これからの種を育てる
インタビューの最後には、岩崎さんのこれからについても伺うことができました。特に、今後研究者を育てていくことに対する想いに言及します。
「大学にいるので教育という面が大切だと考えています。少なくとも1人はちゃんと学生を育てたい。自分も周りの大人たちに助けてもらって生きながらえてきたので、受けてきた恩を次の世代に返したいという思いがあります。」
そこで語られる教育に対する想いも、決して平坦ではなかったこれまでの経験に根付いています。
「大学の研究室の先生と生徒の関係って師匠と弟子のような関係性があるんですけど、行き過ぎると若い人の発達を妨げているのではないかと感じていて。自分の体験から、人は責任感を自覚したときに成長するんじゃないかなと思うんです。誰かがやってくれるとか、誰かの指示に従っていればいいやではなく。そういう甘えがなくなったときに、多分すごく苦しいと思うんですけど、自分がやらなければという責任が生まれて。そこから多分成長する人はするし、急激に伸びていくと思うんですよ。そういう風に自分で判断できる人たちが、育っていけばいいなと。きっとそういう人たちが世界を変えていくから」
また、これからのキャリアを歩んでいく上での女性研究者としてのあり方を示していくことについても語っていただきまた。
「今、女性の研究者は上の方に行けば行くほど少ないんですよ。女性の場合は、研究職に限らず、プライベートとキャリアで悩む人たちも多いと思うんですけど、どっちか選んだとしても選んだ責任だから、ちゃんとやってください、というプレッシャーがある。もう少し、女性だけが頑張らなくても、楽に生きられる世界があってもいいんじゃないかなと思うんです。私自身もロールモデルに困った時期がありました。自分自身が、いい見本になって、『ああはなれない』ではなく、『こうなれるかもしれない』と、少人数の人でもいいので思ってもらえたらいいなと思っています」
閉塞された世界に包まれ、人生で最も自分と向き合って、何ができるのかを考えた中学生時代。そこからヤップでの世界の広がりを経て、研究者として、人としての学びと成長を重ね、種から実を育ててきた岩崎さん。今は新たな使命感として、次の種を育てていくことへの想いがあるようです。決められた枠にあてはめるのではない、岩崎さんらしい生き方、自分らしく成長していく姿を通して、多様な種が育まれていく未来が想像されます。「教科書に載るような仕事をしてみたい。そして研究者として楽しく研究し続けたいというのが今の夢です。ヤップに行った人たちともまた同窓会したいですね。」20年前から大きく成長しても、どことなく変わらない、どこか世界の先や真理を見通した感のある澄んだ瞳で、たくさんの物語を語っていただいたインタビューでした。
(聞き手:川口大輔=エコプラス理事、1999年ヤップ島プログラム参加)