「ヤップ」タグアーカイブ

シリーズ ヤップでまかれた種たち

第4回:今井(伊藤)櫻子さん

他者と生きる
異文化で人と誠実に向き合いながら得た学び

 地球体験チャレンジ「ヤップ島プログラム」30周年を迎えるにあたってスタートした連載企画「ヤップでまかれた種たち」。ヤップを経験した仲間たちのストーリーから、ヤップの意味や価値、そして今後の社会づくりを考えます。

 第4回目のストーリーテラーは、2014年の参加者の今井櫻子さん。民族や宗教、ジェンダーなどアイデンティティの異なる他者の共生を探求テーマに、現在は福祉の世界で障害のある方の就労支援事業を行う会社で活躍されています。

 台湾で育った今井さん。今回のインタビューでは自身のルーツを振り返りながら、ヤップでの異文化体験も踏まえ、これまでの学びや今向き合っていることについて語っていただきました。

インタビューにお答えいただく今井櫻子さん

自然の中で見えてくる「異なる他者と生きていく」ということ

 「ヤップでの生活は本当に大変でした。朝、魚を取りに行って、捌いて、料理のために火を起こして、やっと火が通って、食べようと思ったら、もうお昼ご飯の時間になっていました。お昼はタロイモを取りに行って、また夜ご飯だね・・・。一日ご飯をつくっただけで終わった日もありました(笑)。」

 ヤップでの第一印象を振り返りながら、明るく語る今井さん。大学入学直後に、高野さんが主催する「世界が仕事場」の授業を受講したことをきっかけに、2014年の夏にヤップ島プログラムに参加することになりました。

 「授業でヤップ島についての紹介動画が流されました。そこには自分が全く知らない世界があって。貨幣経済があまり浸透していないコミュニティのあり方や、そこで暮らす人達はそれをどう思っているのかといったことに興味が湧きました。『実際に会って話してみたい』とビビッと来ましたね。『大切なことは自然が全部教えてくれるよ』という高野さんの言葉も心に残っています」

 多様な人々と出会いたい、そうした好奇心を胸にヤップに向かった今井さん。野外で暮らした経験は多くありませんでした。力強く、厳しい自然と真正面から向かい合う生活の中で、「私には生きていく力が全然ない」ということを自覚するところからのスタートでした。

 そして、生活する中では、自然だけではなく、異なる他者と生きる難しさや葛藤にも直面することになります。

 「参加者一人ひとりにとって、ヤップで何を得たいのか、何を大事にしたいのかは違いますよね。そんな中で、時間の使い方をどうするか私と他の参加者との間で、意見がぶつかり合う場面がありました。私は地域の方に招待されていた小学校で開催されるイベントに参加して、ヤップ島で暮らす人たちの生き様を近くで見たかったのですが、まず自分たちの生活の場を整えるために家に残って作業したいという意見もありました。最終的には号泣しながら、みんなで話し合ったのはいい思い出です。意見がまとまらないときに喧嘩したり、論破されたと感じたり、お互いの気持ちを120%出し合って、言葉通り、一人では生きられない環境の中でぶつかり合って、それでも支え合って生きていくという濃い体験をしました」

 他者と過度に干渉しなくても生きていける日本での生活と異なり、ヤップ島プログラムでは、互いの価値観をぶつけ合い、すり合わせながら、協力していかないとうまく生活していくことができません。そうした環境の中でもがきながらも、多様な人たちといかに共生するのかという問いを手放さずに考え続ける今井さん。

 その背景には、今井さん自身の小さい頃からの経験が影響しているのかもしれません。ここで少し今井さんのこれまでを振り返ってみたいと思います。

ヤップ・カオハガンの仲間95人が参加
Ex-participants enjoyed talking online with friends


Big reunion of Yap & Kaohagan Program Cerebrating 30th year

30年目を記念する大同窓会を開催

 ミクロネシア連邦のヤップ島を中心に開催してきた「地球体験チャレンジ」が、今年で30年目となるのを記念して、これまでのプログラム参加による大同窓会が、2021年9月4日午前10時から正午まで、オンライン形式で開催されました。小学生から20代半ばまでで参加した若者たちは、40歳代半ばを筆頭とする立派な大人となり、沖縄から北海道、そして米国、欧州、アジア、豪州など各地で活躍中。同じ時期に参加した仲間たちとの分科会などで、久しぶりの会話が弾みました。

Celebrating 30th year since ECOPLUS started the program in Yap, Micronesia and Kaohagan in the Philippines, a big reunion was held online on Sept. 4, 2021. Ex-participants who were elementary students to early 20s were now well grown adults living in all over Japan and the world from Hokkaido to Okinawa, US, Europe, Australia and other Asian countries. All of those enjoyed talking with old friends doing the session.

