は除く。
【渡航費】ユナイテッド航空利用、9月末現在で147,300円。
  往路 3月8日1700成田発、グアム経由9日0110ヤップ着
  帰路 19日0235ヤップ発、グアム経由 0955成田着
【定員】10名程度(最少催行人員6名)
【説明会・個別説明】11月20日まで随時(オンラインも可)
【参加締切】11月30日(定員に達し次第締切)
【プログラムの流れ】
 顔見せ会(12月14日午後、もしくは15日午前)などで情報共有をし、準備を一緒にします。ヤップ島に関する下調べを行い、事前キャンプ(1月11-12日、日帰りの場合も)を経て現地へ。本番の後は、みんなで報告書を作成、報告会を実施します。応募の時点から準備、本番、そして報告会(6月ごろ)までがプログラムです。
【問い合わせ】info@ecoplus.jp

 関心ある人は、以下から仮申し込みを送ってください。説明会の連絡や本申込書、健康チェック票をお送りします。

ヤップ島プログラム2025仮申し込み

お名前のよみを記入して下さい
社会人の場合は所属、学生の場合は学校学年を
前の質問で「その他」を選ばれた方は、ここに具体的にお書き下さい


豊かさとはなんだろうか? 

ヤップ島プログラム2024活動報告会 

報告:エコプラスインターン 佐藤勇輔 今瀬菜月

 今年3月に実施したヤップ島プログラムの報告会を、6月30日に東京都千代田区の神田公園区民館で行いました。プログラム参加者5名は家族や友人らの前で、ヤップ島での経験や感じたことを思い思いに話しました。 

 まず、プログラム参加者はヤップ島の基礎知識をクイズ形式にて紹介しました。私たちに特に印象に残ったものは、ヤップ島で使われている言語についてです。ヤップ島ではヤップ語が使われていますが、日本語由来の言葉が多くあります。クイズの解説を通して、その背景にはかつて日本に統治されていたという歴史があるということを知りました。そのような背景を持つ中で、ヤップ島の方々はプログラム参加者を歓迎してくれたそうです。

 次にプログラム参加者がヤップ島で学んだことを紹介しました。

 1つ目はヤップ島での暮らしの知恵です。ヤップ島の住民はヤシを食料だけでなく、寝床やまな板としても利用していました。プログラム参加者は、このような暮らしの知恵に触れ、ひとつのものを複数の用途で利用していることに感銘を受け、ひとつものをひとつの用途で用いる日本での暮らしとの違いを感じていました。

 2つ目は地球環境です。ヤップ島では海面上昇・干ばつなど、地球温暖化の影響をダイレクトに受けていたとプログラム参加者は話していました。現地の方々は、ヤップ島に生息するニッパヤシを海面上昇から守るために、植林をするなどの対策を取っていたようです。また、干ばつで川が枯れ、新たに井戸を掘らなければならないという状況にも陥っていました。日本ではその影響を感じることはほとんどありませんが、プログラム参加者はこのプログラムを通して環境問題への意識が高まったようです。

 3つ目はグローバル化の影響を受けるヤップ島です。ヤップ島の近くで生息しているシャコガイなどは、周辺のグアムで高く売ることができ、過剰採取されています。現地では、その対策として禁漁区を設けて持続的な管理を図っています。また、外国から合成洗剤を輸入するようになりました。しかし、下水処理施設が整備されていないヤップ島ではそのまま土壌に流している現状です。その土壌は食料を育てているものであり、食料が化学物質に汚染されている可能性があります。プログラム参加者は、このようなグローバルによる影響を危惧していました。 

 最後に、会場にいる全員が4~5名のグループに分かれて「あなたにとって豊かさとは何か」をテーマに話し合いました。日本ではモノが溢れている豊かさ、ヤップでは自然と共存する豊かさを踏まえたうえで、豊かさについて考えるきっかけになりました。 

4年ぶりにヤップ島プログラムを実施

Yap-Japan Cultural Exchange Program was held after 4 years absence

 エコプラスのヤップ島プログラムが、2024年3月16日から24日までの日程で、4年ぶりに開催されました。

The Yap-Japan Cultural Exchange Program of ECOPLUS was held from March 16 to 24, 2024, for the first time in four years.

