トロントから学ぶ「分かり合えないこと」
ヤップでの学び、そして自身のルーツを軸に、帰国後も民族や宗教、ジェンダー、アイデンティティといったテーマをもちながら活動を続けた今井さん。そんな中、大学4年生のときにカナダのトロントに留学することを決意します。
「留学を決めた2018年は、トランプさんがアメリカ大統領になり、イギリスがEUから離脱することになり、世界全体が内向的になっていた時期でした。そのような最中でカナダは引き続き移民を歓迎する施策を行っており、他国とは異なるスタンスに惹かれました。多文化主義を掲げている国だけれど、国民一人ひとりのマインドまで浸透しているのだろうか?自分のヒントが何か見つかるのではないかと思い、絶対トロントに行きたいと心に決めました」
現地の声に自分で納得するまで触れないと先に進むことはできない、そう考えた今井さんは就職活動を手放し、トロントに向かいます。そこでも大きな発見と今井さんの中での心情の変化がありました。「留学して分かったのは、カナダも決してパラダイスではないということ。アジア人というだけでスーパーで泥棒と差別されたり、レインボーパレードのシールを顔に貼っていると、地下鉄で怒鳴られたり。どうしても分かり合えないことはあると気づけたことがトロントでの大きな収穫でした。ただ、分かり合えなくても、一緒に生きることはできる。ただ隣まで歩み寄るのではなく、適切な距離感と関係性を模索していく方法もあると、逞しくトロントで暮らす友人に教えてもらいました」
多様な人と生きていく難しさに向き合いながらも、そこに異なる現実を知る機会を自ら創り出していくことの意義を実感した今井さん。日本に帰ってからも、自分にできることは何かを模索し続けていきます。
そして卒業後の進路として、福祉の世界を選び、障害のある方の就労を支援する仕事に取り組むことになりました。