I addition to the ex-participants and supporting staff, we had Tina, Linda, both participated invitation tour to Japan in 1997, and En, Sean, both participated Japan tour in 2013, 17 and 19, from Yap.

 集まったのは、ヤップ島のほか、フィリピンのカオハガン島でのプログラムに参加したかつての子どもたちなど計95人が参加。ヤップ側からはティナさんとリンダ(いずれも1997年、高校生の時に日本へ招へい)、エンさん、ショーンさん(いずれも2013年、17年、19年、日本に招へい)が参加してくれました。

 司会進行は、田中にがつさん(94年参加)、川口大輔さん(99年参加)。最初に、これまでの計36本のプログラムをふり返るスライドを見た後、エコプラスの髙野孝子代表理事からこれまで30年をふり返ってのカオハガンとヤップの変化を報告。事務局の大前からも、エコプラスの現地での環境保全活動などの状況の説明を行いました。

Under the direction of Nigatsu, participated in 1994, and Daisuke, participated in 1999, the event was proceeded. TAKANO Takako, executive director of ECOPLUS had a presentation about the situation of Yap and Kaohagan. OHMAE Jun-ichi, Manager of ECOPLUS, explained about it projects in Yap for sustainable future.

Based on the year of participation, we broke out into 18 sessions. Some were first time to join in such reunion but participants clearly identified each other with old memory and chatting were not easy to be stopped.

 参加した年などに分かれてのブレークアウトセッションは、全部で18。参加年、滞在場所など共通項で分かれてもらいました。90年代にプログラム参加して以来という人もいましたが、面影はそのまま。にぎやかな会話が続きました。

 再度の全体会では、ヤップ側からのメッセージをもらった後、4人の参加者がそれぞれの体験が今にどうつながっているかを発表してくれました。商社に勤めていまはオーストラリアに駐在する男性は、「ヤップで得られたのは相手を尊重し理解する姿勢。聞く力だと思う。世界観が違う相手と仕事をする時に役立っている。時代は、資本主義が自然との調和を取ろうとしていると感じている。この機会にヤップの経験者が知恵を出し合っていくのだ大事ではないか」と話してくれました。

In the second general session, messages from Yap were given then 4 ex-participants had short talk about their life after the program. One person working for a Japanese trading company stationed in Australia said “I leaned the way to hear the voice from the different culture in the program. It was the base for my life. Now the capitalism is seeking the harmonious relations with the nature. It might be the good time for the ex-participants to work together”.

 再度のブレークアウトセッションなどを経て、午後零時過ぎに公式行事は終了。その後も、半分前後が残っての2次会と続きました。

 画面には、子どもたちの顔があちこちに出てきました。まだ数カ月の赤ちゃんから中学生まで。30年で、世代がぐるっと一巡りしたことを感じさせました。

 「しあわせって何だろう」
 自然に近い暮らしの中で、何が真の豊かさかを考えることが、プログラムの目的でした。
 それぞれのみなさんが、しあわせとは何かをいまもしっかりと考えながら生きていることを感じた同窓会でした。

After another breakout session, the event was concluded in two hours and 15 minutes. After the official closing, still we had an half of the participants in the conference room and continued talking.

During the meeting faces of some month old babies to junior high children were repeatedly appeared. In these 30 years, a wave of one generation surely progressed.

“What is the true happiness?” This was the main common theme of our past programs. Through out the session, each person looks like living their life with this question in mind.

シリーズ ヤップでまかれた種たち

第3回:高梨晃さん

丹沢の森とヤップ
手もみ茶づくりが育む豊かな体験

 地球体験チャレンジ「ヤップ島プログラム」30周年を迎えるにあたってスタートした連載企画「ヤップでまかれた種たち」。ヤップを経験した仲間たちのストーリーから、ヤップの意味や価値、そして今後の社会づくりを考えます。

 第3回目のストーリーテラーは、神奈川県秦野にある高梨茶園にて、四代目を務める高梨晃さん(33)。ヤップ島プログラムを体験した多くの参加者が、事前キャンプを行う地「丹沢」で、先代から家業を受け継ぎ、茶園を営んでいます。

 今回のインタビューでは、丹沢の地域への想い、手もみ茶へのこだわり、茶業を継ぐことの覚悟、そして自らもヤップ島プログラムに参加したことが与えた影響について、語ってもらいました。