 1992年から始まったこのプログラムですが、新型コロナの影響で2000年に中止して以来、今回は4年ぶりにやっと実施することが出来ました。久しぶりのプログラムなので、参加人数も日程も抑え気味。参加予定者の1人が当日朝に体調を崩し、大学生4人、高校生1人の計5人で、現地滞在7日間のプログラムとなりました。

This program started in 1992, but was cancelled in 2000 due to the COVID-19, and this time we were finally able to conduct the program after 4 years. Since it had been a long time since this program was held, the number of participants and the schedule were kept low. One of the expected participants fell ill on the morning of our departure, so we ended up with a total of five participants (four university students and one high school student) who stayed on the island for seven days.

 滞在したのは、ヤップ島東部のタミル地区にあるアフ村。石畳の小道、ストーンパスがきれいに維持されるなど、伝統をしっかりと残した集落です。

We stayed in the village of Aff, located in the Tamil community of Yap Island. The village has well-preserved traditions, such as well-maintained stone paths.

 拠点となったのは村の集会所。新しいコンクリートづくりの平屋建て。裏手に調理小屋とシャワーハウスを作るところから、スタートしました。

Our base of operations was the village meeting hall. It is a one-story building made of new concrete. We began by building a cooking hut and shower house in the back.

 当初の3日間は、地元の暮らしの知恵と技を知る期間。寝るときに床に敷くマットをココヤシの大きな葉で編んで作りました。若いココヤシの実(ココナツ)を割って中のジュースを飲む方法も教わりました。料理に使うココナツミルクは、地面に落ちてしばらく経った茶色いココナツの果肉(コプラ)を削ってしぼり出します。その外側の繊維が詰まった部分は乾かすと貴重な燃料になります。無駄なく自然を使って食材や道具に変身させる伝統の知恵に、参加者はびっくりしていました。

The first three days were a time of learning about the wisdom and skills of the local way of life. We made mats for sleeping on the floor by weaving them from large coconut palm fronds. We also learned how to husk a young coconut and drink the juice inside. Coconut milk for cooking is made by grinding and squeezing the copra from old coconuts left on the ground for some time. The fibrous outer part of the coconut is dried and used as a fuel. The participants were amazed at the traditional wisdom of using nature without waste and transforming it into food and tools.

 中盤では、1泊2日のホームステイをさせてもらいました。1人づつが別々の家庭にお邪魔して、家族として過ごさせてもらう貴重な体験です。

 それぞれの家庭で、料理を一緒にしたり、子どもたちと遊んだりと、どっぷりと地元の暮らしに受け入れてもらいました。

 2日目の夕方に戻ってくる時には、花輪を頭に乗せ、手作りのバッグや、魚やタロイモなどであふれんばかりの夕食バスケットなど、大量のおみやげでいっぱい。ホームステイ先の家族たちと楽しそうに笑い合ってのご帰還でした。

In the middle part of the program, we were given the opportunity to stay with a host family for two days and one night, with each of participant visiting a different family and spending time with them as a family.

They cooked together and played with the children at each home, and were fully accepted into the local lifestyle.

When they returned in the evening of the second day, they had wreaths ont thier heads and were filled with souvenirs, including handmade bags and dinner baskets overflowing with fish, taro, and other delicacies. They returned home with their host families, laughing happily together.

 後半は、海での活動や、地元の共同作業への参加、ファエウェルパーティと息つく間もない忙しい時間となりました。

 サンゴで囲まれた海は、岸辺ではマングローブ林などからの養分が多く透明度は低いのですが、外洋近くまで行くとくっきりと見通せる輝くような世界。地元の自然保護組織、タミル自然保護基金(TRCT)が取り組んでいるオオシャコガイの再生事業の現場で、かごに入れて外敵から保護されているシャコガイの藻や泥をきれいにする作業にも加わりました。

The last days of our stay were busy with activities at sea, participation in local community work, and a farewell party, leaving no time to catch our breath.

The lagoon was not very clear at the shore due to nutrients from mangrove forests and other sources, but once you get closer to the reef, you can see clearly into the shining world. We also joined a local conservation organization, the Tamil Rescue Conservation Trust (TRCT), as they worked to clean algae and mud from the giant clams, which are caged and protected from predators.

 ヤップ島では23年12月からほとんど雨が降らず、1-3月の降雨量は平年の20分の1という干ばつに見舞われています。

 このためアフ村では、生活用水を確保するために、数十年間放置されていた井戸を復活させようと、村人たちが埋もれた井戸を掘り起こす作業をしていました。この村の共同作業にも参加させてもらい、腰ほどの深さの穴を掘り進めました。やや谷筋の粘っこい土はシャベルにくっついてなかなか掘り進めないのですが、地元の人たちと交代しながらの2時間ほどで、肩近くまでの深さに掘り下げることが出来ました。

The island of Yap has been experiencing a drought since December 2023, with almost no rainfall, and precipitation from January to March is 1/20th of a normal year.

