Dr. Denise Mitten(デニース・ミテン)
米国アリゾナ州、プレスコット大学にてサスティナビリティ教育博士課程および冒険教育修士過程の主任を務める。森林生態学、教育・リーダーシップ・倫理、カウンセリング、オルタナティブセラピー、脳科学など、研究は非常に学際的。
1960年代にガールスカウトで活躍し、以後40年以上にわ たり、マッキンリーやスイスアルプス、ヒマラヤ遠征や、コロラド川やリオグランデ川でのラフティングやカヤックによる川下りなどの活動を重ねる。
「野外での技術」と「思いやりの心」が、持続可能なコミュニティを作る術を得ることにつながるとし、また、1980年代から、 数多い女性たちが野外教育や野外活動の分野に進出することを支援してきた。近編著にPalgrave International Handbook of Women and Outdoor Learningがある。
1885年にイギリスのウイリアム・モリスが行った「「如何に生きているか」と「如何に生きるべきか」」(‘”How we live” and “How we might live”’)という有名な講演があります。
世界の工場と言われたイギリスは、1870年代以降、大不況に陥り、膨大な失業者が出て、「貧困の再発見」ということが言われていました。そういう中で工芸家でありデザイナーであり建築家であったモリスは、自分たちはどのように生きているのかと提起しました。モリスは「私達は戦争の中で生きている」と言っています。その戦争というのは、世界的な大競争の中にある国家間の競争、会社同士の競争、そして人間同士の競争のことなのだ、と言います。ともすると、人間はその「戦争」の中に巻き込まれて、人に対して復讐の心を持ったり、絶望したり、不安におののいたりする。それに対して労働者達はいったいどのように生きればよいのか。モリスは、そこでそれは「まともな生活」(decent life)なのだ、というのですね。その結論は以下の通りです。
Social Agency(協働意識)
個人として権威から離れ、自ら思い描くことが出来る。行動することが出来る。それが西洋における啓蒙思想にもつながっていく、個人が考え,行動するという世界です。問題点の一つは、最後には「私がこの国を再び偉大にする」というような権威主義的なリーダーに行き着いてしまうということです。
私が推し進めたいのは、個人としてのAgency(行動意識)ではなく、社会的な行動意識です。いかに他の人々との連帯の中で、コミュニティの中で尊敬しあいながら、つながりあって行動できるか。ということです。難しいことです。みんな違っているからです。
この例の一つです。私が住むクライストチャーチでは、2011年2月の大地震の後、学生たちはフェイスブックで仲間を募って町の片づけ作業を始めたのです。6月に二度目の大きな地震が起こった時には2万4千人が組織されていました。大きな変化のためにともに汗を流し,行動したのです。
おりしも、米国では「Make America Great Again」のトランプ大統領が就任。英国のEU離脱、各国での保護主義への回帰などの中で、いかに世界のほかの人々とつながりつつ、身近なコミュニティの中での学びを深めていくかの議論が続きました。子育て、地域おこし、環境教育、持続可能性教育、野外教育、国際化などの様々な分野の人々が集まり、「豊かさとは何か」「どういう場所で、どう生きるべきか」などを真剣に考えた2日間でした。