オンライン・インタビューの高梨晃さん

丹沢山麗に茶園を構えて

 「機械がない時代に、昔の農家の方は、お茶の葉を自分で摘んで、蒸籠で蒸して、炭火で乾かして、茶缶に入れて、自分用のお茶を1年間分つくっていたんですね。畦畔茶(けいはんちゃ)と言うんですが、土地と土地の境目にお茶の木を植えて、それを5月に摘んで。そういう昔のお話を語りながら、お客様に実際にお茶摘みや手もみをしていただく。そうした体験を大切にしていきたいんです・・・」

 神奈川県秦野の丹沢山麗に、約3ヘクタールの茶畑を構え、丹沢遠山茶をつくる高梨茶園。昭和28年、高梨さん曽祖父の代にそれまで行っていたタバコ栽培を手放し、雨の多い丹沢特有の気候を生かしたお茶の栽培に切り替えました。高梨さんは、22歳までに静岡と茨城での修行を終え、家業を継ぐべく秦野に帰ってきて、10年以上が経ちました。

 高梨茶園は栽培や生産に特化するのではなく、茶畑に苗木を植え、茶葉を収穫して乾燥させ、工場で茶葉まで加工し、お客様にお届けするという六次化まで自分たちで担うスタイルを大切にしています。「自分たちで販売するところまでやっている茶園は、全国でもそんなに多くはないのかなと思います。直接お客様にお茶を届けて、シンプルに喜んでいただけたときが、とってもうれしいですね」と、この仕事の醍醐味を語る高梨さん。

そんな高梨茶園ですが、エコプラスとは実は深いつながりがあります。ヤップ島プログラムでは、事前プログラムとして丹沢でキャンプを行うのですが、その丹沢の森の管理をしている森林組合の責任者がお祖父様でした。

 「うちのお祖父ちゃんに聴くと、高野さんがまだ20代くらいのときに『この森にキャンプを張りたいんですけど』と相談に来られたそうです。それ以来、エコプラスがこの森を拠点に活動をされていて。私がみなさんと初めてお会いしたのは16歳くらいの時で、最初は『何をしている団体なんだろう?』と不思議に思っていました。ただ、参加者のみなさんが、キャンプに入る前と終わった後に茶園にご挨拶に来てくれる際に、森から帰ってきたみなさんの表情が全く違って、目がとてもきらきらしているんですね。『昨日の夜こんな大変なことがあってね・・・』と語る姿が、疲れてはいるんですけど何となく自信がついているように見えて。1日でこんなに人が変わるって、『一体この団体は何をやっているのだろう?』と興味をもったのが最初の出会いでした」

 そこからエコプラスの活動に関心をもってくださった高梨さん。その後、高梨茶園に協力いただき、エコプラスが参加者を募り毎年のように実施した「手もみ茶づくり講習会」では、修行を終えて戻ってきた晃さんが、お父様の孝さんとともにお茶づくりの指導を行ってくれるようになりました。

 手もみ茶づくりの技術を競う全国大会で2位になった経験もある高梨さん。お茶づくりへの想いはどのように育まれてきたのでしょうか。

ミクロネシアとオンライン交流

The First Online Conference connecting Micronesian Island and Japan for Sustainable Future

 2021年2月20日(土)にヤップ島と日本を繋ぐ初のオンライン交流会が開催されました。ヤップ島を含む太平洋の島々からヤップ側が5名、日本から過去のヤップ島プログラム参加者ら8名が参加しました。

 ヤップ側の5人は、ショーン(仕事で訪れているチューク州から)、エン(勤務先のポンペイ州から)、ティナ(滞在先のグアムから)、そしてマルベイとケンがタミル地区からと、ミクロネシア各地からの参加でした。

The first online conference connecting Yap and Japan was held on Saturday, February 20, 2021. Islanders of Yap joined the conference; Sean Gaarad was from Chuuk, Ivan En was from Pohnpei, Tina Filled was from Guam, and Jeff Marbey and Ezekiel Ken from Yap. From Japan side, in total of 8 persons including ex-participants of Yap-Japan Cultural exchange program joined.

 交流会では、経団連自然保護基金の支援によって行われているプロジェクト「タミルの持続可能な将来計画作り」について、現地からの報告と全体でのディスカッションを行いました。

The theme was “How to realize the sustainable society of Tamil municipality, Yap”. In the conference, we had a presentation by Sean and live reports from ocean side of village of Maaq and Merur in Tamil. It was a part of the project called “Sustainable Tamil,” supported by Keidanren Nature Conservation Fund, Japan.