For this reason, the villagers of Aff began digging an old well in an effort to revive a well that had been abandoned for decades in order to secure water for daily use. We were allowed to participate in this community work and dug a hole as deep as our waists. The sticky soil in the valley line stuck to the shovel and made digging difficult to dig, but after about two hours of taking turns with the locals, we were able to dig down to almost shoulder deep.

 地球規模の気候変動を肌で感じると同時に、それに対応するために住民が力をあわせて努力している姿を見ることが出来ました。

 ヤップ島とグアム島を結ぶ航空便は、週に2回。いずれも深夜から未明の運行です。このため日曜日の午前1時前後に到着して、次の日曜日の未明に島を離れる、まる1週間の滞在でした。これまでならあと数日は滞在するところですが、それでも参加者たちは、一つのものを多様に使う知恵と技に驚き、暮らしに学びがあふれていることにも気がついたようです。

We were able to see firsthand the effects of global climate change and how residents are working together to respond.

There are two flights per week between Yap and Guam. Both flights operate from midnight to dawn, so we arrived on Sunday morning around 1:00 a.m. and left the island before dawn the following Sunday, a full week’s stay. Although they would have been on the island for some more days, the participants were still amazed at the wisdom and skill of using one thing in many ways, and they also noticed the abundance of learning in the daily life of the island.

 同じタミル地区の別の村からは、いつでも来てくれて大丈夫との連絡をもらっています。水不足ですでに時間給水が始まっていること、さらに夏の暑さも以前に比べて激しくなっていることなどから、その状況を見ながら、次回の日程を検討しています。

We have been informed by another village in the same Tamil community that they can host our group next time. We are looking at the situation and considering the next schedule as the water supply has already started on time due to the water shortage, and also the summer heat is more intense than before.

ヤップ島の中堅リーダー3人が日本で研修

Three leaders from Yap joined ecotour training in Japan

 エコプラスがJICAの支援を受けて展開している、ミクロネシア連邦ヤップ島タミル地区でのエコツアープロジェクトで、現地の3人の指導者が4月3日から9日までの日程で日本での研修活動を行いました。

 来日したのは、ヤップ島タミル地区で自然保護活動に取り組んでいるタミル自然保護基金(TRCT)の役員アロイシス・リブモウさん(45)、ケン・エゼキエールさん(39)、ジャニス・タマンギデッドさん(29)の3人。

 Three local leaders of an eco-tourism project in the Tamil region of Yap Island, Federated States of Micronesia, implemented by ECOPLUS with support from JICA, visited Japan for training activities from April 3 to 9.

 The three who came to Japan were Lubumow (45), Ken(39), and Janice (29), officers of the Tamil Resources Conservation Trust (TRCT), which is engaged in conservation activities in the Tamil municiparity of Yap Island.

 ビザ発給のためにグアムで3日滞在したあと、3日夕に成田空港に到着。翌4日から三宅島に渡って、現地でエコツアー活動を長く展開してきた海野義明さん、佳子さんご家族の元に滞在させていただきました。三宅島は2000年の大噴火で全島民が4年余に渡って避難するなど、噴火との戦いが島の暮らしの根っこに存在しています。一行は、火山噴出物で真っ黒になっている地面にびっくり。海岸も陸地もいたるところが噴火とのつながりを見せています。

 After spending 3 days in Guam to obtain visas, they arrived at Narita Airport on the evening of the 3rd. The next day, the 4th, they flew to Miyakejima to stay with Yoshiaki and Yoshiko Unno’s family, who have been involved in ecotourism activities there for a long time. Miyakejima has been battling volcanic eruptions for years. The island’s way of life is deeply rooted in the struggle against eruptions. The group was surprised to see the black ground by volcanic ejecta. Everywhere on the coast and on the land there is a connection to the eruption.

 その噴火の影響で、栄養分が少ない環境で、空気中の窒素を固定化する樹木オオヤシャブシが育ち、次にススキが生えて、植生が回復していく様子を説明してもらいました。

 さらに、そのオオヤシャブシを数メートル間隔で植えることで土地に養分を与え、そこに特産の野菜アシタバを育てる知恵を見せてもらいました。

 The group was told how the growth of the Oyashabushi tree, which fixes nitrogen in the air into the soil, in a nutrient-poor environment, followed by the growth of silver grass, and then the recovery of vegetation.

