高野孝子の地球日記

出会い、学び、行動する・・・久しぶりのピースボート

 「ピースボート」に乗るのは16年ぶりでした。船旅を通して人と人のつながりを作り、国同士の関係を超えた平和の文化構築を目指す国際NGO。1983年から活動を始めています。現在は1回の航海が約3カ月。世界約20ヶ国を訪れるということです。

 ピースボート設立当時、私は早稲田大学の学生でした。大学からすぐの高田馬場で、早大生たちがおもしろい活動を始めて、事務所を開いたというウワサを聞いていました。

 そのころ教科書検定によって、日本のアジアへの軍事侵略が「進出」と書き換えられ、アジア諸国の猛反発を受けました。これまで「教わってきた歴史」は本当なのか、が彼らの問題意識だったそうです。現地で確かめてみよう、直接人々と対話しようということでした。

 ウワサや二次情報には慎重にあたるべしということは、現在のデジタル情報社会ではさらに痛感させられます。教科書もそうです。時の政治や主流の価値観によって規定されるからです。伝えられること、書かれていることの一部を、自分の目で体で実際に確かめるというのは本当に大切なこと。それは絶対的な真実ではなくても、自分が確信を持って寄って立つ、体験的事実のひとかけらになります。

 初めて船に乗った2003年、私は留学中だった英国からニュージーランドまで来て合流しました。「水先案内人」という、ルートの途中で1週間程度乗船しながら、ワークショップやお話などをする役割です。そして今年の10月なかば。地球一周の船旅としては102回の水先案内人として、私は強い雨の中、モントリオールの指定された港に向かいました。

 ピースボートはかつての何倍もの大きさのクルーザーを利用して運営されていました。全長205メートル、3万5千トンの船の乗客定員は1400人以上。これに加えて相当な人数のスタッフが乗り込むわけです。港では二人のスタッフが出迎えてくれ、すぐに私の大きなザックを担いで、乗船手続きに入りました。

 私の今回の関心の一つは、開始して35年もたつピースボートのスピリットはどう変化しているか、でした。寄付文化がなく、市民社会を支える制度も弱い日本でのNGOの運営は、基本的にどこも楽ではありません。船旅の大きさや数、抱えるスタッフの数、プロジェクトの複雑さなどを思うに、ピースボートもおそらく様々な工夫をしてやっているでしょう。

 その中で、ホームページに掲げられている「船旅を通じて、国と国との利害関係とはちがった草の根のつながりを創り、地球市民の一人として、平和の文化を築いていく」という志はそのままだろうか、そうあって欲しい、と2003年の熱い雰囲気を思い出しながら合流しました。

 パワフルさは変わりませんでした。それはピースボートの若いスタッフの人たちと、多くのボランティアの人たち、そして乗船している参加者のエネルギーによるものでした。もちろんピースボートの目的はさておき、世界一周の船旅そのものを楽しめればいいという方たちも多いでしょう。それでも海を見渡せる場所で、将棋や囲碁、麻雀卓を囲みながらワイワイしていたり、年配者がやり方を熱心に若者に教えていたりなど、交流が生まれていました。

 船上では様々な講座が、ピースボート主催だけでなく、参加者主催で開かれてもいます。ダンスの講座に行ったら、私よりも年齢が上の方々が先に踊っておられてびっくり。「自分で好きなように動けばいいのよ!」と教えてくださいました。

 深夜のカラオケでは、元役人だったという男性が「日課」として、カクテルを一杯飲み、フリオ・イグレシアスのヒット曲を笑える替え歌にして素晴らしい美声で歌い、「おやすみ」と部屋に戻っていかれました。台湾からの乗客が多いということでしたが、私の日本語での講座は、語学専門のボランティアの若者たちが、中国語と英語に翻訳してくれました。事前の打ち合わせでは、こうしたらもっとわかりやすいというアドバイスもくれました。本番ではアドリブだらけでしたが、彼らは「中身の筋は変わらなかったから大丈夫」と余裕の笑顔。大したものです。