 最初に、参加者同士が自己紹介をした後に、ヤップ島のマ村とメルール村からスマホのカメラによる生中継が行われました。

 ヤップ島には2019年に光ケーブルが陸揚げされ、インターネットが高速化しましたが、島内のネットワークがまだ弱く、画像は途切れ途切れ。しかし、波や風の音が聞こえ、メンズハウスの様子がリアルタイムで映し出されると、日本側の参加者はびっくり。過去参加者の中には20年近いギャップがある人もいましたが、それぞれ懐かしいヤップの景色と風を感じました。

Although Yap now has a submarine fiber optical cable connection since 2019, its local network is still depending on ADSL connection using metal cables. So the connection was unstable, however, viewers from Japan could see the views around their familiar men’s houses with the sound of wind and waves. Participants, some of those joined the program about two decades ago, had very memorable time over the screen.

 次に、プロジェクトの中心メンバーであるショーンより、タミル地区の紹介と、プロジェクトの現状報告がありました。

First, Sean, a core member of the project, introduced the Tamil municipality and reported on the current status of the project.

The cultural characteristics of Tamil are that they respect each other, history and culture are inherited in practical ways such as oral tradition and dances, the community cooperates for a common purpose, and the existence of the family is very important. 

 タミル地区の文化的な特徴は、お互いに尊敬すること、文字がないため口承や踊りなどの実践的な方法で歴史や文化が引き継がれていること、コミュニティが共通の目的のために協力すること、そして家族の存在をとても大切にすることです。

 そんなタミル地区で計画されている「エコツーリズム」は、島を訪れる人にもコミュニティ全体にも意義があり、環境や社会への負荷が少ない持続可能な「観光」のあり方を創造することを目指しています。

In the project, a trial of “ecotourism” was set as one of main goals. Ecotourism aims to create a sustainable tourism that has less impact on the environment and society. In other words, it seeks to benefit both visitors and the community as a whole.

 タミル地区では自分たちの回りに、どのような「宝物」があるのかを見つけるために、村歩きが行われています。ショーン自身も知らなかった地域の歴史や自然環境の特徴などを村の他の人から学ぶ機会になり、多くの発見があったそうです。マ村とメルール村ではホームステイやグループステイの受け入れ態勢を構築中。訪問者に提供する食事についての話し合いも行われるとのことでした。

To begin with the preparation for ecotourism, villagers walked around each village to identify the ‘gems’ which are valuable to themselves and also to the visitors. It was meaningful for villagers to learn some histories and natural characteristics in the area. 

In addition, it was reported that Maaq and Merur village were ready to host both homestay and group-stay visitors. It was also informed that meetings, about what food would be provided to visitors, would be held in coming weeks. 

 最後のディスカッションでは、ショーンから「文化、自然環境、人、宿泊施設、アクティビティ」5つのキーワードのうちどれが一番、人々の関心を引くことができると思いますかと問いかけがあり、それについて日本からの参加者が意見を出し合いました。

There is not something “Always showcased luxury” in Tamil but there is something in the living life that can amaze visitors. For instance, fruits, scenery, local dance and so on. In the final discussion, Sean asked Japanese participants which of the five keywords “culture, natural environment, people, accommodation, activities” would be the most interesting to people. The participants from Japan exchanged their opinions to answer the question.

日本人参加者からは以下のような指摘が出されました。

  • 5つ全ての要素を貫くような体験が良いのではないか。
  • いわゆる「観光客」ではなく、本質的な学びを期待する人たちを対象にしたらどうか。
  • 地元の子供や若者を巻き込むことで、外から来た人たちがヤップの文化をどのように評価しているのかを知る機会になるのではないか。
  • ヤップの人々がどのように関わり合っているのかを知ることが一番インパクトがあり重要ではないか。
  • アクティビティはお金を払ってやるようなものではなくて、星空の下で海に入るなどのヤップにいることを感じることが大事ではないか。
  • どこまでローカルにするかが課題。初めて訪れた人にとっては、トイレやシャワーなどの最低限の設備も必要になるはず。

Feedback from Japanese participants:

  • All of the 5 elements are important. To integrate whole experiences would be important.
  • Target the visitors not like the people who come to Colonia as a ‘tourist’, but those who really want to learn from the locals.
  • It is good to invite local children and youth to the ecotour. It will be a good opportunity even for them to know how foreigners appreciate the local culture and nature they have, and visitors can also see how the cultures and wisdoms are inherited in Yap. 
  • To see how Yapese people are interacting with each other is the most impressive and important. 
  • It is important just to be in Yap, not buying experience. 
  • How much of the depth of the locality the host would provide to the visitors? For those who visit Yap for the first time, basic facilities such as toilets and showers would be needed or not…