 The participants were also shown the wisdom of planting the Oyashabushi trees at intervals of several meters to provide nutrients to the soil and to grow ashitaba, a local vegetable.

 海岸部分では、断崖絶壁に黒潮が打ち付ける光景に見入っていました。ヤップ島では、島全体がサンゴ礁で囲まれ、切り立った断崖を見ることは出来ません。

 サンゴ礁に囲まれた波のない礁湖(ラグーン)と呼ばれる静かな海と、砕けたサンゴが作る白い砂浜が当たり前のヤップとは、まったく違った光景に、自分たちの自然環境の価値にも気付いていたようでした。

 On the coastal part of the island, we watched the Kuroshio Current lapping against the cliffs. On Yap Island, the entire island is surrounded by coral reefs, and you cannot see the sheer cliffs.

 They seemed to have realized the value of their natural environment in the very different scene from Yap, where the calm sea, called a lagoon, surrounded by coral reefs without waves, and white sandy beaches made of crushed coral are the norm.

 後半は、雪が残る新潟県南魚沼市に移動。日本人の食を支えるおコメが、どのように造られてきたかを、エコプラスが行っている無農薬田んぼでの体験活動を通してどのように伝えているかを学んでもらいました。3人は、実際に雪が解けたばかりの田んぼに入り、木灰をまき、三本ぐわで古株を起こし、シャベルとくわであぜを作り直す作業を体験しました。

 田んぼを巡る水がどのよう配置され、その流れがどのよう管理維持されているかも、説明を聞きました。

 ヤップ島では、日本のサトイモが巨大に育ったようなタロイモが主食となっていて、田んぼのような湿地がタロイモ畑として管理されています。

 They seemed to have realized the value of their natural environment in the very different scene from Yap, where the calm sea, called a lagoon, surrounded by coral reefs without waves, and white sandy beaches made of crushed coral are the norm.

 In the second half of the tour, we moved to Minamiuonuma City in Niigata Prefecture, where snow still lingers. The three of them actually entered the rice fields where the snow had just melted and experienced the process of spreading wood ash, raising old stubble with three stakes, and rebuilding the edge of the rice field with shovels and hoes. 

 They also heard explanations of how the water around the rice fields is arranged and how the flow of water is managed and maintained.

 On Yap Island, the staple food is taro and wetlands like rice paddies are managed as taro fields.

 異なっているようで、似ていることをしているんだな、とルブモウさんはふり返りで語っていました。

 エコツアーはいろいろな解釈がされて世界中でさまざまに展開されています。

 その場の自然と伝統的な暮らしの関係を理解することで、次の社会づくりへのヒントを探す、そんなことがヤップ島でのエコツアーの軸になっていきそうな研修でした。

 They seem different, but they do similar things, Lubumow said in his reflections.

 Ecotourism is interpreted and developed in many different ways around the world.

 It seemed that understanding the relationship between nature and traditional lifestyles in a given place and looking for clues for the next sustainable future would be the axis of ecotourism in Yap Island.

ヤップ島プログラム24年3月再開

 エコプラスが1992年から展開してきたヤップ島プログラム。2019年夏の実施を最後に、新型コロナの感染拡大で中断してきました。24年3月、再開第1回を実施することにしました。

 期間は、3月16日から24日。現地での7日間のプログラムです。

 舞台となるのは、ヤップ島東部のタミル地区にあるアフ村。

 テーマはこれまで通りの「豊かさとは何か」です。自然のすぐそばで、自然と調和した暮らしをいまも維持している村にお邪魔して、人としての毎日がどのように組み立てられているのかを体感し、その上にある「幸せ」とは何かを考えるプログラムです。

 現地では、地域の方たちの動きを学びながら、自分たちで食事を作り、暮らしを組み立てていきます。スタッフは手出しをせずに、安全面での見守りに徹します。

 今回は日程の確定も直前だったために、事前キャンプなどができないかもしれません。趣旨を十分に理解いただける方に参加いただければと思います。

 2024年ヤップ島プログラム再開第1回概要

【日程】2024年3月16日から24日
【対象】15~22歳程度の健康な男女。身体の障害、国籍は不問。新しいことに取り組み、自分の可能性にチャレンジする意欲を持つ人。
【プログラム費】10万円(滞在費含む)など。渡航費、空港までの旅費、保険料、事前準備、個人装備を除く。
【渡航費】ユナイテッド航空利用、19万円程度。
  往路 成田発グアム行865便、グアムからは185便
  帰路 ヤップ発186便、グアムからは196便
【最少催行人員】6名
【プログラムの流れ】
 事前に顔見せ会などで情報共有をし、準備を一緒にします。ヤップ島に関する下調べを行い、本番の後は、みんなで報告書を作成、報告会を実施します。応募の時点から準備、本番、そして報告会(6月ごろ)までがプログラムです。
【問い合わせ】info@ecoplus.jp

