シリーズ ヤップでまかれた種たち

自分が動けば、社会は変わるかもしれない

 「障害は社会の側にあって、社会にある障害を無くしていきたいという今の会社のビジョンに共感しました。当事者の方やご家族だけではなく、自分には関係ないと思っている方に対してこそ、福祉や障害について考えてもらうきっかけをどう作れるのか。個と環境にアプローチできるプレイヤーになりたいと奮闘した3年間でした」

 そうした想いのもと、利用者の方に対しては、自信や気付きをもってもらえるような面談を意識し、企業に対しては、障害者雇用促進の啓蒙や採用サポートを行ってきました。医療機関や行政、ご家族、地域とも連携しながら、利用者の方が頼れる先を増やそうとやりがいを感じていました。

 「この3年間は、現場で何が起きているのか、誰がどんなことに困っているのか、ちょっと重めのテーマも含めて様々なケースに関わってきました。そんな中でも、自分が動けば動くほど社会は少しだけ変わっていく、対人支援を通してそうした手応えを実感できた時間でした」

 目の前にいる一人を支援することから社会にインパクトを生み出していくことに意義を見出す日々。そんな今井さんは、この春から人事部に異動しました。

 「今は自分だけでなく福祉職で働く人たちがどうすればもっと働きやすくなるかを考えています。障害のあるなしに関わらず、例えば、疲れやすい方、子育てのために時短で働きたい方、気圧の影響で体調が悪い方等。どんな人でもそれぞれの特徴、特性があって、どうしたら働きやすくなるのかを障害者雇用だけでなく、会社や社会全体で考えていけたらいいなと思います」

 そう語る今井さんの探求の旅路はまだ始まったばかりなのかもしれません。

 自身のルーツを起点に、「異なる他者がどうしたら共生できるのか」という問いにまっすぐ向き合い、その時置かれた環境・リアリティに働きかけ、自分なりの解釈や意味を紡ぎながら、自分のできることやインパクトを少しずつ広げていく今井さん。その原点には、「異文化においても人と誠実に向き合う」というヤップで学んだ軸があります。

 台湾、日本、ヤップ、トロント、様々な人とのつながりと異文化の経験を糧に前に進む今井さんの存在とエネルギーに聞き手も勇気づけられるインタビューでした。

(聞き手:川口大輔=エコプラス理事、1999年ヤップ島プログラム参加)