 こうしたフィードバックを受けて、ヤップ側からは、たくさんのお礼の言葉と共に、考えを深める機会になった、これから本格的にスタートしていきたいと意気込みが語られました。

 新型コロナウイルスの影響によってエコツアーのトライアルなどは延期されていますが、日本と現地の往来が可能になれば、ヤップ島プログラムの参加者らを対象にしたエコツアーをすかさず実施する計画です。お楽しみに!(記録:猶井咲喜)

Although the project plan had to change due to Covid-19, it was a good opportunity to know the possibilities to connect online and share the information.  (reported by NAOI Saki)

シリーズ ヤップでまかれた種たち

第2回:岩崎未央さん

遺伝子研究者の種が歩んだ物語
〜閉塞した空間から広がる世界へ〜

 地球体験チャレンジ「ヤップ島プログラム」30周年を迎えるにあたってスタートした連載企画「ヤップでまかれた種たち」。ヤップを経験した仲間たちのストーリーから、ヤップの意味や価値、そして今後の社会づくりを考えます。

 第2回目のストーリーテラーは、1999年、そして2001年と2回に渡ってプログラムに参加した岩崎未央さん。当時中学生だった岩崎さんは現在、山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所にて特定助教を務め、多能性幹細胞の遺伝子発現解析に取り組む研究者として活動しています。

 思春期の葛藤真っ只中の時期に参加したヤップ島プログラム、当時の想いが研究者としての今にどうつながっているのか、現在取り組まれている研究活動も交えながら、お話を聞かせていただきました。

オンライン・インタビューでの岩崎未央さん

遺伝子の世界に魅せられて

 「研究で色々な種類の細胞を観察しています。ゲノムは同じでも細胞の種類が違うと見た目が全然違うんです。たとえば線維芽細胞という皮膚側にいる細胞、脂肪細胞という脂肪を中にためこむ細胞、神経幹細胞はそのうちに神経として突起が伸びていく細胞。そういう違いを見ていると単純にすごく面白いなと思うんです・・・。」

 山中伸弥教授のノーベル賞受賞を契機に大きく注目を集めているiPS細胞(人工多能性幹細胞)。再生医療に重要な役割を果たすものとして期待されています。

 ヒトの体の中には200種類以上の細胞があります。受精卵という一つの細胞から、そのような特定の種類の細胞になることを「細胞が分化する」と言いますが、岩崎さんは現在iPS細胞研究所にて、多能性幹細胞が分化する時に細胞の中で何が起きているのかについて、タンパク質の解析を通して研究しています。

岩崎グループの仲間と(写真右が岩崎さん)

 穏やかに、内省的に言葉を選びながらインタビューを受ける岩崎さん。細胞について語る時には、Zoom越しにも少しだけ体温が高まるようにも感じられます。

 岩崎さんが人体に関心をもつようになったのは、小学校4〜5年生の時でした。「10歳年下の姪がいるんですが、その子が目に障害をもって生まれてきたんですね。それが子供の時にすごく不思議で・・・」

 身近な親族との関わりを通じて人や科学への思いを募らせる岩崎さん。その後、中学生の頃に見たNHKのドキュメンタリー番組が、岩崎さんの興味・関心を加速させ将来に大きな影響を与えることになります。

 「『脅威の小宇宙・人体・遺伝子』という番組があったんですけど、ここで初めて遺伝子という言葉を知りました。人の細胞は30兆個くらいあるんですが、その1個1個の細胞の中に百科事典1000冊分の情報が詰まっています。その情報が、たとえば脳であったり、肝臓であったり、骨であったり、それぞれの場所で適切に引き出されることで生命機能を維持している。莫大な量の情報が1個1個の細胞に入っているというのがすごく面白くて。そして、このテレビ番組の中で、まだまだわかっていないことが多いと言っていて、自分にもその領域でやれることがたくさんあるんじゃないか、自分がやるべきことはこれじゃないかと思ったんです・・・」こうした体験をもとに、中学生にして遺伝子研究者への道を志すことになります。しかしその一方で、当時の岩崎さんには大きな悩みやフラストレーションと対峙する葛藤の日々がありました。

ゆたかさとは何かを考えた11日間・・・12月7日(土)ヤップ島プログラム報告会

 近代化の波が押し寄せる現在でも、自然と調和した暮らしを維持しているミクロネシア連邦のヤップ島に、日本から9人の大学生がこの夏出かけました。
 コンビニやスマホから離れたシンプルな暮らしの中での11日間。「生きるということ」「豊かさとは何か」を考えてきました。その参加者手作りの報告会が、開催されます。ぜひご参加下さい。

