高野孝子の地球日記

日本と世界の「フェイクとファクト」

 兵庫県の知事選の結果には驚いた人たちも多かったのではないでしょうか。県議会が全会一致で不信任決議をし、失職したその本人が再選を果たしたのですから。

 パワハラ疑惑などで内部告発された一連の調査はまだ途上。兵庫県職員約9700人の4割以上が、知事のパワハラを見聞きしたとアンケートに回答しています。その本人が改めて知事として登庁し、拍手で迎えた職員の人たちはどのような気持ちでしょう。

 職員の方々だけでなく、メディアも含め、兵庫県民が選んだ結果と理解しながらも、何か違和感があるのは、つい最近の他の選挙の時と一緒だと思いました。

 アメリカ大統領選挙です。

 あれだけ競り合っていると言われていたハリス候補とトランプ候補。蓋を開けてみたら、トランプ候補の圧勝。年代、人種、性別を問わず、トランプ候補が支持を伸ばしていました。アメリカ国民のチョイスとして受け入れる以外ないわけですが、アメリカ第一主義を掲げ、アメリカ経済を強くするためなら地球環境も他国もどうでも良いという彼の発言を思うと、この先どうなるのか呆然としてしまいます。

 二つの結果に共通しているのは、メディアを通して持っていた印象と結果の違いかもしれません。かつてトランプ氏が放った「フェイクニュース」という言葉が、私たちと情報の関係を変えてしまった気がしています。裏付けのある信頼できる情報かどうかより、聞きたいことや信じたいものしか受け取らない傾向が強くなっているのかもしれません。しかし「フェイクニュース」という言葉と共に、「ファクトチェック」という言葉も出てきました。

 聞きたいことを聞いてしまうのは、私もそうです。でもそれを自覚して、本当にそうなのか、自分に都合がいいから賛同しているんじゃないか、と少し間を取って考えます。ゆとりがない時もありますが、できるだけ自分でファクトを調べます。これも何がファクトなのか要注意です。

 11月から12月にかけて、とても重要な国際的な取り決めの場が開かれます。

 一つはCOP29、気候変動枠組み条約締約国会議。11/22までなので、皆さんがこれを読む頃には、もう結果が出ているかもしれません。荒れ狂う気候とやまない戦争を抱えながらも、なんとか人類の未来を諦めないための約束事がどのようになされるか。もう一つが国際プラスチック条約。プラスチック汚染を解決するための初めての国際条約で、決定すれば国際的な法的拘束力を持ちます。別の機会に改めて書きたいと思いますが、私たちの体内には呼吸や飲み物、食べ物を通してマイクロ・ナノプラスチックがすでに入っていて、それによる健康被害の調査結果が今年になっていくつも発表されています。

 アメリカの次の大統領は、気候変動否定論者です。どんな意図を持って何を語るか、鵜呑みにせず、さまざまな情報源にあたって判断し、行動したいところです。

(2024年11月20日 髙野孝子)