 ご希望の方は、以下に記入をお願いします。エコプラスから詳細申込書と健康チェック票をお送りします。

ヤップ島プログラム2024申し込み


シリーズ ヤップでまかれた種たち

第4回:今井(伊藤)櫻子さん

他者と生きる
異文化で人と誠実に向き合いながら得た学び

 地球体験チャレンジ「ヤップ島プログラム」30周年を迎えるにあたってスタートした連載企画「ヤップでまかれた種たち」。ヤップを経験した仲間たちのストーリーから、ヤップの意味や価値、そして今後の社会づくりを考えます。

 第4回目のストーリーテラーは、2014年の参加者の今井櫻子さん。民族や宗教、ジェンダーなどアイデンティティの異なる他者の共生を探求テーマに、現在は福祉の世界で障害のある方の就労支援事業を行う会社で活躍されています。

 台湾で育った今井さん。今回のインタビューでは自身のルーツを振り返りながら、ヤップでの異文化体験も踏まえ、これまでの学びや今向き合っていることについて語っていただきました。

インタビューにお答えいただく今井櫻子さん

自然の中で見えてくる「異なる他者と生きていく」ということ

 「ヤップでの生活は本当に大変でした。朝、魚を取りに行って、捌いて、料理のために火を起こして、やっと火が通って、食べようと思ったら、もうお昼ご飯の時間になっていました。お昼はタロイモを取りに行って、また夜ご飯だね・・・。一日ご飯をつくっただけで終わった日もありました(笑)。」

 ヤップでの第一印象を振り返りながら、明るく語る今井さん。大学入学直後に、高野さんが主催する「世界が仕事場」の授業を受講したことをきっかけに、2014年の夏にヤップ島プログラムに参加することになりました。

 「授業でヤップ島についての紹介動画が流されました。そこには自分が全く知らない世界があって。貨幣経済があまり浸透していないコミュニティのあり方や、そこで暮らす人達はそれをどう思っているのかといったことに興味が湧きました。『実際に会って話してみたい』とビビッと来ましたね。『大切なことは自然が全部教えてくれるよ』という高野さんの言葉も心に残っています」

 多様な人々と出会いたい、そうした好奇心を胸にヤップに向かった今井さん。野外で暮らした経験は多くありませんでした。力強く、厳しい自然と真正面から向かい合う生活の中で、「私には生きていく力が全然ない」ということを自覚するところからのスタートでした。

 そして、生活する中では、自然だけではなく、異なる他者と生きる難しさや葛藤にも直面することになります。

 「参加者一人ひとりにとって、ヤップで何を得たいのか、何を大事にしたいのかは違いますよね。そんな中で、時間の使い方をどうするか私と他の参加者との間で、意見がぶつかり合う場面がありました。私は地域の方に招待されていた小学校で開催されるイベントに参加して、ヤップ島で暮らす人たちの生き様を近くで見たかったのですが、まず自分たちの生活の場を整えるために家に残って作業したいという意見もありました。最終的には号泣しながら、みんなで話し合ったのはいい思い出です。意見がまとまらないときに喧嘩したり、論破されたと感じたり、お互いの気持ちを120%出し合って、言葉通り、一人では生きられない環境の中でぶつかり合って、それでも支え合って生きていくという濃い体験をしました」

 他者と過度に干渉しなくても生きていける日本での生活と異なり、ヤップ島プログラムでは、互いの価値観をぶつけ合い、すり合わせながら、協力していかないとうまく生活していくことができません。そうした環境の中でもがきながらも、多様な人たちといかに共生するのかという問いを手放さずに考え続ける今井さん。

 その背景には、今井さん自身の小さい頃からの経験が影響しているのかもしれません。ここで少し今井さんのこれまでを振り返ってみたいと思います。

雪の中で、暮らし、遊んだ、雪ざんまいキャンプ2023

Enjoyed and learned simple life on the snow

 エコプラス恒例の「雪ざんまいキャンプ」を、2023年3月21日から24日まで、新潟県南魚沼市の清水地区で、実施しました。日程の関係で週末を組み込むことが出来なかったために、参加できたのは大学生4人でしたが、地元のみなさんからも雪の中での暮らしの技や知恵などを教わり、自分たちで、雪の中で暮らしを組み立てる4日間となりました。

Ecoplus conducted “the camp in the deep snow” from Mar 21 to 24, 2023, in Shimizu village, in Niigata, Japan. Unfortunately we could not set the period including weekend, we had only four university students but they acquired a lot of knowledges and skills from the local people and enjoyed self build simple life on the snow for four days.