 何よりもスピリットを保つ根底に、若いスタッフの存在がありました。問題だらけの社会に憤り、自分の生き方に悩み、どうしたらもっと生きやすい社会になるか、世の中が良くなるかを真剣に考え、議論する姿がありました。その上でピースボートのあり方を考えていました。

 私の講座で話した、私たちの暮らしと環境負荷の話を聞いて背中を押された、と船内で「ベジタリアン食を頼むことにした」と私を担当してくれたスタッフの一人が後日連絡をくれました。

 「地球市民の出会いの場」や、「グローバルな問題を現地の人たちと共に考える場」、そして個人が「行動できる場」をきっとこれからも生み出していくのだろうと、今もどこかの海の上で、数多い人たちを乗せて動いているオーシャンドリーム号を想像しています。

(11月30日)

雪の中でキャンプ!ー超豪快尻滑りで楽しもう!

Learn and Enjoy the life skills on the Snow

 厳冬期には積雪4mにもなる新潟県南魚沼市の山里で、雪を存分に楽しみ、「生きる」を考えるキャンプです。
 関東平野の北に連なる2000m級の山々の反対側。標高600mに位置する清水集落を舞台に、2020年3月20日から22日の2泊3日で行います。3月末になっても1m以上の雪が残ります。

ECOPLUS will conduct a snow camp in a mountainous village, Shimizu, in Niigata from March 20 to 22, 2020. The area is know as the deepest snow area in Japan which has 4 meters of snow in mid-winter. Even in March, we expect more than 1 meter of snow. Participants will enjoy snow and learn the ways of living in snow. English language support available.

 指導にあたるのは、北極、南極、アマゾンなど世界各地を遠征した経験を持つ高野孝子・エコプラス代表理事。地元のみなさんの協力を得て、厳しい雪の中での暮らしの知恵や技を学びつつ、自然の力強さや美しさをたっぷり楽しみます。

TAKANO Takako, the executive director of ECOPLUS, who travelled over frozen Arctic Ocean and other remote areas in the world will organize the project. With the strong support from the local people, participants will learn the knowledges and skills of the mountainous village and will enjoy the beauty and power of the snow.

対象:15歳以上の20歳代までの高校生、大学生など(中学生は要相談)
内容:雪の上でのテント泊。かんじきをはいての雪山ハイク、標高差100mの豪快しり滑り。雪上での調理。雪のトイレ。雪像作り、ソリ遊びなど、自分たちで雪を存分に楽しみます。

Participants: Youth over 15 years old, like his school and college students. Junior high students may be joined based on the situation.
Program : Camping on snow, Hiking with Japanese snow shoes, dynamic snow sliding, Cooking, Snow toilet, Making snow statues, Sledging, and any other creative activities on snow.

 集合:20日午前10時50分JR上越線塩沢駅集合
    (東京駅発午前8時52分発とき309号が便利です)
 解散:22日午後3時半ごろJR上越線塩沢駅解散(予定)
 
 参加費:23,000 円程度(2泊3日6食の滞在費、プログラム費、保険料込み)。寝袋などのレンタル費、交通費別途。
 
 定員:12人(定員に達したら締め切ります。お早めに)

Assembling; 10:50 am, March 20, at Shiozawa Station, of Jyoestu Line. Toki 309, departing Tokyo at 8:52 has easier connection at Echigo-Yuzawa station.
Break up: 15:30, March 22, at Shiozawa Station, of Jyoestu Line. (tentative)

Fees: 23,000 JPY including food and tent accommodations, programs, insurance. Travel cost and rental gears are excluded.

