研修会内容

613-l地球市民アワード 大人リーダー研修会
日時:平成20年6月6日(日)13:00-17:00
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター 研修室
講師:高野孝子

【1】地球市民アワードの概要
地域に根差した活動をする子どもたちへ向けた「教材」ではなく「提案」であり、「社会」「自然」「文化」の3分野が、互いに切れた体験ではなくつながりを持った体験となるよう工夫されている。

その第一ステップが今回の「大人リーダー研修会」が対象としている【大地賞】である。【大地賞】修了後は、【風賞】、そして現在考案段階にある【光賞】へとプログラムがステップアップしていく。

【2】持続可能な社会
「持続可能な社会」という言葉から連想出来る事柄に関して、参加者より以下のキーワードが挙がった。
*ゴミが少ない社会
*循環が出来ない
*化石燃料に頼らない
*無理がなく、誰でも出来る
*共生・多様性
*世代を越えて、つながって
*つながり:地域や自然、異なる価値観

また、現在進行中の環境問題として、
+地球温暖化  +食糧危機
+ゴミ     +大気汚染
+砂漠化    +人口問題(多い、少ない)
+水不足    +政治
+経済
などの例も参加者より挙がった。

→こうした概念や現実に子どもたちに気がついてもらうことが重要。
→そのためには、子どもたちの自主的な活動に加え、大人が少し手を差し伸べて視野を広げてあげる必要性がある。

こういった意義・目的は、「地球市民アワード」のネーミングにも表れており、地球規模の視野を持つ、と共に実際に動く場所は地域である、という意味を込めて『地球市民アワード』と決定した。

【3】具体的な手法について

子どもが主体とは何か?
→自分たちは○○をやりたい!
大人が主体とは何か?
→○○がいいから○○をしなさい!

614-l 大人が主体となる活動は、しばしば“やらせる”ことによって達成を強制させてしまう可能性がある。その結果、子どもたち自身の意志とは無関係に正解が何かを探す子どもになってしまう。一方、子どもが主体となる活動では、子どもたちの自主性が活動の源となる。また、大人リーダーは「ファシリテーター」の役目を担う。

◎ファシリテーターとは・・・
“ファシリテーター”とは、語源であるfacilitate(手助けをする、容易にする)からもわかるように、人と人をつなぐ役割だったり、進行役だったり、何かを促進させる役割を果たす。案内役を意味する“ガイド”や、スキル等の指導者にあたる“インストラクター”とは異なる。
「地球市民アワード」は、子どもたちの自主性や選択を大切にすることを前提に子どもたちの学びを促進し、引き出す、という意味でこの”ファシリテーター”という言葉がニュアンスとして近いかもしれない。

またそのためには、大人による「動機づけ」が大きな意味をなす。

◎動機づけとは・・・
動機付けとは、子どもの自主性を引き出すためのサポートである。

主体が子ども:〔ハプニング型〕↔〔マニュアル型、シナリオ型〕(反対語)

子どもが主体となると、その活動や結果にはマニュアルは存在しないので、ハプニングも想定される。
→大人がハプニングを許容することも必要
→ハプニングのプロセスを大切にする
→そこから何らかの学びを引き出してあげる

これらは広い意味での「動機づけ」と言える。

よい学びとは、多角的に観察し想像することで、大人側のある程度の寛容さが必要である。あらゆるハプニングを想定して準備を万全に行なっても、時にはその全てを捨てなくてはならないときも出てくる。
これを、自由に学びを引き出すという意味で「教えない教育」と表現する。

その具体例として、「3Hモデル」という手法がある。3Hの“H”は、
1)Head(知識)    2)Heart(情、感動)    3)Hand(物を作る)
である。総合的にこの三つの“H”がバランス良く含まれるようにな手法を工夫し、学びをを深め、引き出すことが大人リーダーの役割である。

◎振り返りとは・・・
何か活動を行なったら、振り返りを行なうことがとても大切である。自分の体験を言葉にしてみんなで分かち合い、活動を客観的にひもといて整理することで、次の行動に繋げることが出来る。

ここでの大人リーダーの主な役割は、子どもたちの発見を引き出すことや、「自然」「社会」「文化」の3つ分野のつながりに気づかせることである。
その際に、子ども側から疑問や質問を呼び起こすことは次の学びにつながるだろう。

【4】地球市民アワードの実際の進め方
大地賞の流れ、および進め方は以下の通りである。

1)活動する子どもたちのグループを作り、活動計画を練る。
2)アワードプログラム事務局に参加登録証を送る。
3)事務局から受けたIDで「地球市民アワード」専用のウェブサイトにアクセスし、「自然」「文化」「社会」の活動記録をそれぞれ書き込んでいく。また子どもたちは記録ノートに活動内容を記録していく。
4)振り返りを整理して「ふりかえりシート」に記入し、必要に応じて大人リーダーのサインをもらう。
5)学んだこと、感じたことなどについて発表を行なう。
6)まとめの振り返りを行なう。
7)アワード発行申請書を事務局に送る。
8)アワード(修了証)が届いたら、授与式を行なう。
活動の例)以下の活動は「自然」「文化」「社会」のどの分野に当てはまるだろうか?
☆ 図書館で仕事体験・・・社会
☆ 紙すきハガキ作り・・・文化+社会
☆ 万華鏡作り・・・文化+社会+自然
☆ 清掃工場見学・・・社会
☆ ぶどう狩り・・・文化+社会+自然?
☆ マスつかみ、カブトムシとり・・・自然?

以上のような具体例からも、3つの分野は互いに関係しあっていて、一概に分類することが出来ないことが分かる。
また、養殖されているカブトムシをつかまえることは果たして「自然」の活動なのか、ということに対して疑問が挙がるかもしれない。しかし、「養殖である」という事実を大人リーダーが説明してあげること、「なぜカブトムシが養殖されているか」などの疑問を子どもたちに投げ掛けてあげることも、学びを引き出し、次につなげていく大切な要素になりえる。また、子どもたちの世の中で起きていることを想像する力を養うことも出来る。

【4】大人リーダー研修会を振り返って
参加者の意見・感想
●様々な可能性、枠が定まっていない視点が存在して面白い。なんらかの形で反映させていきたい。
●子どもの活動だけでなく、大人同士での活動、会社の経営活動にも活かせそう。
●少人数や一人でも出来る、親子で出来ることが良いと思った。小学生や中学生だけでなく、大学生ももっと関心を抱いて取り組んでいけたらいいと思う。
●子どもたちにとって、この「アワード」自体が魅力的な動機づけななるのかもしれない。
●今日の研修会を通して、自分自身の振り返りにもなった。

以上

地球市民アワードプログラムの研修会を行いました。

これから、各地で子どもたちの活動が始まりそうです。

研修会の様子
研修会の様子

7月6日(日)13:00-17:00、オリンピックセンターで研修会を行いました。

高野から、プログラムの概念、持続可能な社会作りの教育のコンセプト、体験活動やふりかえりの大切さの説明の後、実際にどう活動ができるか、参加者のみなさんから意見を出してもらいました。

地球市民アワードプログラムの概念を説明する高野孝子
地球市民アワードプログラムの概念を説明する高野孝子

「近所や親戚の子どもと始めてみたい」、「体験の大切さを改めて感じた」、「可能性が広いと感じた」などの感想が参加者から寄せられました。