草取り、病害虫退治、水管理が3つの課題

田植えが終わった後には、(1)田んぼの草取り(2)病害虫退治(3)水管理の3つが農家の大きな仕事になる、と笛木健作さんが座学で話しました。
2009年6月13日の田んぼのイロハでは、地元の笛木健作さんが講師となった座学が行われました。以下、座学の主な内容です。

田植えが終わり穂が出る前までの作業としては、草取り、病害虫退治、それに水管理が大きな仕事になる。

*草取り
除草剤を使わない田んぼでは、イグサやホタルイなどの雑草がどんどんと芽を出してくる。それを泥の中に練り込んでいく。その作業を3回ぐらいはしなければならない。中でもヒエはイネにそっくりで気がつくと大きくなって大量の実を田んぼに落としてしまう。そうなるとさらに大量に発生するので、粘り強く抜き取り続けないといけない。

ヒエ取りの最終段階では、イネは根本から数えて15番目の葉っぱ(15葉)を出す。この葉は「剣葉」とも呼ばれる鋭い葉なので、雑草を抜こうと身をかがめた際に目を突いてしまい、失明することもある。

このために、昔は、フェンシングの面のような金属の網で作った面を着けて田んぼに入った。

草取り作業で人間が田んぼに入ることで、土の中で有機物が分解した際に出来る硫化水素を押し出すことにもつながる。ガス抜き効果がある。

除草剤を使うと、泥の表面から厚さ5ミリ程度の部分での発芽を抑制するなどして雑草の発生を抑える。手で取るのは大変だが、全部を完全に取り除く「全滅方式」ではなく適度に取り除く程度の作業を繰り返し重ねることになる。

(病害虫防除)
イネにはいろいろなムシが付く。田植え直後には、イネミズゾウムシがついて、葉っぱの汁を吸う。農薬を使う場合には、田植え前の段階の苗に薬剤を振りかける。農薬を使わない場合は、出来るだけ苗を大きく育ててから、少々葉っぱを枯らされても、残りの部分で光合成が出来るようにしておくと、害虫に負けることなく成長していってくれる。

もう少し大きくなると、ニカメイガの幼虫ズイムシがイネの茎を食べるなどの被害を与える。セミを長さ1ミリくらいに極端に小さくしたようなヨコバイなども害虫として知られる。葉っぱをかじるイナゴ、出始めた穂の中の若いコメの汁を吸うカメムシなども困った相手となる。

これを防ぐには、田んぼの回りにこういう害虫が棲みやすい環境をなくすことが必要。つまり、あぜの草をきれいに刈って、虫が繁殖する場所を少なくする。あぜに除草剤をまいて草を根絶やしにすると、土が固く、同時にもろくなって、棚田が崩れてしまうので、草を生やしながら刈るという作業が必要になる。

(水管理)
イネは、田んぼの中でどんどんと茎の数を増やす。1株に10数本になるまで増やすが、それを抑えるためにある段階で水を抜いて「中干し」をする。その後、また水を適度にかけながら育て、特に穂が形成される「穂ばらみ」の時期にはたっぷりと水をかける。

7月中旬には再度溝切りをして田んぼの水を抜いて、8月15日前後に穂が出そろうと、その後は水を抜いて田んぼを固くしながら育てて、最後の刈り取り時期にコンバインなどの機械を田んぼに入れられるようにしていく。

(栃窪での田んぼの集約)
栃窪地区では、農業法人として「とちくぼパノラマ農産」を作り、そこに80歳を超えた高齢者の田んぼなどを集積して、田んぼが荒れていかないようにしている。すでに13戸分の集積が出来ている。それぞれの家がトラクターや田植え機、コンバイン、乾燥機などを持ってコメ作りをしてきたのに比べれば、機械も効率的に使うことができる。

もともと栃窪地区には60ヘクタールの農地があるが、実際には40ヘクタールしかない。耕作放棄などで20ヘクタールが消えてしまっている。