エコプラスのヤップ島プログラムが、ミクロネシア連邦ヤップ島で、2025年3月9日から18日まで現地10日間滞在の日程で行われました。1992年から始まりほぼ毎年継続してきたプログラムは、新型コロナの影響で20年から23年まで中断、24年春には規模を縮小して再開し、今回は5年ぶりの本格開催となりました。
参加したのは、高校生から大学生までの男4人女3人、それに前年の参加者1人がボランティアスタッフとして加わりました。
滞在したのは、ヤップ島タミル地区のデチュムル村。2018年に続いて2回目の受け入れとなりました。拠点とさせてもらったのは、女性たちの集会所。台風時の避難場所ともなる、コンクリート製の平屋建ての建物です。
到着した9日には、村人たちの指導で、寝るときに使うマットを、大きなヤシの葉っぱから編んで行きました。地面に柱を立て、細い竹を横に渡し、そこに枯れたヤシの葉っぱを差し込んで、トイレとシャワー室を作りました。煮炊きをする料理小屋は村人たちがすでに作成ずみ。集会所を寝床に、生活空間は外にある小屋を使う、現地の住環境と似た暮らしの場が出来ました。
主食となるのは、タロイモ。直径10数センチ、長さ30センチにもなるサトイモの仲間です。背丈を越す巨大な葉っぱの下にあるイモを掘り出す方法も教えてもらいました。小さなイモを植えてから3年経つと収穫期。まず葉っぱを刃物で切断、先端を刃物状に削った直径5センチほどの木の先を根本に突き刺して根っこを切ると、引っこ抜く事が出来ます。取り除いた葉っぱで包んで、ヤシの葉っぱで編んだカゴに入れて持ち帰ります。
掘り出した場所には、親芋の回りに出てきた子芋を新たに植え付ける。「こうすると1つ掘り出して、3つとか4つの次のイモの準備が出来るでしょ。だから次の食料がちゃんと用意できるの」と、高齢の女性が教えてくれます。
イモの調理も、乾かしたココヤシの殻を最初の燃料とし、次に太い薪を使って、1時間半、バナナの葉っぱで中ぶたをして熱を逃がさないようにして煮続けます。全ての作業に、細々とした準備が必要で、丁寧に作業を重ねて食が準備されていきます。
若いココヤシのジュースを飲むにも、高さ数メートルから10メートルもの木に登り、ラグビーボールほどに育った実を落とし、暮らしの場に運んで、分厚い殻を大なたで切り落として飲みます。長老や客人に出すとき、自分ですぐにのみたい時など、状況に応じてその切り方も変わります。細かな技を、参加者たちは徐々に理解し、会得していきました。
ハイライトは、2泊3日のホームステイ。それぞれが家庭に家族として招かれ、その暮らしの中に入れてもらいました。戻ってきた参加者は、人々の輪に溶け込み、笑顔があふれていました。

観光として現地を消費するのではなく、その場の暮らしに飛び込ませてもらい、同じ目線で、いまを感じ未来を考える体験を、村人たちの細かな気配りの中で重ねさせてもらいました。現地での暮らしの間、スマホは一切触る事なく、SNSも無縁の時間を過ごしました。
帰国時のふり返りでは、「日本での暮らしの中でいらないものがあるのではないかと思った。すき間の時間にインスタを見るよりも何かを作る事の方が面白いのではないかと思った」「地元の生活に入れてもらう事で、その文化とか伝統とかが分かった。生活の中に文化があった」「手間ひまをかけた暮らしだからこそ、食事にも何にでも感謝があふれているように感じた」などと話していました。
豊かさとは何かをテーマにして続けてきたヤップ島プログラム。「便利」を追い、デジタル漬けの日々から離れ、視線をあわせて人々と語り合う濃密で丁寧な暮らし。わずか数世代前までは日本でもそうであった、人々と自然が密接な暮らしを体験する中で、新しい価値観への入り口が見えてきたようです。
参加者たちは、無数の体験をかみしめながら、ふり返りを文字化し、報告書を作り上げ、7月5日に報告会を開く予定です。お楽しみに。