【日時】12月7日(土)14:00~16:30(受付開始13:30)
【場所】神田公園区民会館4階洋室A
    東京都千代田区神田司町2-2
     神田駅、淡路町駅、小川町駅から、いずれも徒歩5分

【プログラム概要】
 ヤップ島の紹介、プログラムを通じて感じ、考えたことの発表
 報告会参加者とのトークセッション

【登録方法】以下のフォームに、必要事項をご記入ください。当日参加も可能ですが、報告書などの配布を予定しておりますので、事前のご登録をいただければ助かります。

報告会の後に懇親会を予定しています。(現在のところ17:30から2時間程度予定)参加の有無をお答えください。

【持ち物 :】マイコップ(飲み物を準備する予定です。ゴミ削減のためご持参ください)
【参加費】無料

【懇親会】17:30ごろから約2時間、神田駅周辺で会費制の懇親会を予定しております。参加を希望される方は上記フォームでお知らせ下さい。

自然の中でていねいに暮らす・・・ヤップ島プログラム2019

Apart from smartphones and convenient shops, Students learned how to live harmoniously with the nature in Yap

Yap-Japan Cultural Exchange Program 2019 was held from 13 to 25 August with nine students from Tokyo and Kansai area including one graduate student. We stayed at Maaq village, Tamil and experienced traditional and local lifestyle of Yap.

 2019年のヤップ島プログラムが、8月13日から25日までの日程で行われました。首都圏や関西の大学生8名と大学院生1名の9人の参加者がタミル地区マ村でヤップ島の伝統的な自然と共存した暮らしを体験しました。

 滞在した場所は、メンズハウスと呼ばれる村の男性たちの集会所。海面上昇の影響で使えなくなった前のメンズハウスを村人が2年間の月日をかけて工事し、今年の6月に完成したばかり。海辺にそびえ立つ美しいメンズハウスの中で蚊帳を張り、村のお母さんたちに教えてもらいながら編んだヤシの葉のマットを敷いて寝ました。

We stayed at the Men’s house which is the community house for men in the village. The villagers finished two-year long reconstruction work of the house in June. Because the old one was damaged by high waves caused by sea level rise, villagers decided to raise the ground 1 meter up and reconstructed new build using old techniques. Their new Men’s house was shining beautifully at the seaside. We were staying in the house hanging the mosquito nets and laid on the coconut frond mat that they weaved by themselves.

 プログラムの前半は暮らし作りに時間をかけました。自分たちで編んだココヤシの葉のカバンを持ちながら村の子どもたちに村を案内してもらったり、地元のレモンの汁で洗濯をしたり、火を起こしたり、村人から差し入れでいただいたココナッツやタロイモ、バナナ、パンの実、魚などの食材の調理方法を学んだり、ヤップ島の豊かな自然の恵みを受けながら、村人の知恵を教わり「生きる」ための知識とスキルを身につけました。

For the first half of the program we took time to gain the skill and knowledge for living. Weaving the bag by the coconut frond and walking around the village seeking for some food, washing their clothes with lemon, making fire, learning how to cook taro, bananas, bread fruits and fish which was kindly shared by the villagers, husking the coconuts and so on. By receiving the blessing of the rich nature of Yap and learning the way of living and kindness of Yapese, the students slowly acquired their knowledge and skills of the island.

 中盤では、ヤップの家族の日常にお邪魔するホームステイ。家族と料理をしたり、漁に出たり、伝統工芸を教えてもらったり、教会に行ったり、温かい家族に受け入れられ、様々な体験をした彼らは、2泊3日の滞在を終えてメンズハウスに見違えるような明るい表情と声色で戻ってきました。その晩、家族が持たせてくれた「お弁当」を食べながら夜中の2時までそれぞれの思い出話を語らいました。

In the middle of the program, the students experienced the daily life of Yapese by home-staying for 2 nights and 3 days. They were experienced the diversity of lifestyles in Yap by cooking, fishing, learning traditional skills, and attending mass at the church. They came back from the homestay with shining smile and kept sharing about their different experiences and their lovely family until 2 am in the midnight. 