 この冬は雪が少なかったものの、清水地区にはこの時期でも1○以上の雪が残っていました。キャンプの前半は、好天で、陽射しの下では半袖になる人もいるほど。天気が悪化した後半も気温が高いために雪ではなく雨になりました。

Although we had less snow than normal years In this winter, we had more than 1 meter of snow in Shimizu area. The weather conditions was dry and warm in early days, but later part we had not snow but rain.

 キャンプでは、眠るのは雪の上のテント。料理をするのも、雪の上。雪の上で火を起こし雪を溶かして水を利用しました。そして、トイレも雪の上。この暮らしの場を作るのに、前半の2日のかなりの時間を使いました。この中で、スコップでどのように雪を切り出して座る場所を作るなどの技を習得しました。

In this camp, we slept in tents on the snow. We cooked on the snow making fire on the snow. We kept melting snow in a big pot on fire for drinking and cooking water. Students learnt how to use shovels for cutting snow to make objects such as tables and sitting place.

 今回は22日の夜が雲一つない快晴で、月もなかったために、空いっぱいに星が満ちる様子も楽しむことが出来ました。若者たちは雪の上に寝転がって星空を眺め、大きな流れ星も見たそうです。

In the night of Mar 22, we had very clear sky without any clouds and the moon. So stars were sharp and bright filling all direction. Students laid on the snow for stargazing and they were excited to observe bright meteors.

 都会での暮らしでは、スイッチ一つでお湯が出来、あかりが灯せ、トイレも流れていくのが当たり前。そんな「便利」とは違って、一つひとつの作業を重ねて、薪を割り、火を起こし、水を作り、そして創意工夫で遊ぶことを重ねているうちに、学生たちの表情もどんどんとのびやかになっていくのを感じました。

In these convenient daily life environments, only with one action, we can get hot water, bright lights, and flash toilet instantly. Apart from such “convenient life,” we need to prepare fire wood, make fire, melt snow and play with its own creative ideas. Through such actions one by one, the faces of students changed clearly.

 「不便」なはずの環境で暮らす地元の方たちが、山や森や生きものや歴史について生き生きと語る姿を見て「自分たちが思いこんでいるレールに乗って進むだけが人生じゃなさそうだと思った」などと、深い感想をみんなは残してくれました。

Local people kindly joined the program and vividly talked about the history, the nature, mountains, animals and life of the area. One of students commented that the life would be more free rather than just following a fixed path thought be “successful.“

雪の中で、暮らす、遊ぶ ー 雪ざんまいキャンプ2023

 雪をとことん利用して暮らし、遊ぶキャンプです。生活の場所やトイレも自分たちで作り、料理も片付けも雪を利用します。自分の「当たり前」を疑い、新しいことに挑戦し、工夫し、学び合います。人と自然の関わりについて一歩気づきを深めます。自分を見つめる機会にもなります。

 地元の暮らしにも思いを馳せ、自然と関わって文化が生まれることを実感しましょう。

 例年、ドキドキや不安で始まり、発見や喜びに溢れる密度の濃い時間となる雪ざんまいキャンプ。去年に続いて、今年も高校生から若い社会人を対象とします。10人程度の少人数での開催です。

 コロナウィルス感染対策を取って実施します。

  • 日程:2023年3月21日事前準備(屋内寝袋泊)、22日(水)から24日(金)の2泊3日、雪上キャンプ
  • 場所:南魚沼市清水集落(21日上越線塩沢駅10:50集合を検討中)
  • 目的:自分の「当たり前」にチャレンジする。雪を題材に人と自然の関係について考える。持続可能な社会をデザインする素材を得る。心と身体を解放しクリエイティブに暮らす。
  • 内容:雪を利用した生活の場づくり。薪を使った野外調理。雪山散歩と豪快尻滑り。雪像やアイスクリーム作りなどの雪遊びを自由に。
  • 対象:高校生から若い社会人10名程度。
  • 条件:実施の1週間前(3月14日)から、感染対策を特に意識した生活。体温測定や体調チェック、事前のPCR検査が可能な場合は実施など、安心してキャンプができるよう、協力をお願いします。スタッフ側も同様の対応です。
  • 参加費用:23,000円(含まれないもの:自宅からの往復交通費、寝袋や長靴など個人のレンタル代、21日の昼夕食・風呂、24日の夕食)

