~見たことのない景色を見たい~
プロフィール 福島県南会津郡南会津町(旧伊南村)で民宿を営みながら、地元の小学校で非常勤講師としても働かれています。エコプラスとのかかわりはヤップ島プラグラムにスタッフとして参加、また約6年間エコプラスの事務局スタッフをされていました。
「どのような学生時代を送っていたのでしょうか?」
四国の徳島で生まれ育ち、当時、四国は橋が一つもなかった。だから島の外が異文化という感覚があって、常に見たことない風景を見たいなっていうのがあったかな。私は大学をきっかけに上京、首都圏に行くのだけど、やっぱり田舎から東京に行って、バブルだったこともあり、仕事もいっぱいやろうと思えばできて、物も手に入れやすい時代に大学生活をしていたんだよね。
大学3年のときに1ヶ月だけオーストラリアに、ホームステイに行くきっかけがあってそれがすごく私の人生で最初の異文化で、すごく大きなきっかけとなった。「すぐ留学をしたい」と思って、休学を考えたのだけど、親に大学を卒業してから行きなさいといわれて、同世代の子が就職活動をしているなか、ワーキングホリデーに行くお金を貯めて、22歳のときにワーキングホリデーで行ったんだけど、それがやっぱりすごく大きかったと思うね。ワーキングホリデーのいいところは、勉強とか英語の語学学習も少しはできるんだけど、仕事ができるから異文化の場所で働けるっていうのが、私にとってはすごく魅力だった。
「ワーキングホリデーでの思い出は?」
世界中の人が来るナイトマーケットのお土産屋さんで働きながら、言葉も通じないのに商売する楽しさや現地の人、日本人と関わりながら働いたことが何よりも楽しかった。そして1ヶ月間、西側のパースっていうところからダーウィンっていうところまでを四駆の車で旅をするっていうツアーのときは、ほとんどテント泊で過ごしたんだよね。星空見ながら寝たり、水を大切に使ったりとか、シャワーがないから池で泳いだりとか、それを1ヶ月体験できたときに、何か自分が今まで生きてきた中で、生きてることのありがたさ、自然の素晴らしさや物の大切さっていうのをすごく体験できた。自分が今まで生きてきた中で初めて見た風景とか人との出会いがあって、それを体験して日本に戻ってきたので、やっぱ最初の何日間かは、放心状態になるんだよね。
「エコプラスとの出会いは?」
そんな自然・異文化体験のあと、日本にいて英語に関われるのは、米軍基地で働くことかもしれないと考え沖縄に行った。しかし米軍基地で働くことは周囲の反対が大きくて、西表島の民宿のヘルパーをすることになった。毎日毎日、民宿の掃除するときに海を眺めながら、これじゃいけない、しっかり働かなければと思って、その時にたまたまヤップ島プログラムのパンフレットの一部を見つけたんだよね。 そこに「豊かさって何だろう」って書いてあって、今自分が何を豊かと思って生きていけばいいのか迷っているのかもと思って、すぐ電話したんです。ボランティアスタッフのミーティングがあと何日後かにあるので、そこに来てみませんかって言われて。それがエコプラスとの出会いなのね。そしてこのミーティングで福島県のイベントに誘われて、現在の住まい福島県南会津町(旧伊南村)と最初に出会うことになるんだよね。伊南村との出会い、そしてそのあとの出来事がわたしの人生に舞い込んできてこれもエコプラスがくれたものです。
「エコプラスの活動で共感できることは?」
自然と異文化っていうテーマから、ぶれずに活動し続けているっていうのはすごいなって思う。私がスタッフだったときも、80後半ぐらいのおばあさんが、すごく高野さんの旅を気に入ってくれて、毎年来てくれた。やっぱりその高野さんと高野さんを取り巻く人たちの、その意識・活動・人間性に惚れ込んで、みんな来てたんだなと思う。そこから何か今もぶれてないような気がするよね。
「エコプラスでの経験と現在の民宿でのお仕事にどのような共通点がありますか?」
やっぱり、人との一期一会の出会いを大切にするっていう部分が共通してるなと思っています。初めて来たお客さんも、すごくうちの民宿気に入ってくれたら、何度も来てくれる。だからリピーターに繋がってるなって思うので、それはエコプラスで、培った技だなと思います。
もう一つは、山村留学を受け入れたことがあって、小学生とか中学生を家に受け入れて3,4日間の農業体験や生活体験をやってたときに、エコプラスで子供たちのキャンプのスタッフをしていたので、その子供の関わりなどを、そういうことにも何か生かせたなって思います。
エコプラスにいて一番の財産は、人との出会いだったって思っているから、もうよく言うんだけど、20代30代の時は、お金の貯金はできなかったけど、友達の貯金がいっぱいできたなっていうのが宝物。自分ができないことを、できる人たちといっぱい出会えたので、それがすごい宝物。
「現在民宿を経営してる中で大切にしていることは?」
山に囲まれて、目の前に川が広がってるやっぱりこの地形の良さを感じてもらえたらいいなと思います。夏来る人はアユ釣りが好きで来て、冬来る人はスキーが好きで来るんだけど、民宿にいる93歳のおじいちゃんと88歳のおばあちゃんと元気に暮らしていて、おじいちゃんが山がすごく好きで、山菜とか地元のキノコとかをお料理で出してくれるんだよね。その土地のものを楽しんで土地の色とか、自然を楽しんでもらえるような民宿であってほしいなって思っています。
「エコプラスインターン生にしてほしいことは?」
今回みたいに様々な人にお話を聞いたり、私達の時代はなかったけどSNSで発信できたりとか、そういう力が今の子たちはすごくある。だから私のインタビューだけに限らず高野さん大前さんの周りって本当に素敵な人がたくさんいる。世界中に本当に面白い人がいっぱい散らばっているので、そういう人たちの今を発信してほしいと思います。
「若者に向けてのメッセージをお願いします」
自分の20代って面白かったなって思うんだよね。大変なこと、涙流したこともいっぱいあったけど、本当に楽しかったの。10代にやってきたことを今やれって言われても多分私はできないと思う。やっぱり10代20代しかできないことって、いっぱいあると思うので今しかできないことをして、今しか出会えない人にたくさん出会って、自然とか、異文化との出会いを大事にしてください。
どんなことがあっても、無駄なことは一つもないって、今本当、私も思えているのでやりたいことを思いっきりやって楽しんでいってもらいたいなと思います。
【インタビューから私が考えさせられたこと】
酒井さんのインタビューをして、その行動力に終始圧倒されてしまいした。挑戦したいことがあっても何かと理由をつけて、挑戦することから逃げようとしてしまいますが、「一歩踏み出した先にはきっと楽しい事がまっているし、見たこともない景色が広がっているはずだよね。」酒井さんの行動力からそんなメッセージが伝わってきました。
現在では、SNSで今友だちがどんなことをしていて、どのように生きているか離れていても知ることができる時代です。だからこそ、周囲の目や評価を気にしすぎて、自分はこんなことしてていいのかなと、自分の進みたい道を信じることができなくなることが多いです。でも自分の人生は私しか生きることができないし、自分の道の正解も決めるのは自分自身しかいないのだから、不安があっても挑戦してみるべきだと強く感じました。今自分のやりたいことに素直に答えて行動することを積み重ねていくことで、自分自身があるべき方向に導かれ、その先にはきっと私が想像していなかった未来と見たことのない風景が見えてくるはずだと酒井さんの生き方から確信しました。
聞き手:津田 萌香