 ホームステイでヤップ島に「家族」を作った参加者の行動は明らかに変わりました。それぞれが家族から教えてもらった知恵やスキルをシェアしながら、自由に「暮らす」ことを楽しみ始めました。また、一人ひとりにとって大切な場所になったマ村への感謝を込めた「ありがとう活動」としてメンズハウスの周りの草抜きやゴミ拾いをしました。

The behavior of the students who created the “family” in Yap has been clearly changed. Each began sharing their knowledge and skills taught by their families at the homestay and enjoying “living” itself with feeling the freedom. In addition, they expressed their appreciation to the village as a “thank you activity” by cleaning weeds and picking up trash around the men’s house.

 さらに、TRCTという滞在したタミル地区の環境保護団体による活動を見学したり、中心地コロニアにあるゴミの埋め立て地、リサイクリングセンター、ビンロウ樹の皮を使ったローカルプレートを作る作業場などを見学しヤップ島が抱えている問題とヤップの人々の取り組みを学びました。ヤップ島に「家族」ができた参加者にとってヤップで起こっているものはもう他人事ではありません。

In addition, they were learning the serious problems what Yap island is facing and what the people are doing to solve those problems by joining the activities of  TRCT which is an organisation to protect the environment in Tamil area, visiting landfill site, recycling center and the local plate factory made by the beatle nuts tree’s skin. For the students who get precious “family” in Yap, what is happening in Yap is no longer somebody else’s problem.

 最終日には、村人と共にフェアウェルパーティーを行い9人の学生たちは、村から学んだことを言葉にしてメッセージとして村の残しました。

「生きていることは美しい」

「幸せに生きていくヒントを見つけた」

In the last day, we held a farewell party together with the villagers and host families. The students shared what they have learned during their 10 days in Maaq village.

“Being alive is beautiful”

“I got the suggestion how to make my life happy”

成田空港に到着して最後の振り返りの際に、参加者の中には涙を流しながら日本の生活に戻ることへの不安を共有する者もいました。ヤップ島プログラムはこれから、それぞれの心の中にヤップの美しい自然や人々の知恵と愛情を残しながらこれからも生き続けることでしょう。報告:ボランティアスタッフ猶井咲喜

At the final sharing meeting at the Narita airport, the students shared what they have learned and some people were talking about their anxiety to go back their “everyday life” in Japan with tears. The beautiful nature and the people’s wisdom and love will continue to live in their heart forever.  Reported by NAOI Saki

本物の生き方を求めて・・・ヤップ島プログラム2019参加者募集

コンビニとスマホ漬けの日常から離れ、ヤシ林の中の集落で人々と暮らす

 8月下旬の約2週間、高校生から大学生前後の若者を対象に、ミクロネシア連邦ヤップ島に滞在します。

 石で出来た大きなお金、石貨(せっか)が今でも使われ、太平洋諸島で最も伝統が色濃く残るとされるヤップ島。その自然と深くつながった現地の暮らしに入れていただき、人と自然、人と人、人と社会のつながりやかかわり方について考え、本当の豊かさを見つめ直すプログラムです。

 ココヤシの殻や薪を使って火をおこし、魚やタロイモ、パンの実を調理する。大きなヤシの葉っぱを編んで作るマットで眠る。風のそよぎと虫の声に包まれた中で、現地の人たちと目と目を合わせて会話する。

 スイッチ一つ、クリック一つでものごとが動く日常とは違った、本物の生き方をしてみます。

プログラム概要

【日程】2019年8月13日から25日(予定)
【対象】15~22歳程度の健康な男女。身体の障害、国籍は不問。新しいことに取り組み、自分の可能性にチャレンジする意欲を持つ人。
【参加費】26万円程度(渡航運賃、滞在費など。事前準備、個人装備、空港までの旅費、保険料を除く)
【定員】:8名程度(定員に達し次第締め切りとさせていただきます)
【プログラムの流れ】
 ・説明会 4月13日午後3時から、エコプラス事務局で。その他、5月はじめにかけての随時、エコプラス東京事務所や早稲田大学などで
 ・顔見せ会 5月18日(土)午前10時から正午(予定)
 ・事前キャンプ 7月6日、7日…東京近郊でヤップでの生活をイメージしながらキャンプを行います。
 ・素潜り講習会(希望者と首都圏の潜水プールで)7月後半を予定
 ・ヤップ島へ出発!
 ・報告書の作成(9月)と報告会(11月頃)


 ・顔見せ会 5月18日(土)午前10時から正午(予定)
 ・事前キャンプ 6月29日、30日…東京近郊でヤップでの生活をイメージしながらキャンプを行います。
 ・素潜り講習会(希望者と首都圏の潜水プールで)7月後半を予定
 ・ヤップ島へ出発!
 ・報告書の作成(9月)と報告会(11月頃)

