高野孝子の新刊「地球の笑顔に魅せられてー冒険と教育の25年」直販も開始

エコプラスの高野孝子代表理事の最新の著書「地球の笑顔に魅せられてー冒険と教育の25年」が発行されました。世界各地への旅の様子とエジンバラ大学などでの研究生活、そして南魚沼での実践が紹介されています。

 

青空が広がる表紙。帯の下には、雪に覆われた南魚沼の風景が広がる。
青空が広がる表紙。帯の下には、雪に覆われた南魚沼の風景が広がる。

高野孝子の最新著作「地球(ガイア)の笑顔に魅せられて」(海象社、税別1,600円、324ページ)が発刊されました。オンライン書店では品切れが出ているため、エコプラスからの直販も始めました。

この本は、高野がドキュメンタリー映画「地球交響曲第七番」にも登場して露出が増えるのにあわせて、これまでの25年を超す活動を総ざらいする本を出すことを、理事会や海象社の山田一志さんらと考えてきました。しかし、高野自身がプログラムの組み立て・実施や研究活動に追われ、執筆時間がどこまで取れるかが、大きな課題になっていました。

英国ケンブリッジ大学での研究生活の紹介では、ガウン着用のディナーの様子も。まるでハリーポッターの世界。
英国ケンブリッジ大学での研究生活の紹介では、ガウン着用のディナーの様子も。まるでハリーポッターの世界。

同時に、過去に行った様々なプログラムの報告書や外部に書いた記事など、資料はぼう大で、再整理するのも大変な作業になりました。

四半世紀に及ぶ野外活動や調査研究を再整理したという点では、高野とエコプラスのこれまでの足取りを確認する内容になったと思います。

特に後半の第3部環境教育編は、改めて環境教育と野外教育の意義を、日本と世界のさまざまな実践をもとに再定義する中身となっていて、迫力があります。

単に「地球にやさしい」という情緒的な態度でなく、人間が社会と歴史に対して正しく立ち向かうためには、自らの命がいかにささえられているのかをきちんと知らなくてはならない、という高野の信念が、あちこちに登場します。

「自分たちが育った地域のことを知りもせず、都会に出るための教育を続けていて、人が誇りと夢を持って地域に定着するはずがない」。高野は「根っこ教育」の重要性を繰り返し強調しています。

直販のお申し込みは、郵送先、氏名、必要部数をinfo@ecoplus.jpへ。送料無料。同封の郵便振替用紙でお支払い下さい。

ネット書店からの購入には以下などからどうぞ。

オンライン書店ビーケーワン(24時間以内出荷)
http://www.bk1.jp/product/03302181

ジュンク堂(在庫あり)
http://www.junkudo.co.jp/detail.jsp?ID=0111737673

アマゾン(入庫待ち)

米作りにおける「水」について 座学編

座学では、水源の場所や状態、田んぼの水管理などについて教わりました。
(栃窪の湧き水について)
*8カ所の水源に番号をふり、地図でそれぞれの場所を確認しながら説明を聞いた。
1、飲み水を取っている。
2、もこもこと湧き出ている。この水がなければ栃窪には住めなかったと思う。
3、散策で訪ねた場所。昔より水の量が減っているが、重要な水源のひとつ。
4、(特に説明なし)
5、樽山の下。若干、水が湧き出ている。
6、「天王さま」という、信仰を集める山の近くにある。
7、通称「かましみず」。多く水が出ている、重要な水源。
8、2軒の家が使っている。冬には消雪にも使っている。

(田んぼと水)
(高野)地図を見ると田んぼがたくさんあることがわかる。
(晶)栃窪には60町歩田んぼがある。
(岡田)1町歩が3千坪なので、60町歩18万坪くらい。

(高野)田んぼの水管理について教えてほしい。
(晶)田んぼは一番始めに荒起こしをし、水を張る。水を張っておくと草が生えるのを防ぐことができる。それから代掻きをして、田植えをする。代掻きする時に水が必要。
代掻きをして2、3日で田植えをしないと草だらけになる。明日田植えをする田んぼは、草がいっぱいになっていたので、今日代掻きをした。代掻きすると水草が水面に浮くので、すくって田んぼの外に出した。
田植えをする際にはいったん水を落とし、植え終わったら再び水を張り、張ったままにする。水を張っておかないと草だらけになる。今、晴れが続いて水が枯れそうなところがある。火曜日の予報が雨なので、待ち遠しい。田んぼによっては、何度水を張ってもザルのようになくなるところがある。
稲は分けつして大きくなる。あまり分けつさせるのも良くないので、適当に分けつ
したら水を抜く。これを「中干し」と呼び、20本くらいになったときに水を落とすと成長が止まる。中干しをして根が張るようにする。
稲刈り前に、田んぼを乾かすために田んぼに溝を作って水を落とす。昔は手で刈り取ったので、ぬかるんでいてもよかったが、今は機械で刈り取るので、地面が固くないといけない。