 申し込みと問い合わせは、以下のフォームからお願いします。参加決定の方にはさらに、体調やアレルギーなどに関する細かな情報を出していただきます。

性別(必須)

交通手段(必須)

高野孝子の地球日記

3年ぶりに国外へ

「牛のミルクが欲しい人はいる?」

 2022年7月半ば、学会参加のため英国を訪れた時のことだ。

 英語での耳慣れない表現に違和感を覚えた。なぜただ「ミルク」と言わずに、わざわざ「牛の」とつけたのだろう。

 学会が開かれたのは、英国ロマン主義やピーターラビットなどでも知られる人気観光地の湖水地方。私はかつて、そこから車で2時間くらいのエジンバラ市に、4年半暮らしていたことがある。久しぶりとはいえ、英国には友人も多く、よく知った場所だ。

 国外に出るのは3年ぶりだった。

 新型コロナウィルスは未だ世界中で拡大を続けていて、特に英国は一時、長期のロックダウンをするほど感染が広がっていた。それでもだいぶ前からマスクなしで通常の生活や活動をしている。そこでの学会には、ヨーロッパを中心として世界中から100人ほどの人たちが集まることになっていた。ウィルスに身を晒すことになるかもしれない。行くか行かないか、悩んだ上での渡英だった。

 今回の訪問はいくつもの点から衝撃的だった。

 まず、よく知っているはずの英国の暮らしが、大きく変わっていた。

 例えば冒頭の「牛の乳」発言。友人たちの多くは、オーツミルク(麦ベース)やソイミルク(豆乳)、アーモンドミルクにシフトしていた。そうしたチョイスがあるため、牛乳は「牛の」ミルクという表現になる。そもそも、倫理的な消費やオーガニック産品の支持が高い社会だが、牛を含む家畜が気候危機を加速させることから、より環境に配慮した選択でもある。

 また電車をネットで予約しようとすると「この電車の運行は変更が多いので必ず確認すること」などという注意書きがある。全英で電車の運行が、頻発する大規模ストライキによってめちゃめちゃだった。航空便もストライキの影響を受けていた。そのため同じ学会に、数時間から1−2日遅れて到着した参加者が複数いた。

 学会後、そこからエジンバラに向かう私の電車も、前日に「運行キャンセルになりました」と一文のメッセージがスッとスマホに届いた。次に乗れる電車を求めて駅に向かうと、それ以前の電車に乗れなかった人たちでごった返していた。帰国するために空港に向かう人たちも多かったが、間に合うか心配している様子も見えた。

 ようやく到着した電車に荷物共々押し込まれるようにして入ると、ものすごい混みようで、数時間乗るにも関わらず子どももお年寄りも、大勢が立っていた。まるでどこかに避難する電車のようだった。

 これらは新型コロナウィルス感染と、英国がEUから離脱したことの影響らしい。ウィルス感染拡大のため、2020年からしばらくは外出禁止も含め経済活動が圧迫され、多くの労働者が職を離れた。かつ感染により仕事を休まざるを得ない人たちが常にいる状況となった。加えて脱EUにより、これまで特に東ヨーロッパから来ていた労働者がいなくなった。ひどい人出不足の中、これ以上堪えられないとしてのストライキだった。

 関連して、スコットランドのスーパーには、これまで豊富にあったヨーロッパ諸国からの野菜やチーズなどが見当たらず、スコットランド産のものが増えた。棚は全体的に空いていて、値段もかつてより上がっていた。

 加えてロシアによるウクライナ侵攻の影響のため、10月には光熱費が80%上がるとされる。家計によっては収入の2/3が家賃と光熱費に消え、このままでは冬に、関連死や何百万世帯がとんでもないことになると予測されている。

 一方、私が滞在中、英国は「熱波」に覆われ、ロンドンでは観測史上初めて40度を超えた。気候危機はその深刻さを増し、災害級の異常気象は増えていく。買い物の支払いは一気にキャッシュレスが進み、かつての紙による「チェック」やキャッシュはほぼ姿を消した。私もあわててapple payの手続きをした。