<<2020年雪ざんまいプログラム申込書>>
 <<Application Form>>

性別 sex(必須)

 問い合わせは、エコプラス(info@ecoplus.jp)、03-5294-1441まで。

ゆたかさとは何かを考えた11日間・・・12月7日(土)ヤップ島プログラム報告会

 近代化の波が押し寄せる現在でも、自然と調和した暮らしを維持しているミクロネシア連邦のヤップ島に、日本から9人の大学生がこの夏出かけました。
 コンビニやスマホから離れたシンプルな暮らしの中での11日間。「生きるということ」「豊かさとは何か」を考えてきました。その参加者手作りの報告会が、開催されます。ぜひご参加下さい。

【日時】12月7日(土)14:00~16:30(受付開始13:30)
【場所】神田公園区民会館4階洋室A
    東京都千代田区神田司町2-2
     神田駅、淡路町駅、小川町駅から、いずれも徒歩5分

【プログラム概要】
 ヤップ島の紹介、プログラムを通じて感じ、考えたことの発表
 報告会参加者とのトークセッション

【登録方法】以下のフォームに、必要事項をご記入ください。当日参加も可能ですが、報告書などの配布を予定しておりますので、事前のご登録をいただければ助かります。

報告会の後に懇親会を予定しています。(現在のところ17:30から2時間程度予定)参加の有無をお答えください。

【持ち物 :】マイコップ(飲み物を準備する予定です。ゴミ削減のためご持参ください)
【参加費】無料

【懇親会】17:30ごろから約2時間、神田駅周辺で会費制の懇親会を予定しております。参加を希望される方は上記フォームでお知らせ下さい。

高野代表理事が、Dragonfly Awardを受賞・・・米国でのPBEカンファレンスで

TAKANO Takako Received Dragonfly Award at PBE Conference in Flint, MI

 エコプラスの高野孝子代表理事は、2019年11月8日に米国ミシガン州で開かれたPlace Based Education Conferenceで、長年にわたっての場の教育への取り組みに対して「ドラゴンフライアワード」を受賞しました。1990年代から、アラスカやミクロネシア、日本の農山村などを舞台に、その地で積み重ねられた自然と共生する知恵と技を基礎とした学びを構築してきたことが評価されました。

TAKANO Takako, executive director of ECOPLUS, received “Dragonfly Award” at Place Based Education Conference in Flint, Michigan in the US on November 8, 2019 for her two decades long efforts for the PBE. The organizer of the conference, Mary Whitman of Great Lakes Stewardship Initiative, said that TAKANO was chosen because of her efforts on PBE through adventurous expeditions and other activities in many places in the world for long years.

 このカンファレンスは、五大湖の環境保全を図るための教育活動を展開するGreat Lakes Stewardship Initiative(五大湖保全機構)が主催し、今年が7回目。ミシガン州を中心に、ハワイを含む全米各地、さらに日本、カナダ、ドイツなどから小中高の教師、教職課程をもつ大学関係者、行政関係者ら335人が集まりました。さらに発表には、地元の小中高生たちも加わり、11月8、9日の両日にわたって、分科会と全体会を繰り広げる大きな集まりとなりました。

The conference was organized by Great Lakes Stewardship Initiative, GLSI, and was the seventh meeting with teachers, researchers, academics, administrators and students from 22 states including Hawaii and representatives from Japan, Canada, and Germany. The 335 registered attendees exchanged active conversations throughout the two days of 8 and 9 November.

公教育に積極的に取り入れられるPBE

Variety of PBE in the US

 カンファレンスでは、2日間で90近い分科会発表が行われ、全米各地で小中高から大学にいたる公教育の中でPBEが積極的に取り組まれていることが示されました。中でもミシガン州では教員養成課程の中にPBEが深く組み込まれるようになっている状況が語られました。

Nearly 90 sessions throughout the conference reported a variety of examples of PBE in formal and informal education. In Michigan, PBE is now embedded in teacher education and more than 20% students are taking PBE courses, one of the professors said.

 高野代表理事は、日本の農山村での農を軸とした学びや、ミクロネシア連邦ヤップ島での体験活動を通じて、人々がどのように変容するかなどを発表。近代化した都市の若者たちが農山村や離れ島という環境の中で活動することで、自らの生き方に対しても深い学びを得ることができることを強調しました。

In the session, titled “What is a priority?”, TAKANO reported her research on programs in Japanese rural villages and on a Micronesian island. Many program participants from cities acquired foundational learning linked to values through direct contact with the nature, culture and people of the place.