(ホタル)
(浅原)ホタルは見られるか
(晶)もう少し経たないとみられない。ホタルも少なくなった。カワニナがいなくなった。

(バケツ稲)
(江崎)バケツで稲を育てているが、梅雨の時期は室内にいれたほうがいいか。
(晶)外でいいと思う。
(江崎)バケツ稲も15-20本に分けつしたら中干しをしたほうがいいのか。
(晶)子どもたちにどこまで見せたいかだと思う。中干しせずにそのままにしておけば大きな株になると思う。

米作りにおける「水」について 散策編

座学の前に、栃窪峠に通じる古道を経て集落のシンボルである「たる山」に登った。周辺の景色を見渡しながら、テーマの「水」についての説明や集落の歴史にまつわる話などを聞いた。

栃窪の護国観音の周辺にて、水源や田んぼを見渡しながら、水源などの話を聞いた。
栃窪の護国観音の周辺にて、水源や田んぼを見渡しながら、水源などの話を聞いた。

(栃窪の「水」)
1)栃窪の水源
栃窪から南西部の山々の水がもっとも豊かだが、水利権を巡る裁判で隣の天野沢集に負けたため、その水が使えなくなった。栃窪の後ろにあたる、自分たちが立っているこの辺り(栃窪峠の頂上)の水は、ほとんどが十日町方面に行ってしまっているらしく、栃窪には流れてこない。
水は田んぼには大切なものだが、十分な水の確保には昔から苦労している。

栃窪の「三大水源」と呼ばれるわき水のポイントのひとつ。
栃窪の「三大水源」と呼ばれるわき水のポイントのひとつ。

栃窪の水源は雨水や雪どけ水、窪地にしみ出る水など、天水と地下水。栃窪には「三大水源」と言われるわき水があり、少しはそれでうるおっている。日照りでもかれることがなく、米作りにも飲み水にも利用した。昔より水の量は減ったようだ。(写真でそのうちの一カ所を訪ねたことを載せる)
天野沢集落と栃窪集落に水路が分かれる分岐点がある。水不足の時は、その場所に線香やロウソクを持って行き、1本が燃えるごとに水の流れを変えるなどして水を分けあった。
昔は田んぼから田んぼへ水が流れる仕組みであったが、今は田んぼからいったん排水されると水は側溝に流れていってしまう。これは平場のやり方で、本来は違う考え方をしなければならなかった。用水と排水を一緒にしなければ、栃窪では全部の田んぼに水が行き渡らない。
わき水を利用しながらの作付けなので、冬の間に雪を集めたダムを作るなどして水不足の心配を解消したい。今も不足し始めているが梅雨に入れば心配ない。

2)栃窪やその周辺の温泉
今では使われていない、集落の上の方の棚田地帯で石油を掘ったことがあったが、石油は出ず鉱泉が見つかった。笛木健作さんの家の親戚が昔そこで温泉をやっていたが、なだれでつぶれてしまった。同じように石油を探して見つかった温泉が十日町市の「鷹の湯」。その他にも大沢山温泉などがあり、すべて鉱泉。西山の水脈には鉱泉が豊富なようだ。

(栃窪の地理学、歴史など)
1)地形
栃窪が含まれる「西山」というところは、海底が隆起してできた地域。貝の化石がたくさん見つかっている。

2)歴史
栃窪峠は、三国峠と清水峠へ行くための分岐点で、重宝に使われてきた道。「湯沢線」という県道が通っていたほど、交通量があった。
栃窪の始まりは古く、応仁の乱の際、京都から湯沢の貝掛温泉に逃れてきた万里集九(ばんりしゅうく)という僧侶が、栃窪峠で詠んだ句が今でも残っているそうだ。

3)自然、暮らし
栃窪峠の斜面を見渡すと、一面に50センチから1メートルくらいの丈の雑木が生えているが、こうした木は「柴木」と呼ばれ、全部切って燃料にしていた。山の表面には何もなく、冬はなだれが起きやすかった。夜風呂に入っているとものすごい音がしたものだった。

*峠の頂上に薬師如来をまつった小さなお堂があり、その隣には樹齢300年ほどと思われるスギがあった。スギの周囲は、大人4人が両手を広げて囲むほどで、6−7メートルはあると推測された。
100年ほど前に建てられたという、講師が住んでいる家は、お堂の近くの木が使われているとのこと。冬、「だいもち」と呼ばれるそりを使い、切った木をすべり下ろしたそうだ。