 英国入国手続きや空港の様子も変化し、「コロナ禍の2年半が過ぎたら、世界が変わっていた」。そんな思いになった。

 そうした変化もあり、久しぶりの国外滞在は想像以上に刺激的だった。

 学会に集まった多数の友人らと直接触れ、笑い、パブでビールを飲み、語り合った。マスクなしで。直接会って交わることの重み、雑談の意義、心が喜ぶことの大切さを改めて思った。同じ場で複数の国々の情報を一気に知ることができ、世界の状況をこれまでよりも把握できた気がした。

 わずか2週間の旅だったが、あまりに没頭していたためか、成田に到着してから何をどうするにも戸惑う自分がいた。しばらく常にスマホ一つで決済していたため、電車の切符は日本ではどう買うんだっけ、と思い出さなくてはならないほどだった。日本の光景を「旅人の目」で見ている自分がいた。

 自分の思い込みに気づいたり、多様さを受け入れたりすることは、身を置く環境によっては鈍くなることを実感した。異なる文化、多様な価値観が混ざり合う世界に、常に触れるようにしていたいと改めて思った。

(8月31日 髙野孝子)

 

エジンバラの古い町並み

自然をたっぷり味わったデイキャンプ

Enjoyed the summer nature in day-camps

 エコプラスは、この8月、新潟県南魚沼市で4つのデイキャンププログラムを実施しました。新型コロナの第7波の中で、せめて日帰りで自然を楽しんでもらおうと企画し、計39人の小中学生が、森の中や池、川で、たっぷり遊びました。

In this August, ECOPLUS organized four day-camp programs in Minamiuonuma, Niigata. Those were planned to provide opportunities to touch and feel the nature in this seventh wave of COVID-19. In total 39 elementary and junior high students experienced fun in the beech forest, in a pond and in a fresh stream.

 キャンプは、前半2回が同市五日町地区の天池キャンプ場、後半2回は清水地区の巻機山麓キャンプ場を舞台に実施しました。

 Earlier two camps were held at Amaike camping site in Itsukamachi area and later two were held at Makihata Ssnroku camping site in Shimuzu area.

 8月11、12日の天池キャンプ場では、前半に自然観察、後半がカヌー体験。キャンプ場裏手にある、ブナ林などを、地元の専門家深澤和基さんの案内で歩きました。深澤さんに用意していただいた地図付きの資料を見ながら歩くと、ブナだけでなく、いい香りがするクロモジや触るとかぶれるウルシなど、いろいろな植物を観察することが出来ました。地面を走り回るカナヘビを捕まえて観察することも出来ました。

On August 11 and 12, at Amaike site, we had nature observation in the morning and canoe class in the afternoon. The nature specialist, Mr. FUKAZAWA Kazuki kindly prepared observation note for each of participants. With the note, we walked through the forest with beech trees. Kids learned different types of plants, like, one has good smell called “Kuromoji,” or a poisonous one called “Urushi.” Tiny lizards were caught by participants and could be observed closely.

 8月18、19日の清水では、自然観察と沢遊びをしました。標高700mの巻機山麓は、周辺に人家もなく、自然そのもの。キャンプ場の広場には無数のアキアカネが舞い、バッタやチョウがいて、子どもたちは網を持って走り回りました。自分たちで削った棒にソーセージを刺して火にあぶり、ホットドックにしてお昼ご飯。午後は、沢に入って、山からの冷たい水の中で、楽しみました。最後には、村の人たちが昔から遊んだ、弓づくり。木の枝を曲げて弓にし、取ってきたススキの茎を矢にして飛ばしてみました。

On August 18 and 19, students experienced nature observation and stream walk. At the elevation of 700 meters without any houses around, the nature was so rich even in the camping area. Uncountable number of red dragonflies, many grasshoppers and butterflies filled the area. Children were running around with nets. For lunch, they sharpened sticks to grill sausages on fire. In the afternoon, they spent time in the stream with snow melted water from the Mt. Makihata. At the end, they played with traditional bow and arrows. The bow was made out of small branches and arrows were stems of pampas grass.

 いずれのプログラムでも、子どもたちは、もっと遊びたかった、虫取りを続けたかったと、名残惜しそうに帰って行きました。南魚沼市在住の子どもたちばかりでしたが、「住んでいるすぐそばに、こんな場所があるなんて知らなかった」と話し、自然に触れ合う機会を存分に楽しんでもらったようです。

In all four programs, children were heading back to home, saying like “Wanted to keep catching insects more.” Although all of those participants are from Minamiuonuma city, they did not have much of experiences playing in the nature. The programs looked like good opportunity to feel and touch to the natural environment.