【申し込み、問い合わせ】
 特定非営利活動法人ECOPLUS info@ecoclub.org
 03-5294-1441  03-5294-1442(fax)
 問い合わせをいただければ、これまでの報告書などをお送りします。

ヤップ島プログラムの報告会が開かれました Reporting Session of Yap 2018 was held in Tokyo

ヤップにいた時の姿になって報告する参加者。Students wore clothes which they used in Yap.
 2018年12月1日土曜日の午後2時から、東京都千代田区の神田橋区民会館で、ヤップ島プログラム2018の報告会が開かれました。
 プログラムに参加した9人のうち、海外遠征や学業などで都合がつかなかった2人を除く7人が、家族や友人ら約30人を前に、体験を語りました。

On December 1, at a community center in Chiyoda, Tokyo, the reporting session of Yap-Japan cultural exchange program was held. Among nine participants of the program, excluding two who are in an expedition in Costa-Rica and in busy study before exams, seven university and high school students were gathered in front of family members and friend, in total of close to 30.

During the session, the word, “Love”, was repeatedly mentioned. “I was strongly held by armes when I was slipped over the floor”, “The family made me local medicine when I got sick at home-stay period”, and other stories were told. In Japan, those students are surrounded by smart phones and convenience stores. For such spoiled life, direct communications seeing each other in Yap was so impressive.

スライドを使って現地の様子を報告、Showing slides, each participants told their deep experiences in Yap.
 一人ひとりがそれぞれの感想を語る場面では、「愛」という言葉が繰り返されました。
 滑って転んだ時に、大丈夫かと心配されてぎゅっと抱きしめられた、雨の中で作業中に大きな声で歌が始まった、ホームステイ先で体調を崩した時に地元の薬草を煎じてくれた、など現地のみなさんの力強い思いやりに、強く心を打たれたようでした。
 日ごろは、スマホとコンビニにくっついて、画面越しのコミュニケーションに追われている若者たちが、目を見つめあっての意思疎通に、強く感動したようでした。

 参加した大学生高校生たちが、生き生きとヤップ島での思い出を語る姿に、家族たちからは「本当に、楽しかったみたいです」「いい仲間が出来たみたいで」と話していました。

おしゃべりは事務所に戻っても続きました。Chatting was continued until mid night at the office of ECOPLUS
 遠く高知県や大阪府から駆けつけた参加者もいて、報告会の後は、二次会、三次会、終電である一人のアパートに戻って、さらに話が続き、翌日は一緒にディズニーランドと、離れがたい時間だったようです。

 ヤップ島プログラムは、終わってからが味が出てくる、ということに気付き始めたみなさんでした。
Family members told that “I believe surely that they had very significant experiences in Yap”, or “He had so exciting days, I am feeling” after hearing their presentations.

Some participants came from far away, like Kochi or Osaka. They kept talking just before the final train and the day after, many of those spent fun time at Tokyo Disney Land together. They did not want to be separated again. They look like understanding that the real program would begin after the whole activities in Yap.

We really appreciate strong support of people in Dechmur village and Yap island.

ヤップ島での体験を語ります・・・12月1日(土)ヤップ島プログラム報告会

ホームステイ先は、大きな木の下の家
 人々が自然と調和しながら暮らしているヤップ島に、9人の高校生・大学生が、使い慣れたスマホを置いて出かけました。
 ヤップのシンプルな暮らしの中での12日間、「幸せとは何か」「豊かさとは何か」を考えてきました。
 その参加者手作りの報告会が、12月1日14時〜16時半の予定で開催されます。ぜひご参加いただければと思います。

【日時】12月1日(土)14:00~16:30
【場所】神田公園区民会館4階洋室A
    東京都千代田区神田司町2-2
     神田駅、淡路町駅、小川町駅から、いずれも徒歩5分

ヤシの実の殻などを使って調理する
【プログラム概要】
 ヤップ島の紹介、プログラムを通じて感じ、考えたことの発表
 報告会参加者とのトークセッション

【登録方法】以下のURLよりアクセスし、必要事項をご記入ください。なお、当日参加も可能ですが、報告書などの配布を予定しておりますので、事前のご登録をお願い致します。
ヤップ報告会参加申し込みフォーム

【その他】持ち物 : マイコップ(飲み物を準備する予定です。ゴミ削減のためご持参ください)
【参加費】無料

【懇親会】17:30ごろから約2時間、神田駅周辺で会費制の

懇親会を予定しております。参加を希望される方は上記フォームにて「希望する」ボタンを押してください。